IMFが積極財政策で世界恐慌を乗り越えなければならないとする記事(少し古いけど転載。下線はわたし)。
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IMF筆頭副専務理事:金融危機対応で財政出動を−利下げでは不十分
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003001&sid=ajEJ6hYbVFa8&refer=jp_commentary
3月12日(ブルームバーグ):国際通貨基金(IMF)のジョン・リプスキー筆頭副専務理事は12日、世界的な金融危機に利下げで対応するには十分ではない可能性があるとして、各国に税制や財政出動を通じた政策を取るよう促した。
リプスキー筆頭副専務理事はワシントンでの講演で、「現在の環境では、金融政策の効果が過去よりも薄れるリスクがある。加盟各国には、一時的に財政措置を取る余地がないか検討するよう助言している」と述べた。
財政支出拡大の助言は、歳出抑制を勧めてきたこれまでのIMFの方針を転換するものだ。リプスキー筆頭副専務理事は米国の住宅ローン問題に始まった危機が今や「持続的かつ安定的な世界成長」を揺るがす「世界的な難題」となったと指摘した。
筆頭副専務理事はさらに、この問題に拍車が掛かるリスクがあると警告し、
世界のシステムを安定させるには「断固たる」政策上の措置が必要だと強調した。
原題:IMF's Lipsky Sees Need for Fiscal Measures in Crisis (Update2)(抜粋) {NXTW NSN JXN1H51A74EA }
翻訳記事に関する翻訳者への問い合わせ先: 東京 蒲原桂子 Keiko Kambara kkambara@bloomberg.net Editor:Masami Kakuta 記事に関する記者への問い合わせ先: Matthew Benjamin in Washington at mbenjamin2@bloomberg.net ; Christopher Swann in Washington at cswann1@bloomberg.net
更新日時 : 2008/03/13 09:52 JST
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上の記事の前に
IMF、アジア地域の財政支出拡大策を支持−日米欧への輸出鈍化で
http://toguchiakira.ti-da.net/e2019454.html
というのもあった。
IMFはスティグリッツ教授が徹底的に批判してきたが、方向転換している。
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IMF: 緊縮財政オマエモナー
http://cruel.org/economist/economistimf.html
IMF はいきなり財政刺激策のファンと化した。その新しい親分ドミニク・ストラウス=カーン——もとフランス財務大臣——は、世界恐慌の危機に対抗すべく、財政刺激をアメリカやその他の国で求めている。フィナンシャルタイムズでの最近のコメントで、ストラウス=カーンはこう語る:「中期財政政策は、要は雨が降り始めたとき(もしものとき)のために貯金しておくという話だ。でもいまは、実際に雨が降り始めているのだ」
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さらにこんなのもあった。アメリカのヘリマネの前兆のような記事。
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10秒で読む日経(3月17日付)
http://archive.mag2.com/0000102800/20080317114000000.html
★先週末に出たベア・スターンズの取り付け騒ぎも、JPモルガンが買収することで決着。
昨年には147ドルの株価だったベアスターンズの株価も、先週末には30ドルと大幅に値を下げて感慨深いものだったが、この30ドルの15分の1の価格で買われる事となった。
ベアスターンズの株式の3分の1は従業員が保有している。つまり、従業員の多くは自己資産と仕事の両方を一気に失うことになる。
「自社株に投資してはいけない」というのは個人のリスク管理の鉄則だが、守れない人はこうなると言う格好の例。
このディールで強かったのはJPモルガン。今回の契約には、FRBがベアスターンズのもつ流動性の無い資産の内300億ドルまで保障する内容のため、実際にはJPモルガンは実質的にマイナスの値段で同社を手に入れた事になる。
FRBのバーナンキ議長は「ヘリコプター・ベン」のあだ名がある。「(日本のように)流動性危機の時にはヘリコプターで空からお札をばら撒くのが良い方法だ」との自説を持つからだ。
このところの、アメリカの流動性危機では、いつバーナンキがお札をばら撒くのかと期待した人も多かったが、ずうっと期待を裏切って対策を小出しにしてきた。
今回ようやく、局所的にお札をばら撒いたわけだ。
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これらの積極財政策は世界では当たり前のことと認識されていることが分かると思う。バーナンキ議長は前職のプリンストン大学教授時代から日本に対し、いろんなところで政府がカネを刷ってばらまけといっていたのは有名だ。
大田弘子vs.宍戸駿太郎
http://toguchiakira.ti-da.net/e2022980.html
が注目されると前に書いたのは、宍戸教授が世界の主流の経済学者と同様にデフレ時の積極財政を主張している日本の代表的な経済学者であるからだ。
引用の例のように世界的にデフレ不況の際には政府がカネを使わなければならないというのが常識だ。好況になれば不況時につぎ込んだカネは企業や個人がもうかって税を納めるので自然増収となって政府に戻ってくる。財源は印刷したカネでよい。
日本の歴史の中でもデフレに直面し、小判の改鋳をやって(金貨に混ぜる銀の比率を上げて通貨を増やした)、不況を乗り切った例が何度もある。日本史の教科書にも出てくる(ただし、デフレ解消後のインフレばかりが強調されているのは、大いに疑問だ)。
ところがいまの日本では(1929年の世界恐慌時の世界でも)、デフレ期に財政を引き締め(公共投資を減らし、政府収入を増やそうと増税して国民の所得を奪い…、道州制もこの文脈で進められている=政府にカネがないから地方は勝手にやってよ、緊縮的な予算を組んで財政建て直し至上主義をとり、規制緩和や生産性の向上で景気回復)を唱える大田弘子が世界の常識にどう反論するのか。これほど面白い見物はないと思う。
ところで、世界が協調して金融緩和や積極財政策をとることが、高い確度で予想できれば、絶対もうかる方法がありそうだ。世界恐慌の時にも暴落した株をどんどん買って富を増やした人たちがいたのではなかったか。あまり露骨なことはできないだろうが、日本政府、年金で積み立てたカネの運用で世界の株を買うチャンスじゃないのか。ついでに円高だし、いまこそカネを大量に印刷して準備すべきじゃないの。
<おまけ>
ついでにカネを刷って財源にすることをセイニアーリッジとかシニョレッジという。通貨発行益と訳す。これの正統性について、面白いやり取りがあるのでリンクを張っておく。
「通貨発行益(シニョリッジ)をめぐる勘違い」の勘違い
http://bewaad.sakura.ne.jp/index.rb?date=20050513#p01
江戸時代のデフレ期の小判の改鋳については日銀のホームページに次の記事がある。
貨幣の散歩道 第27話 米将軍吉宗と元文の改鋳
http://www.imes.boj.or.jp/cm/htmls/feature_27.htm