モンゴルと日本の構造改革

渡久地明

2006年11月18日 15:37

モンゴル観光について、現状の観光客40万人(06年予想)は2013年頃には100万人に達するだろうというレポートを出した。調べていて、少し古いが、次のような報告書にぶち当たった。モンゴルのペレストロイカと日本の構造改革とはまったく同じではないかと思える。

モンゴルもペレストロイカとソ連崩壊という外部要因で市場経済に移行し、国民は改革を志向、一挙に貧乏になった。ちなみにペレストロイカとはリストラ・構造改革のことだ。

構造改革が好きなのは日本人だけじゃなかった、旧ソ連の国民も構造改革を望み、経済はめちゃくちゃになった。日本ってソ連と同じだったのか?

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 1921年の建国以来、旧ソ連邦の政治・経済圏内に組み込まれたモンゴルは、旧ソ連に次ぐ世界で2番目に古い社会主義国として知られてきた。しかし、80年代末、旧ソ連邦や東欧諸国の変革の影響を受け、同国においても民主化運動が高まり、90年以降は社会主義体制から議会制民主主義・市場経済化への体制移行が進むと同時に、旧ソ連への全面的依存体質からの脱却を実現するなど、内政・外交政策の両面において大きな変化に遭遇することとなった。
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 議会制民主主義への体制移行は完了したものの、モンゴルの内政はその後も不安定な状況が続いている。エンフサイハン政権は、市場経済化を強力に推進するために、徹底した民営化推進、小さな政府を目指す行政改革、財政引締めと公共料金の値上げ、貿易自由化の推進と外資導入の促進などの改革を実施した。しかし、市場経済化・民主化の負の影響として貧富の差が拡大するとともに、国営工場の操業停止などにより失業率が上昇し国民の生活不安が高まった。加えて開発利権をめぐる政争が頻発し政治腐敗が蔓延した。
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 他方、市場経済化への移行に伴い社会面でも大きな問題が生じている。特に失業者の増加とそれに伴う貧困層の拡大が大きな問題となっている。国営企業の改革/閉鎖、穀物生産に係る雇用の減少、社会セクターの改革、公務員数の削減、などの要因により、公式失業者数は96年の5万5,400人から97年には6万3,690人へと増加している。実状はさらにひどく、120万人の労働者人口のうち20万〜30万人(17〜25%)が失業者であると推測されている。また、モンゴル統計事務所によると、95年は15.6%であった貧困層の割合は、96年には19.2%、97年上四半期には23%へと増加しており、さらに世界銀行の推定によると貧困ライン以下の人口が全人口の36%を占めるとされている。これら貧困層のうち最貧困層の3分の2は地方の小都市に在住していると推測されている。モンゴル政府は21世紀までの初めまでに貧困家庭数を現在の半数にまで減少させることを目指しているが、その達成には年間5〜6%の経済成長率を達成・維持し、さらに失業者あるいは年間10万人と予想される新規就業者の雇用吸収源を確保する必要がある。特に地方における貧困撲滅に向けては、経済成長のみならず、人材育成、専門技術付与、収入源の多様化も必要となる。

平成12年経済協力評価報告書、第1章 2.モンゴル、第一章モンゴルの社会経済概況

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/hyouka/kunibetu/gai/h12gai/h12gai011.html
 
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このめちゃくちゃな度合は上のHPを見ると、GDPの推移などとともに数値でも示されている。実際に現地に行ってみると、ウランバートル市内は発展しているようだが、地方は工場は廃棄され、畑を耕す人もいなくなっていた。経済は回復過程にあるが、失われた設備を元に戻すには莫大な費用と労力が必要になる。改革して15年、40代半ばだった農民は60代になり、昔のように働けなくなっただろう。若い人は都会にでてしまった。

橋本政権、小泉政権とそれを継承する安倍政権でおかしな構造改革が一層推進され、国民経済は全然改善しない。いまの日本には小渕政権の拡大策が必要なのだが、小渕さんというといまだに財政を悪化させた張本人と思いこんでいる人が多い。しかし、小渕さんの時に確かに日本経済は改善に向かっていたのだった。

小泉政権の方がはるかに財政を悪化させたのだが、それをいった政治家が抵抗勢力にされて、追い出されている。早くバカな改革ごっこはやめなければならない。

2週間のモンゴル出張で、沖縄知事選の細かい分析はあまりできなかった。しかし、構造改革がばかげているという立場から見ると、両候補ともまったく構造改革への問題意識はなさそうだ。基地返還に伴う沖縄再開発では積極財政に転じるべきだ。そのためには反構造改革政府が望ましい。両陣営ともそういうべきであったが、構造改革政府のもとで、目に見えて失業を解消したり、県民所得を拡大するなど沖縄知事は公約が果たせるのか。

ま、どっちが通っても、いままで通りの反構造改革の立場から批判を続けなければならないのは確かだろう。トホホだけど。

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