今日の沖縄タイムス朝刊トップ記事
県工事 談合認める 県内建設業者
公取委、来月処分か
罰金最大165社・160億円
がある。
昨年だったか、公取が県内建設業者100社の調べに入ったという記事があったが、その結果がこれだ。
琉球新報夕刊トップは
談合罰金 最大200億円、業界が試算
という記事だ。
爆弾発言であるが、この場合の談合はわたしは悪ではないと考える。そして、罰金で200億円を支払えという処分もやるべきではない。
談合は悪だという常識があるが、そうではない。多数の工事会社が少ない需要のなかで必死に生きており、順番を決めて各社の体力に応じて仕事を割り振っていたことは、合理的でさえある。
県内建設業界は工事を請け負い、それによって得たカネを県内の幅広い関連業界に分配していた。建設や材料の業界だけでなく、多くの雇用を生みだし、幅広い県民に所得を発生させてきた。
大手建設業者が工事費の大半を得て、安い下請けに仕事を回していると指摘する識者もいるが、これは本当だろうか。県内大手建設業者の利益が莫大に出ているという話しも全然聞かない。
いま、談合して工事価格を釣り上げるということにはなっていない。予定価格はどんどん小さくなっており、規定の利益が出る程度にまで絞られている。予定価格の3割引で受注などしたら赤字となるから、かえって手抜きや耐震強度偽装などの問題が出てくることになる。
もっといえば、沖縄での公共工事は産業インフラを整えるためにどうしても必要なものばかりなのに、行財政改革で全国の公共工事を格段に減らした結果、いまの不況が一層深刻化している。結果として、業界は結束せざるを得なかった。誰かが特別に儲かったのではなく、少ない仕事を文句が出ないように、分け合ったのだ。
そして得られたカネは企業や労働者の所得となり、これが消費に回り、県民に分配されていった。
沖縄の公共工事は立ち遅れたインフラを整えるという本来の意味があると同時に、所得の再配分装置として、機能していた。県民のカネをだまし取ったのではなく、むしろ国の金も含めて県民に再分配する機能として、重要な役割を果たした。
談合が悪だとい思いこんでしまったため、当の建設業者の中には人相も悪くなっているものもいるが、本当は役に立っている。何万人もの県民がそれで飯を食ってきた。非難することはできない。
終戦直後、公共事業は失業対策事業とも呼ばれ、特に失業者の多い地域に厚く実施された事実がある。それによって、地域間の格差をなくし、地域経済が成長することで、他の産業が起こってきたのだった。
戦後の沖縄は軍需工事はあったが、産業インフラを整えるための公共工事は少なかった。結果として、復帰まで道路は行き渡らず、港湾も小さなものだったので、物価も高く、産業が起こりにくい状態が続いたのだった。これを取り戻すための復帰後の公共工事であるべきところが、1998年以降どんどん削減され、これが沖縄の景気を落ち込ませている。観光産業がこの落ち込みをカバーする形で伸びているが、カバー仕切れていない。また、観光産業も不況の影響を受けているのは、すぐ前のエントリで述べた通り。
罰金などの処分はいまやるべきではない。現実に罰金を支払えず、倒産企業が出てきたら(上記新聞記事には罰金を払えず、倒産するところも出ると書かれている)、沖縄全体にとってその損害の方が大きい。
処分はストレートな県内企業の破壊でしかなく、百害あって一利なしだ。
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この記事を書いたあと、TBSのブロードキャスターのアンカーマンもつとめるビル・トッテンさんが「私は談合を悪いどころか、弱者を救うとても良い制度だと思っている」と書いているのに気が付いた。あわせてお読み下さい。(06年2月19日、追記)
http://www.ashisuto.co.jp/corporate/totten/column/1176149_629.html