改めて確信を持って常温核融合をおすすめする

渡久地明

2007年05月12日 20:54

 低温核融合について、Jed Rothwell さんからコメントをいただき、著書「未来を築く常温核融合」を紹介してもらった。無料で著作権は放棄しているという。
 
 http://lenr-canr.org/BookBlurb.htm

 ものすごく面白いので、簡単な読後感とともに、読者にもお勧めする。
 
 内容は現象の細かな紹介は専門の学術論文に譲って、常温核融合の技術が確立し、応用が始まったらどんなことができるかが中心だ。
 
 目次を紹介すると、

まえがき
1. 常温核融合の基本的なしおり
2. 理想的なエネルギー源
3. 今できる予測
4. 平凡な技術、日常的な製品
5. 革命的な技術
6. 相乗効果:常温核融合と他の発見が一緒になる
7. 変化の傾向
8. 巨大規模の海水淡水化施設
9. 地球温暖化
10. ニワトリ・ロボットなど賢明な機器
11. 破壊力はないが大混乱を引き起こす軍事用の機器
12. テロと大量破壊兵器
13. 石油産業には将来性がない
14. 電気事業には将来性がない
15. 常温核融合を家庭に
16. 人口、公害、土地と農業の問題
17. 自動車の未来
18. 未来の飛行機、宇宙船、個人用の飛行機
19. 状況を悪化させる可能性
20. 失業の恐れ
21. 遠い未来の暮らし
付録A:用語集
付録B:常温核融合で可能的になる応用
付録C:温度の比較
文献

となっている。(全186ページ)

まえがきに、ノーベル賞科学者でさえ低温核融合の論文を書いたら学会から掲載を拒否されたエピソードがある。この人は怒って学会を脱退したが、なぜそのようなことが起こるかに付いて次のようなマックス・プランクの言葉を引用している。

 マックス・プランクが言ったように「科学の進展は葬式ごとに進む。」彼は次のように説明した。「新しい科学の真実の勝利は反対の人を目から鱗が落ちるように説得させるわけではなくて、むしろ反対派はだんだん死んでいき、その新しい真実に慣れた新しい世代が成長してくる。」
 権力のある支配者層の科学者がたくさんいて、あまり理性のない熱情で反対しているので、自分が間違っていると白状できないから、研究は彼らが死ぬまで待たなければならないだろう。残念ながら常温核融合の研究者は引退した科学者が多くて、反対派の人よりも年上で早く死に絶えている現状だ。(まえがき)


 常温核融合で、飛行機はジェット燃料でなく、水素を燃やして飛ぶようになる。水素エンジンは現在でも可能だが、格段にコストが安くなる。

 また、カラスの頭脳程度の人工頭脳技術と組み合わせて、戦闘機を無人化できるという話も面白い。先日、F22という飛行機が嘉手納で訓練を行ったが、読者はあのエンジンの吸い込み口にスパナを一本投げ込めば、使いものにならなくできると思うだろう。その通りであって、基地反対派が本当にこのようなことを行うなら、沖縄基地は無力化できる。やり方はこうだ。
 
 従って、飛行機を無効にする簡単な方法はスパナぐらいの鉄棒をエンジンに投げ、妨害することだ。エンジンは損害を受け爆発するかもしれない。いずれにせよ、戦闘力を失う。だから、あなたが米国空軍を負かすためには鉄棒が1機につき10本、計13,000本が要る。止まっている飛行機のそばで鉄棒を持って飛行機を見張りながら待つわけだ。パイロットがエンジンをかけて、回転を早めると、あなたはさっと飛行機に近づき、エンジンに鉄棒を10本ほど投げる。まわりの軍隊の人たちがあなたを止めようとするだろうから、その人たちの妨害を乗り越えるのがこつだ。(破壊力はないが大混乱を引き起こす軍事用の機器)
 
 この部分、プリティ柘植ではないかと思わせるユーモアだ。とにかく、常温核融合の応用で、戦争はできなくなるだろう。このように米軍基地が無力化できるのだから、先に沖縄振興策をとっておくのは合理的だ。もちろん、石油や富や権力を求める戦争の原因すらなくなる。
 
 石油事業や電気事業(発電)に未来はないという。これも当然だろう。石油は要らなくなる、それどころかタダで発電できるようになるので水素と炭素を合成して石油をつくり、地中に埋め戻すことさえできるようになる。
 
 全体を通じて、世界中から貧困をなくし、誰でも食べたいように食べられるという考えに貫かれている。
 
 われわれは自然を破壊しすぎないように、あるいは破壊した自然をも都に戻すために、人類の人口を減らさなければならないときが来る。その時には月にも火星にも移住するという方法で、地球の負担を減らす。わたしも石油がなくなったら火星や月に行けばいいだろうと、いろんな人に言ってきたのだが、冗談としか受け止められなかったようだ。いったい世界は何のために宇宙開発をしてきたのかと思う。
 
 このように未来はいいことづくめである。なぜ、常温核融合のような技術開発に世界は力を入れないのか、わたしは理解できない。それについて、昔から面白い皮肉がある。
 
 ホルガンとニューヨーク・タイムズ紙と科学発展の終焉を唱える人たちとはまさに正反対に、アーサー・C・クラークは1963年に次のように書いた:海水に含まれている重水素が、今後想像される限りの遠い未来まで、人類のあらゆる機械を動かし、すべての都市に熱を供給することができる。今から二世代のちにもし人類がエネルギーの不足に悩むとしたら—大いにあり得ることだが—それは人類の無能さのせいなのだ。我々は、炭田の上で凍え死ぬ石器時代人のようなものだ。

…原料物質が恒久に不足する必要はない。しかしジョージ・ダーウィン卿の予言—きたる永劫の窮乏の時代に較べれば、我々の生きている今日こそが黄金時代である—という言葉は、結局極めて正しいといっていいかもしれない。この想像を絶する広大な宇宙においては、永久にエネルギーや原料物質に不足をきたすことはあり得ない。だが脳味噌に不足をきたすことは、大いにあり得るからである。(状況を悪化する可能性)


 いまの日本の構造改革とか財政破綻懸念とか憲法改正論議、自殺者の急増や格差問題などは、全く政治家の脳味噌に不足を来していることに由来しているのと同じだ。
 
 特に憲法前文は

 われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。

 と美しく述べている。これをなぜ実現しないのか不思議だ。政治家は憲法を守れ。守れないから、変えるというのは、最近の構造改革以来の悪い風潮である。脳味噌に不足を来しているというのはこれのことだ。

 (遠い未来の暮らし)と題する最終章には感動的な情景が描写されている。わたしもこんなところにもう一度いきたいと思う。
 
 かなり長文だが、とても面白く、読む価値のある本だ。改めて強くおすすめする。

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