経済物理学の発見を読んだ

渡久地明

2005年04月30日 19:20

「経済物理学の発見」(高安秀樹、光文社新書、04年9月、760円)を読んだ(昨日、リブロにあと1冊あった)。



 ネット上で



http://www.kansai-cs.com/takayasu.htm



 イントロダクションを見たことはあったが、わたしの興味とは別のように感じていた。



 ところが、リフレ派のブログに



http://reflation.bblog.jp/entry/174372/



 新しい経済学の展開という文脈でこの本に関する記述があり、早速リウボウまで買いに行った。読んでみたら面白い。



 特に前半は最近の成果を取り入れてあり、なるほどと思わせる。数値の解釈に朝永振一郎のくりこみ理論を使うところは、よく考えてみるともともと経済データはいろんな状況をくりこんだ結果であるなあ、と改めて納得できる。



 このような手法は物理学では当たり前に使われているから、わたしは経済学は工学系に位置づけたらどうかと思っている。



 しかし、本の後半はいただけない。



提言! インフレ誘導政策は危険すぎる(167ページ)



 には「インフレが起こると、最悪の場合、旧ユーゴスラビアの例のように国が崩壊してしまうことがあります」



 とあるが、この状況は日本には当てはまらず(日本は旧ユーゴスラビアではない、最悪にもならない)、



むしろ、このままデフレが続くと日本文化は崩壊してしまうと考察すべきだ。経済学の結論では多くの国で固有の必要なインフレ率があり、日本は2.5%程度のインフレを続ける必要があることになっている。これがなぜかを解明すべきだろう。



 また著者は「インフレを主張する人の根拠のひとつは、インフレが起これば国が抱える借金が事実上目減りするので、借金を容易に返すことができる、という安易な考え方です」ともいっているが、これでは経済学の知識がゼロといわれても仕方あるまい。(経済と道徳がごっちゃになっている)



 とはいえ、せっかく物理学の経験から正しい手法を体得しているのであるから、経済学をもっと勉強すれば、この学派は急速に成長することが予想される。経済数値を物理的に解釈し直すという作業はすでに著者がいうように多くの面白い成果を出している。



 沖縄の観光客数をセミログにプロットするときれいな直線になることを示した「沖縄観光成長の法則」で、わたしも工学的な手法を取り入れている。無意識のうちにくり込み理論を使っていたのだと気が付いており、その部分の説明に自分でも舌足らずの部分があると感じていたが、これですっきりした。



 なぜ沖縄観光できれいな直線ができ、どこまで伸びるかというと…。(以下略)



 ちなみに一緒に買った本



「デフレはなぜ怖いのか」(原田泰、文春新書、04年10月、680円)



「経済論戦の読み方」(田中秀臣、講談社現代新書、04年12月、720円)



 上記二人は経済板でお馴染みのリフレ派経済学者で内容は細切れにネットで見ているが、改めてひとまとまりに整理されたものを読みたいと思った。

関連記事