ホリエモン逮捕の翌日の昼メシ時のニュースは、生い立ちから始まって、これまでの履歴が放映されていたが、まるで人の腑分けを見ているようで、飯もまずくなるようなシロモノだった。
しかし、このような報道は犯罪者の心理に迫るものとして、マスコミの常套手段となっている。
ホリエモン叩きはかつての鈴木宗男叩きと全く同じで、こうなってはもはやストップがかからない。あることないことがどんどん報道される状態になっている。どうでもいいことがこれからもどんどんでてくるだろう。
しかし、ホリエモンの場合、バブル崩壊後の価格破壊とITの伸長期、行財政改革・構造改革に重なる時期に出てきた象徴的な人物であり、世の中の風潮がつくり出した典型的な例と考える。
デフレが続くと、失業が増え、低所得者と高所得者に二極化し、犯罪が増えるというのがまともな経済学者たちがとっくの昔から見通していたが、その通りになっている。小泉構造改革派これに拍車をかけている。
ITはもともと、毎日の非人間的な仕事を自動化して、空いた時間で人間らしい創造的な仕事をしようという考えがあった。ところが、不況時のIT導入は、仕事の合理化で余った人間をリストラする、という側面が一般的になった。わたし自身もかつては万年筆で原稿を書き、それを写植のオペレーターが印刷用の文字にしていたが、パソコンで原稿を書くようになると、オペレーターが要らなくなった。仕事がなくなったオペレーターは別の仕事を探すことになるが、20年来その仕事で食べてきた人が、他の職を得るのは非寿に難しかった。なによりもその分野で得たプロフェッショナルとしての能力が活かせなくなったのが悔しいという。
中抜きという言葉に代表されるように90年代のパソコンやインターネットの使われ方の多くはこのようなものだったように思う。インターネットでものが売れるようにもなってくると、セールスマンさえ冷遇される有様だ。
不況で全体のパイは増えないのに、新しく伸び始めたIT企業にカネが流れ込むなら、別のところのカネが減っているというだけに過ぎない。ITで景気をよくするというのは、ウソであり、ホントは全体の景気を拡大している中で、ITはさらに生産性をあげるために活用されるというのが、想定された役目だった。ITで生産性が格段に向上し少子高齢化はITが救うはずだった。
世の中全体がデフレ不況というITが前提としてこなかった環境となったのに、その変化に気が付かないまま、各企業は経費削減のためITにのめり込んでしまった。この結果、GDPは増やさないまま、IT化が進展したため、(その上、公共事業まで減らしたため)どんどん失業が増え、企業は正社員を減らし、フリーターやニートが増えた。
このような中で出てきたホリエモンというのは、多少は鼻持ちならないところがあったかも知れないが、毀誉褒貶は本人の問題というより、世の中の方が間違った改革にうつつを抜かした結果の、まさに不況や小泉改革の申し子というべきである。
こう考えると、ホリエモンはやるべきことがある。「わたしは小泉構造改革の申し子である」と自己を語り始めてはどうだろう。国会でも野党各党から「ライブドアの堀江貴文は小泉構造改革のあだ花、申し子である。規制緩和がライブドア問題や耐震構造装問題を生んだ」と追求されても「別問題」と知らんふりだ。
生みの親が関係がないといっていても、当のホリエモンが「わたしは小泉構造改革の申し子だ」と理路整然と主張し始めるとどうなるだろう。
小さな帳簿の書き換えの問題などより、日本中を不幸にしている巨悪・小泉構造改革を破壊する力をもちえないかと思うのだ。裁判が始まるなら堂々とこれを主張すべきだ。
ホリエモンがこの戦略を選ぶなら、日本中の反構造改革の知恵ものたちが集まると思うのだが…。