2007年02月04日
竹富島観光は世界最先端
町並み保存で有名な竹富島は、年間40万人以上が訪れる人気の観光地である。
この秘密は何だろうと思うが、それは別にして、おそらく沖縄県内で最も成功し
た観光地であるといえる。世界最先端かも知れない。
島の人口は360人、かつて過疎の島で人口は240人まで減少したことがある
が、盛り返している。Uターンが増え、島の民宿には全部、後継者が戻った。島
の魅力が再認識されたこと、十分観光でやっていけるまでに規模が拡大したこと
によるところが大きいと思われる。
民宿は年中満杯で、予約は取りにくく、島に失業はない。
祭りの島で、年間22回の行祭事がある。最大の行事・種取り祭をピークにその
序曲のような祭りが続くそうだ。
島の住民は祭りのための芸能の準備に精を出し、祭りとその練習を通じて、(よ
そ者にも)伝統を伝え、受け継がれ、強力な共同体ができている。
公民館が中心となって活動資金を集め、高度な自治が行われている。たとえば、
環境省のビジターセンターは建て替えられたが、設計の細部にわたるまで住民の
考えを取り入れさせた。コンクリートづくりの設計図面は、木造に変更となり、
展示内容もまったくやり変えた。(写真。竹富島公民館、商工会の面々と座間味
村メンバー)
また、桟橋のターミナルは待合い施設であるため、商業施設として使えなかった
のを、使えるようにした。同じ問題で悩んでいる離島は多いから、竹富島がどう
やって政治を動かしたか、学ぶべきことは多い。役場や県、省庁をうまく住民が
活用しているのだが、そうするノウハウを蓄えるまでに住民がどれほど学習し、
相手を説得するために努力をしたか、想像がつく。ポイントを突いた提案ができ
るから、役所もそれを取り入れないわけには行かないということだろう。
300人が一丸となれば住民の意思は通るという典型的な実例だろう。
祭りの維持にはテマヒマがかかるが、負担を減らす必要もあるとのことで、島の
適正な人口は500人くらいではないかという、目標がある。
その500人に仕事が行き渡るように、徐々に伝統工芸を復活させたり、民宿や
宿泊施設を増やしていく計画の途中である。
観光客はこれ以上増やす必要がない、という状況になっているのはハワイと同じ
だが、新規の開発が少なくなったハワイとは異なり、竹富島の場合は町並み保存
地区の外には広大な開発可能な土地がある。そこへ、これまで大資本の進出を許
さなかったのも住民の意思であった。
いま、時宜を得て、観光の量から質への転換が始まろうとしている。竹富島は外
部資本に開発を任せたハワイよりも進んだ観光地になる可能性が非常に高い。住
民がやろうと思えば、徹底的に条件をつけた上で相手を選び(もちろん地元資本
でやってもいいし、その方が現実的だ)、快適なリゾートホテルの建設も可能
で、その根拠となるのが先に述べた、
年間の祭り22回、人口500人が適切
という部分だ。竹富島は時間はかかるかも知れないが、これからその目標に向
かって動き出そうとしている。ここまでくるのに30年かかっている。わたしも
30年前の学生の頃に一人の観光客として島を一周し、その後、しばしば取材で
出かけた。
しかし、その時には昨日、竹富町で聞いたような話が進んでいるとはまったく知
らなかった。当時は単純に外部資本の参入を阻止したり、街並みを保存しようと
いう運動が目立っていた。しかし、表面からは見えないところで、揺るぎのない
地域のあり方が確立されていた。100年前まで人頭税があったころの経験も積
極的に活用されているように見受けられた。公民館に台帳があり、犬やネコの飼
い主も明記され、だれの犬かネコかを島中で知っている。島の生産人口のすべて
から公民館の維持費用が捻出されていた。
いまから振り返ると竹富島の30年は一瞬の出来事のようだ。これからの30年
もアッという間に過ぎるし、計画は実現すると思う。すごいところだ。
Posted by 渡久地明 at 14:11│Comments(0)
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