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2005年08月14日

国家の罠‐鈴木宗男氏にお詫びしなければならない

国家の罠‐鈴木宗男氏にお詫びしなければならない まだ4年前のことか。小泉純一郎が首相になり、国会の答弁が面白かったので、会社にいるときは国会中継をよく見ていた。
 
 小泉、面白いじゃないかと思っていた。

 このころの国会は小泉純一郎の独擅場で、次々と野党や抵抗勢力といわれる政治家を漫才のように斬っていくのだが、こんな幼稚な答弁で国会というものは運営できたのか。これまでの真剣な議論は一体何なんだったのだろう、と思っていた。
 
 そのころの、大きな話題は田中真紀子と鈴木宗男の対決だった。マスコミ・世論は田中真紀子が善、鈴木宗男が悪との色分けで、マスコミは鈴木宗男に関する話題なら何でも取り上げるという過熱ぶりだった。
 
 わたしも全国版のTV局にあるネタを提供したら、その日のうちだったか、次の日にはニュースで流していたので、素早いなあと思ったことがある。
 
 ネタとは、1995年ごろの沖縄観光の不振の時に、各省庁から沖縄の支援策が打ち出される中、運輸省があっと驚く支援策を取り決め、官報に公示したことに端を発する。
 
 支援策とは「水上バイク」が免許無しで乗れる海域を指定し、マリンレジャーを楽しんでもらおう、というもので、県内3カ所が指定された。うまくいくようなら、さらに海域を増やすことも可能で、わたしはこんな方法があるのか、と感心し、大きく記事で取り上げたことがある。
 
 ところが、官報で公示したこの水上バイクの免許無しで乗れる海域の指定を鈴木宗男が運輸省の担当に電話を一本入れ、取り消したというのがネタだ。もちろん鈴木宗男は地元沖縄からの陳情を受けて、そのように行動した。
 
 放送ではその電話をかけるのを目の前で見ていたという証言者のモザイク画像もあり「すごい力のある方だと思った」という証言を入れている。
 
 つまり、当時、鈴木宗男という政治家は辻元清美が国会でいったように「あなたは疑惑のデパートだ」という思いこみが一般にあり(わたしもそう思っていた)、マスコミは鈴木宗男をサンドバックにしていたといっても良い。
 
 しかし、この様子をみていて、鈴木宗男の行動に利権や何かの不正が確かにあるという報道はなかったように記憶している。地元北海道で「クマしか通らない道路をつくった」などとも国会で追求されたが、地元のために道路を造ることのどこが悪いのだろう、という理屈は当然成り立つ。この視点から鈴木宗男がやったとされることを見直すと、必ずしもおかしいとは言えないことがいろいろあった。
 
 そこで、下のようなコラムを書いた。いま読み返すと、舌足らずで事実の認識に間違ったものがある。それでも当時は鈴木氏に対して相当好意的に書いたつもりだったのに、いま読み返すと、たいへん失礼な部分があり、申し訳ない気持ちだ。

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鈴木宗男が県知事だったら

 鈴木宗男という人は相当に嫌われ者となっているが、疑惑の中身については鈴木宗男という個人とは区別して検証する必要があるのではないかと思っている。ワイドショウで面白おかしく伝えられる情報とは別にいくつかをまじめに考えたい。

 毎日、変な話が暴露されるので追いつくのが大変だが、例えば、北方領土のビザ無し交流で元住民が桜の木を植樹しようと持ち込んだら、検疫が必要だといわれ、同行した外務官僚は領土であるから検疫の必要はないと譲らず、植樹そのものをやめてしまったケース。鈴木宗男はこれに腹を立ててその官僚を殴ったりけったという。しかし、領土だから検疫や必要な証明書がいらないと言った官僚はホントは検疫が必要なのを知らなかったのではないか。領土だから検疫がいらないと言うのは、 相当に無理がある。

 復帰前の沖縄も日本の領土のようであったが、植物や甲子園の土など自由に持ち込めなかったことはみんな知っている。こういう基本的なことを知らない役人を殴ってしまった(本人は事実無根と反論)のにすぎない。

 第二に地元の建築業者が基準に足りない評価でもともと受注できない工事なのに基準を下げて受注させたたことも問題になっている。しかし、よく考えたら地元に工事を優先発注すべきと言うのは沖縄の建設会社もみんなそういっている。これは絶対にできないというのがこれまでの常識だったが、なんだ基準はいかようにも変えられるではないか。同じことをやれば県内建設業界は躍進できるだろう。

 第三に軍用地料も鈴木宗男が防衛庁にねじ込んで抑制の予定が、高い伸びになったという。単純にいい人ではないだろうか。地主側はお礼に献金をしたのだが、そのやり方に不手際があって問題になっている。しかし、地主の多くは鈴木宗男の働きで相当に得をしたことは間違いない。

 こう見ると鈴木宗男のような存在は、もし沖縄側が本気で活用したなら実にいろいろな利があった可能性が高い。

 一方、逆の効果もあった。九四年頃、沖縄観光は不振で、運輸省観光部が沖縄のためにできることはないかと省内に号令をかけたことがあった。その時出てきたアイデアの一つが、県内の三つの海域で免許無しでも水上バイクが運転できるようにしたことだ。官報で告示されたが、鈴木宗男は運輸省に電話を入れ、折角の制度を没にした。

 問題は九五年以来、沖縄側が制度として一国二制度を求めて受け入れられなかったのに対し、鈴木宗男は恫喝によって特例の山を各省庁に築いたと言うことだ。一国二制度は日本にとって重大な特例であると思う。制度として困難でも、結果として鈴木宗男ならできたとするなら、この人が沖縄県知事でも良かった、と言うことができる。

 コトの本質は官僚対政治家の権力構造であり、地域(日本全体)を活かすには官僚をねじ伏せる手法は今後どうしても必要だ。それが手っ取り早い恫喝によるのかそれとも時間がかかる別の方法をとるのかだ。本当はこれまでの政治体制や官僚制度とは全く別の体制が必要なのであり、それが改革であるという点に尽きる。(明)(「観光とけいざい」第609号02年3月15日付け)
 
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 いまとなっては恥じ入るしかない文章である。官僚に対しても不当な思いこみがある。

 だいぶ長い前置きになってしまった。本題は佐藤優『国家の罠』(05年3月、新潮社)である。さまざまなところで話題になっていたのに、怠慢で申し訳ないが、先ほど読み終えたばかりだ。

 結論をいえば、鈴木宗男は本物の政治家であったということだ。あらゆるネガティブな報道はこれによってひっくり返るだろう。(八月時点でまだまだネガティブな報道があるのが不思議である)

 著者の佐藤優は外務省の情報分析官で仕事の内容はいわゆる諜報員のようである。外務省のラスプーチンと呼ばれ、鈴木宗男と結託してさまざまな利権をあさったと思われたのだった。しかし、実際には本物の政治家・鈴木宗男に惚れ込み、2000年までにロシアとの北方領土問題を解決し、平和条約まで持っていこうと全勢力をつぎ込んでいた本物のエキスパートであり、愛国者であることが、分かる。

 鈴木宗男氏に対して上のコラムも含め、わたし自身、誠に不当な思いこみがあったことをお詫びする。

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現在私(喜八)は鈴木宗男衆議院議員を強く支持しています。
政治家鈴木宗男を支持するようになるとは、1年前なら自分でも想像がつかなかったでしょう。当時すでに鈴木さんに対して...
『闇権力の執行人』【喜八ログ】at 2006年02月26日 15:51
この記事へのコメント
こんばんわ
スワン大谷です

渡久地さんは凄い方なんですね(改めて)
次の日の全国ニュースに影響を及ぼすんですね
でも改めて個人的な意見を述べるのが多くなった
かたよったマスコミの情報をついつい鵜呑みにしたり
して深く読むと違ってたりすることがあります。
気をつけて世の中を見ていきたいです
Posted by スワン大谷 at 2005年09月30日 22:16
さまざまな人が取材に訪れたら、業界のしきたり通りに、話題を提供したり、実際に案内したりと基本的に全部応じているので、ときどき全国ニュースになったり、地域ニュースになっているだけだと思ってますよ。
Posted by 渡久地明 at 2005年09月30日 22:16
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