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2007年10月19日

市場原理主義の実験台となった沖縄

本日配送された天妃ドットコム・メールマガジンより(執筆は10月16日)。


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       天妃ドットコム・メールマガジン-1019(No.313)
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● ●激しい貧富の差と低賃金‐市場原理主義の実験台となった沖縄/
渡久地明●●

 県内ホテルがどんどん外資系企業に買収されている。県内大型ホテル、
100室規模の中堅ホテルも取引の対象で、00年代に入って30軒以上の
経営者が変わった。
 
 長期にわたって沖縄観光は好調であり、今後も伸びが予想される。国内で
最も客室稼働率が高く、年間を通じて客単価も高い。特に夏場のリゾートは
客単価が5万円を超える。また、レイバーコストが全国一安いとあって、買
収ラッシュとなった。投資に対する利回りは年間5、6%にのぼるのが魅力
という。
 
 買収される側のホテルオーナーはホテル資産はなくなるが、同時に借金も
なくなって一息つく。従業員の雇用はそのまま継続されるケースがほとんど
で、外見上は何も違いはなさそうに見える。
 
 いったいどこにホテル買収資金があるのだろうと思うが、答は身近にあっ
た。もう半年くらい前になるだろうか、海邦銀行小禄支店でカネをおろすた
めに待っていたら、営業窓口で担当者が20代後半とおぼしきOLに「ゴー
ルドマンサックスグループのアリビラへの投資が有望ですよ」とさかんにす
すめていた。
 いわゆるファンドはこのようにして庶民のカネを全国から集め、投資に回
すわけだ。
 
 一方、最近、外資系に買収されたホテル従業員から「借金がなくなり、設
備も更新。がんばって営業して、業績は向上した。でも、給料が増えない。
投資家への配当に回している」
 というような話を頻繁に聞くようになった。このホテル従業員の感じ方は
日本全体にも通じる。02年頃から国内企業は配当を重視するようになり、
儲かっても昔のようにボーナスを出したり、設備を更新して取引先を喜ばせ
るということをしなくなった。(参考1)
 
 昔、株式はグループ企業の持ち合いで、企業が儲かると、配当よりも内部
留保に積み上げ、労働者にも配分された。株主も配当より一層の設備投資と
売上の拡大を奨励して、投資先の企業規模を拡大させ、株式の含み益を増や
すことで満足していた。
 
 ところが、外圧によって日本型の株式の持ち合いが解消される。会社は株
主のものであるというキャンペーンが行き渡り、それが功を奏し、企業は配
当を最優先するのが当たり前になった。配当を最優先する傾向は02年から
顕著となってきた。
 
 すでに90年代後半から企業は従業員をパートやアルバイトに切り替え、
人件費はどんどんさがった。(参考2)
 
 これがここ10年くらいの日本で起こったことだ。戦後ズーッと賃金の低
い沖縄は復帰後も全国最貧県で貧富の差も全国一高かった(参考3)。革命
が起こるといわれるほど失業者の多い地域なのに、そうはならなかった。
 
「おい、日本人というのは沖縄県民のようにいくら搾り取っても暴動も起こ
らないし、体制は変わらないのではないか」
「格差を広げて、貧乏なのは自己責任と思わせてもっと搾り取ろう」
 
 という会話が小泉政権内で交わされたかどうかは分からないが、その通り
になっている。今後は日本全体にもっとどんどん沖縄のような状況が波及し
ていくということだ。沖縄県民は踏んだりけったりだが、悪い手本を全国に
示すことになった。まんまと市場原理主義の実験台にされたというわけだ。
 
(参考1)社会実情データ図録「企業の当期純益の推移」
http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/4610.html

(参考2)社会実情データ図録「非正規雇用者比率の推移(男女年齢別)」
http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/3250.html

(参考3)社会実情データ図録「都道府県内所得格差」
http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/7357.html

とぐちあきら。沖縄観光速報社編集長・工学修士。

★★★★★(@^0^@)まさたんが行く-「400年後は?」★★★★★
(まさたんは、吉元政矩代表の愛称です)

 未来は、過去から現在の延長線上の先にあるという時間軸でとらえている
まさたん。だから「過去を見、今を認識し、将来を予想する」が口癖だ。た
とえば沖縄の行く末を語る場合も過去は復帰前の琉球政府時代、そして約
400年前の薩摩軍による琉球侵攻と、まさたんの時間軸はとーっても長い。
ちなみにその頃、「阮」というまさたんのご先祖様がはじめて琉球の地を踏
んだ。そんなまさたんの目に、400年後の未来はどう映っているのだろう。
もしかして子孫が月の地面を踏む姿が見えている?

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編集:天妃ドットコム・メールマガジン編集局、発行:沖縄21戦略フォー
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Posted by 渡久地明 at 11:15│Comments(2)デフレ脱却
この記事へのコメント
沖縄の経済格差を示すジニ係数は、日本全国の中でも一番大きかった。つまり、経済格差が一番大きな件であった。今琉球大学の副学長の、嘉数啓先生が、サミットが開かれたときにその直前に英文のパンフレットにして出版したことがある。(日本語にするとあまりにも差しさわりがあったのだろうか)。それを小さな数字にして行こうというのが沖縄振興ではなかったのか。がっかりだ。
 ハーバービューホテルが、外資になっていたのには驚いた。昔の商工クラブに戻ったかのようだ。だからかどうかは知らないが、与那覇朝大画伯の名作の、サバニの油絵はもう撤去されていた。そうか、沖縄の経済格差は、もっと拡大したのだ。格差を縮小する実験場にすべきなのに。地場の資本を強くしないで、地元の銀行は、外資のお先棒を担いでいるのは、なんとも情けない。
Posted by Orwell at 2007年10月20日 07:34
ブログでのご紹介ありがとうございます。

嘉数先生に限らず、沖縄の学者もインターネットを使ってもっとどんどん学問的な裏付けのある主張をなさったらよいのにと思います。
Posted by 渡久地明渡久地明 at 2007年10月21日 17:22
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