2007年04月28日

低温核融合のその後

 南堂さんのブログhttp://openblog.meblog.biz/article/72018.htmlで常温核融合の真相という記事が出ている。

 20年くらい前に高温超伝導という現象が発見され一大フィーバーが起こったことがあった。
 
 超伝導とは金属が絶対零度で抵抗がゼロになり、強力な磁場を発生し、リニアモーターカーなどに応用できるというものだ。しかし、リニアモーターカーの線路を絶対零度するのに大変なカネがかかる。現象はあっても、現実に応用しにくいと思われていた(月とか火星などの温度が低いところでは簡単にできるが)。
 
 ところが、特定の金属ををセラミックで固めた材料で、マイナス160度(液体窒素くらいのありふれた低温)くらいでも超伝導が起こる現象が発見され、世界中で材料づくりがブームになり、温度もどんどん上昇して常温超伝導というのも出てきた。リニアモーターカーが実現したのはこの成果だ。
 
 マスコミも大フィーバーして、その中で出色だったのは、確か週刊朝日だったと思うが、東急ハンズで電気オーブンなどを買いそろえ、記者が自分で材料をこねて、超伝導物質をつくった。オーブンで焼き占めた材料を磁石の上で浮かべた(マイスナー効果)という記事だった。
 
 琉球大学でも確か矢ヶ崎先生の研究室で大学4年生が卒業研究で超伝導物質をつくったという新聞記事が出た。
 
 それより少し後になるが、今度は低温核融合が起こったというニュースが世界を駆けめぐった。これは面白いことが起こったものだと思った。
 
 核融合の分野では真空容器にプラズマをつくってこれを磁気容器に閉じ込め、密度を高め、高温にすると核融合が起こり、エネルギーが取り出せる。30年まえにはわたしは今世紀中に核融合が実現すると思っていた(しかし、実現しなかった)。
 
 高温・高密度のプラズマを長時間保持しなければならないわけだが、これが非常に難しい。
 
 しかし、重水をビーカーに入れて電気を流すだけで、常温で核融合が起こったというのだから、当時、ニュースを読んで本当にビックリした。で、すぐに信用した。
 
 高温超伝導でさまざまな応用が予想されたように、低温核融合で人類のエネルギー問題は一挙解決だと思った。
 
 ところが、その後、世界中で追試が行われると、ほとんどが再現できず、最初の発表はインチキだった、ということにされてしまった。理論的にあり得ない、そのようなものができると思っただけで、何を勉強してきたのだ、と疑われる雰囲気だった。
 
 その後、確か文芸春秋に高温超伝導はインチキだったという長文の記事が出て、そのまま、なるほどインチキだったのか、わたしも修行が全然足りなかったなあ、とひどく落ち込んだことを覚えている。周り中に低温核融合ができたら面白いといっていたので、その後のインチキだったと分かって、本当に冷や汗が出たくらいだ。その文春記から10年…。
 
 ところが、だ。その後、常温核融合の研究者らは迫害を受けながらも研究を継続しており、核融炉で起こるような原理とは異なる新しい現象が起こっていたことを突き止めていた。実際に核反応は起こっており、常識ではあり得ない低温での核変換という現象が続々と報告され、再現性もほぼ100%、考えられないことが、本当に起こっていることが簡単な実験で確かめられている。

http://www.mhi.co.jp/atrc/products/genso.html(三菱重工の研究者による実験結果)
 
 われわれは中学や高校の化学で、元素は化学反応で別の元素にはならない(鉄が化学作用で金にはならない)ということを知っている。しかし、核分裂や核融合が起こればウランがナマリになったり、水素がヘリウムになる。しかしそれには莫大なエネルギーが必要だ。
 
 すぐ上に引用した実験結果は従来の物理化学では説明できないものだ。そのような現象を低温核融合の研究者らが見つけ、世界中で認知されていると分かった。
 
 この間の詳細な経緯が、なぜ再現性が悪かったのか、実験手法や世界の研究者らとの交流の様子、理論的なアプローチも含め

http://openblog.meblog.biz/article/72018.html(北大の水野先生の解説記事)

にでている。A4判、107ページの大量の記述だが、流行の推理小説を読むよりはるかに面白い。連休中の読書にぜひおすすめしたい。  
Posted by 渡久地明 at 16:51Comments(2)TrackBack(0)