オバマの税制

渡久地明

2008年11月05日 23:14

取材先でオバマ氏の勝利を聞いた。

演説がうまい。

ユナイテッド・ステーツ・オブ・アメリカ

をかっこよく発音している感じがする。

ハワイで高校を卒業したというのも親しみを感じさせる。ハワイで沖縄県系人に身近に接していた可能性がある。

先ほど、9時のNHKニュースで、「富裕層に増税して、低所得者層を減税する政策は効果が不透明」

と解説していた。

しかし、クリントン政権で上の税制を採用して財政赤字を解消した実績があるのは有名なのではないか。

株式日記
http://www5.plala.or.jp/kabusiki/

の表紙に「クリントン政権が経済成長と財政再建の同時達成に大成功した理由」として引用されている文章が面白い。

元の論文は

東京地方税理士会税理士 吉越勝之氏のHP
http://www.geocities.jp/mirai200107/index.html#p1

で、そこに膨大な論説と資料がある。

経済学の教科書(今回は「スティグリッツ入門経済学」第3版、東洋経済、05年4月第1刷)には、次のような説明がある(279〜280ページ)。

1981年、レーガン大統領は大規模減税を押し進めてきた。何人かの大統領顧問は、税率の引き下げが経済を活性化させ、その結果として、総税収が増加することを保証したか、少なくともそのことを期待した。あらゆる統計分析は逆の結論を示唆していたが、後にこの分析結果の方が正しいことが証明された。結果として歳出の伸びは歳入の伸びを上回り、財政赤字が累積した結果、その水準は史上最大となり、最悪時には、財政赤字はGDPの6%を上回るほどであった。

1993年に就任したクリントン大統領は、国防費を中心とする歳出削減(冷戦終結のゆえ実行しやすかった)と、所得上位2%層を中心とする増税をなしとげた。同時期のアメリカ経済の成長率は上昇を示したが、それに寄与したのは、経済の重荷になっていた財政赤字の削減と考える者もいれば、新しいコンピュータ技術の成果がようやく実現したと考える者もいた。いずれにせよ、数年の内に、巨額の財政赤字は黒字に転換した。


富裕層への増税が財政を好転させるのは、当たり前とスティグリッツ教授の教科書では読める。実績もあるのに、どうしてオバマの税制の効果が不透明というのだろう。

理屈としては富裕層がカネ使わず、どんどん貯め込むので、デフレ不況になる。だから政府が貯まったカネを税として徴収し、富裕層の代わりに公共投資や低所得者層への減税や給付金を支給するための財源として使ってあげる。すると(低所得者層は右から左にカネを使うので)景気は回復する、というものだろう。

自民党も民主党も次の選挙では、たった数%しかいない年収ン千万円以上の富裕層の税率をいかに上げるかという競争をすべきである。消費税を上げる必要はないはずだ。票は庶民が持っている。オバマの政策、そのまま使ったら? 

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