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2008年10月27日

給付金2兆円、もっと増やせ

 これまで定額減税を行うといってきた政府が、減税ではなく給付金方式に変更するという(本日付け沖縄タイムス1面トップ)。定額減税だと、もともと税金を支払っていない低所得者層に恩恵が行かないことが問題だった。カネを低所得者にも税金を支払っている人にも行き渡らせるには給付金方式が良いことは間違いない。
 これは本ブログで何度も述べたように、消費者にカネをバラ撒くという方式である。世界から見ると、給付金を国民に配るという景気対策はごく当たり前に行われている。また、世界の経済学者も同じことを主張してきた。
 今年のノーベル経済学賞を取ったクルーグマン教授は日本のデフレ脱却について、インフレターゲットを主張し、そのためには減税、財政政策、金融政策など何でも使えと言っていた。
 2001年にノーベル賞を受けたスティグリッツ教授も2003年に財務省で講演し、日本はカネを刷って景気対策に使うべきだと提言した。
 10月25日(2008年)にはサミュエルソン教授(ノーベル賞経済学者)が朝日新聞で「この危機を終わらせるためには何が有効なのか。それは、大恐慌を克服した「赤字をいとわない財政支出」だろう。極端にいえば、経済学者が『ヘリコプターマネー』と呼んでいる、紙幣を増刷してばらまくような大胆さで財政支出をすることだ」と述べて話題になってる。
 FRBのバーナンキ理事長も2003年の日本金融学界の60周年記念大会の講演で「通貨増発」を日本に推奨している。
 日本では関西学院大学の丹羽春喜教授が10年以上前から40兆円規模の政府紙幣を発行し、国民に一律30万円を配れ、といってきた。それによって、特定の業種に偏らないデフレ脱却が可能になると主張してきた。
 同様の主張は日本経済復活の会の小野盛司会長、南堂久志氏らからでていて、いずれもインターネットでよく読まれている(霞ヶ関の官僚bewaadさんも同様の発言(10月25日付))。
 30兆円とか40兆円の景気対策を10年前に言ったらみんなびっくりだが、恐慌が起こっているいま、全然珍しい額ではなくなった。むしろ20年にわたりデフレ経済を放置してきた日本の現状からすると、足りないくらいだ。ドンと大きな経済対策を打つべきである。
 この話は、麻生さんが分かっていそうだったので、期待したが、どうやらダメっぽい。大きな経済対策を打ち出すかと思ったら、定額減税が給付方式に変わったとはいえ額は2兆円規模だそうだ。景気押し上げ効果は内閣府によるとGDPのたったの0.2%にしかならないという。小さすぎて話にならない。
 一人当たり30万円くらいのカネを国民にバラ撒く、効果がなければ何度も繰り返すというやり方は、国民に対して政府が本気で景気を良くしよう考えているという強力な意志表示である。
 2兆円の給付だと国民一人当たり、1万5000円程度でにしかならない。1万5000円を使って景気を回復しようと言っても、国民は上がった電気料金やガソリン代を払って終わりだろう。しかし、その20倍、30万円くらいあると意味が違ってくる。
 パソコンや冷蔵庫が売れるし、円高のいまなら海外旅行に使う人も結構いるだろう。家族四人で百二十万円になるから、クルマを買うという家族もいるだろう。学費の足しにするのもよい。
 借金を返したり貯金に回すという人もいるかも知れないが、金融機関を通じて企業部門への貸出につながるだろう。しかし、景気の回復局面ではインフレに向かうので、貯金するよりモノを買った方が有利である。世に中に消費ムードが高まれば貯金を下ろして消費する人が増えるだろう。
 国民に一律カネを配るというのは公平であり、使い道を国民が好きに選べ、効果が公共工事などに偏らないという面で合理的だ。また、30兆円の公共工事など、一挙に国内の建設事業者だけでは請け負いきれない。国民が好きに使うことで、国内産業に偏りなくカネが回ることになる。
 こうして景気が良くなれば、失業が減り、赤字企業は利益を出すようになるので、政府の税収は増える。最初に出した30兆円は結果的に税の自然増収で回収される。「結局、景気対策しても大企業やカネ持ちに吸い取られるだけよね」という批判をかわすために、法人税や所得税は1990年代の構造改革以前の税率に戻しておくとよい。
 これまで国内・海外の有力な学者が適切な提言をしてきた。政治家はこれを使うべきだ。現状で世界恐慌の一歩手前であり、日本が内需を拡大で景気回復すれば世界に好況を輸出することができる。世界で名誉ある地位を占めることができるだろう。



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Posted by 渡久地明 at 08:37│Comments(4)デフレ脱却
この記事へのコメント
不払いや流用などの記事を見ていると、なぜ本来
支払わなければならないところに支払われないか
不思議でなりません。


強い憤りを感じます。
Posted by MESHサポートスタッフ at 2008年10月29日 08:47
追加経済対策(生活対策)2兆円給付は地域振興券受給者を除外せよ
Posted by 二重取りは公平ではない at 2008年11月02日 11:25
お金に利用期限を設けることができるなら、より効果は上がりそうなきがしませんか?

「このお金は、2008年12月31日までしか使えません」みたいな感じで。

期間限定のお金を給付金の形で使えば、みなどん欲に
消費行動に走るのでは?


麻生さんは、大胆な経済政策を実行して欲しいですね。
サブプライム危機の勃発によって、アメリカでも新自由主義が間違っていたことが明白になったわけですから。


極端な考えですが、一党独裁の軍事政権みたいな形じゃないと、政府紙幣発行のような、大胆勝独創性のある経済政策はとれないかもしれませんね。


60年前、世界的な経済不況が大戦を招いたことを、平和主義のみなさんにはもっと理解して欲しいこの頃です。。。平和の実現は、経済の安定から始まると思うんだけどなぁ。。
Posted by toguchi at 2008年11月06日 03:17
>MESHサポートスタッフさん

ちょっと意味が分かりません。社会保険庁のことを言ってるんでしょうか。

>二重取りは公平ではないさん

与謝野さんみたいな意見じゃない? 細かすぎて、せこいのでは。

>toguchiさん

お金に期限をつけることとインフレにすることがだいたい同じです。いま使わないと損する、という状態をつくる(3%程度のマイルドなインフレを実現する)という政策がクルーグマン教授が示したインフレターゲット政策。そのために何をするかが、大きな課題。わたしは国民一人30万円くらいのカネをバラ撒く、というのが一番よいと考えています。財源は通貨発行益。
Posted by 渡久地明渡久地明 at 2008年11月06日 21:49
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