てぃーだブログ › 渡久地明の時事解説 › デフレ脱却 › オバマの税制

2008年11月05日

オバマの税制

取材先でオバマ氏の勝利を聞いた。

演説がうまい。

ユナイテッド・ステーツ・オブ・アメリカ

をかっこよく発音している感じがする。

ハワイで高校を卒業したというのも親しみを感じさせる。ハワイで沖縄県系人に身近に接していた可能性がある。

先ほど、9時のNHKニュースで、「富裕層に増税して、低所得者層を減税する政策は効果が不透明」

と解説していた。

しかし、クリントン政権で上の税制を採用して財政赤字を解消した実績があるのは有名なのではないか。

株式日記
http://www5.plala.or.jp/kabusiki/

の表紙に「クリントン政権が経済成長と財政再建の同時達成に大成功した理由」として引用されている文章が面白い。

元の論文は

東京地方税理士会税理士 吉越勝之氏のHP
http://www.geocities.jp/mirai200107/index.html#p1

で、そこに膨大な論説と資料がある。

経済学の教科書(今回は「スティグリッツ入門経済学」第3版、東洋経済、05年4月第1刷)には、次のような説明がある(279〜280ページ)。

1981年、レーガン大統領は大規模減税を押し進めてきた。何人かの大統領顧問は、税率の引き下げが経済を活性化させ、その結果として、総税収が増加することを保証したか、少なくともそのことを期待した。あらゆる統計分析は逆の結論を示唆していたが、後にこの分析結果の方が正しいことが証明された。結果として歳出の伸びは歳入の伸びを上回り、財政赤字が累積した結果、その水準は史上最大となり、最悪時には、財政赤字はGDPの6%を上回るほどであった。

1993年に就任したクリントン大統領は、国防費を中心とする歳出削減(冷戦終結のゆえ実行しやすかった)と、所得上位2%層を中心とする増税をなしとげた。同時期のアメリカ経済の成長率は上昇を示したが、それに寄与したのは、経済の重荷になっていた財政赤字の削減と考える者もいれば、新しいコンピュータ技術の成果がようやく実現したと考える者もいた。いずれにせよ、数年の内に、巨額の財政赤字は黒字に転換した。


富裕層への増税が財政を好転させるのは、当たり前とスティグリッツ教授の教科書では読める。実績もあるのに、どうしてオバマの税制の効果が不透明というのだろう。

理屈としては富裕層がカネ使わず、どんどん貯め込むので、デフレ不況になる。だから政府が貯まったカネを税として徴収し、富裕層の代わりに公共投資や低所得者層への減税や給付金を支給するための財源として使ってあげる。すると(低所得者層は右から左にカネを使うので)景気は回復する、というものだろう。

自民党も民主党も次の選挙では、たった数%しかいない年収ン千万円以上の富裕層の税率をいかに上げるかという競争をすべきである。消費税を上げる必要はないはずだ。票は庶民が持っている。オバマの政策、そのまま使ったら? 



同じカテゴリー(デフレ脱却)の記事
MICE債の発行
MICE債の発行(2017-09-26 00:35)


Posted by 渡久地明 at 23:14│Comments(6)デフレ脱却
この記事へのコメント
今度は日本の番!!
Posted by kojakingkojaking at 2008年11月05日 23:17
>Kojakingさん

ホントに。麻生自民党のろすぎてダメっぽいですね。かといって小沢民主党も新自由主義の悪臭プンプンで、、、
Posted by 渡久地明渡久地明 at 2008年11月06日 21:54
私は、あなた様のインターネットサイトに早くから取り上げてご紹介いただきました吉越勝之と申します。 誠にありがたく常日頃心から感謝申し上げております。
需要側の国家の役割は競争の中で「需要の増殖を図る税制の構築」と「需要の微調整を図る財政金融政策の発動」が国家の役割なのです。 供給側の企業の役割は競争の中で「供給の増殖を図る為の生産性の向上」と「時代に適応した新製品の開発」が企業の役割なのです。 したがって両者が遵守すべき「自由平等(対等)競争の絶対性原則は同一」でも役割が需要側と供給側と全く異なるので、需要側の国家は何をなすべきか、供給側の企業は何をなすべきかは全く異なるのです。 世界中の税制動向を心配していましたが、案の定、金融危機、経済危機が全世界で同時発生してしまいました。 学者の推奨による高所得者のみ有利のフラット志向税制、消費税制の世界普及により、低中所得階層の所得減少による個人消費の減少と過剰貯蓄増加の弊害(投機マネーの増加)が金融危機、経済危機の主原因なのです。 そこで新オバマ大統領が、経済学者の反対を押しのけて、この危機を大規模に改善できる最高所得税率の高い超過累進税制を採用できるかが正念場と考えています。 超過高累進所得税制を採用し、30年50年の好景気と高度経済成長と自由平等社会を実現したルーズベルト大統領、池田首相、吉田首相、クリントン大統領は経済学部出身ではなく「全て法学部出身者であり」経済学者の反対意見をはねつけられる憲法や自然法に定められた「自由平等競争の絶対性原則の遵守」を理解できる国家指導者だったのです。
オバマ大統領も法学部出身者であり、私はすごく期待しているのですが、「民主党のレーガン」という記事を見て大変心配しています。 それは今のところオバマ新大統領から出る話は財政金融政策ばかりであり、需要を増殖できる税制の話が出てこない事が心配だからです。 成熟経済の現代企業は需要さえあれば、いくらでも生産を増強できるのであるから国家の需要増加の仕組みの役割は特に最重要なのです。 
「国民総生産」という言葉から国家は生産の増加を最重要にすべきとの「勘違い」が生じているのかも知れません。 最後にこれからも、同じような考え方を持った税制提言仲間としてお付き合い願えれば有難く、宜しくお願い申し上げます。   
Posted by 吉越勝之 at 2009年01月03日 16:22
>吉越勝之さん

だいぶ前からご主張を参考にさせていただいております。わざわざお越しいただきありがとうございます。

>同じような考え方を持った税制提言仲間として

こちらこそよろしくお願いいたします。
Posted by 渡久地明 at 2009年01月04日 16:52
     渡久地 明          様
このたび私も身体を具合悪くしており、最後の集大成として下記ホームページ新しく立ち上げました。 つきましてはお忙しいところ誠に申し訳ありませんが、出来ればあなた様のホームページに、下記の私のホームページへのリンクを貼っていただきたく、宜しくご協力のほどお願い申し上げます。 もちろんこのホームページには、あなた様のホームページへのリンクを貼らせて頂いております。 
  お暇な折、下記のホームページの内容をご覧いただき一部でも共感頂けたら、リンクの件、よろしくお願い申し上げます。
              記                 

クリントンと池田税制が高度経済成長大成功の要因
http://book.geocities.jp/yosikosi2001/             
                            吉越勝之 
Posted by 吉越勝之 at 2009年05月13日 22:51
>吉越先生

返事が遅くなり、すみませんでした。早速、右コラムのお気に入りに入れました。おからだ、お大事に、今後も論説を続けて下さい。
Posted by 渡久地明渡久地明 at 2009年06月20日 13:44
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。