沖縄全域FTZ、いまのTPPと同じ

渡久地明

2010年11月14日 11:20

TPPとかFTAとか、FTAAPとかAPECってわけの分からない略語が飛び交っているが、基本的には沖縄全域FTZと同じである(よけい分らんけど)。

FTZとはフリートレードゾーンで、復帰前の沖縄にあり、いったんなくなったが、1980年頃から再生に向けた議論が巻き起こり、20年くらい前に自由貿易地域那覇地区として建物ができた。

さらに1997年ごろ、いまと同じ基地問題の高まり、経済の自立に向けて沖縄全域フリーゾーンが議論され、当時の自民党政権でゴーサインがでた沖縄振興策である。

FTAはフリートレードアグリーメントで、2国・地域間の自由貿易協定、FTAAPはアジアパシフィックの多国間の自由貿易協定、TPPはトランスパシフィックパートナーシップで、環太平洋地域の貿易以外の非関税障壁の撤廃や貿易以外の自由化も進めようというものだ。

世界がこのようなモノを目指していることは、当然、沖縄FTZの導入の際にも議論された。沖縄FTAはいずれ日本全体も同様な環境に置かれることを見通して、沖縄で先行的に実施し、さまざまな課題をクリアしておこうという意味もあった。

ところが、いまの日本と同様に沖縄でさえ、農業が壊滅するとの強力な反対運動が起こり、結果としてさまざまな例外を認めざるを得ず、撤廃されるのはせいぜい石油関連の関税や内国消費税程度ということで落ち着き、導入時期も当初の2001年から2005年に先送りされた。

この間、沖縄県政はだれっぱなし。良心的な県職員でさえ、堂々と失われた8年といっていた。

その失われた8年の後を継いだのが現県政で、されに失われた年限が4年間追加された。わたしは、別に全県FTAの導入廃止を沖縄県が宣言したわけではないのだから、いまからでもやるといえばできるはずなのに、何でやらないのだろうと思う。今月末の知事選でどちらかの陣営が公約にするかと思ったら、両方とも無視とはどういうことだろうか。

沖縄FTZが実施されていれば、いまの日本は第二の黒船とか新たな開国などともめる必要はなかった。沖縄FTZが実現しなかったのはただ一点。1998年の沖縄県知事選でFTZ反対という人が大量の官房機密費の投入もあって当選し、全域FTAの廃止を宣言しないまま、何もしなかったからだ。

自由貿易の最大の問題は農業となっている。しかし、これは解決可能だと思う。

農家の平均年齢が65歳とか70歳となっているのを、有利な条件と見て、作物の全量買い取りプラス農地と引き換えに終身年金を国が支払う。20年くらいで農地のほとんどが国有化されることになるが、そこで新たな農業の担い手(若い人たちや企業による農業)が必要なら大規模農業を実現する、農業全体を再生するというような解決策があるはずだ。

沖縄FTAの議論では、県産農産物は競争力があるという主張もなされたが、全量買い上げ、終身年金と農地の国有化の方が分かりやすいのではないか。

高齢化が進む農家への農地と引き換えの終身年金というアイデアは、アメリカの大学で行われている、有力教授の終身雇用制度の転用だ。給料を終身支払う代わりに、死後、財産を大学が引き取るということが広く行われている。ノーベル賞級の教授が80歳を超えても研究を続けているのはこのような仕組みがあるという。


似たようなことをいまの日本の農家を対象に行うことで、農家の不安を取り除くことができるのではないかと思う。農地の広さに応じてカネを貸すというものではなく、年金制度なども組み込んで農業政策として採用されるべきだ。沖縄FTZの時にもこのような議論が行われたかも知れないが、わたし自身は聞いたことがなかった。沖縄FTAの導入があれば、これらの課題がとっくの昔に解決されていたのではないかと思う。

(追記:11月15日 この話しは高橋洋一氏が経済学的な説明を行っていたので、リンク。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/1572

自由貿易は必ずメリットになる、という経済学の基本とそのメリットを使って農家には再配分すればよいという話)

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