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2005年04月17日

返還軍用地に大型公共投資は向かないというムードがあるのか

浦添ようどれに用があってバスに乗ったら、途中でなつかしい人が乗ってきた。
 
 「Hさん、お久しぶり」
 というと
 「やあ、渡久地さん。長続きしてますね。変わりはないですか、名刺を下さい」
 「同じ仕事です。浦添ようどれを見に行くところです。Hさんは? ぼくにも名刺ちょうだい」
 「同じですよ。宜野湾市で基地跡利用の会議があるので」
 「ぼくも数年前に南西地域活性化センターの調査で基地の跡利用について研究したことがありますが、その流れですか」
 「それとは違うと思います」
 「ガンガン大型公共投資を入れて下さい」
 「いや、ぼくはそういうのはきらいです」
 「…」
 
 という会話があってなんだか暗い気持ちになってしまった。Hさんはあるシンクタンクの代表で沖縄では知識人の一人だろう。若い頃、ときどき飲む機会があって、優秀な人だなあと思っていた。

 それから20年。随分、ものの考えに開きが出てきてしまった。変わったのは私の方である。経済学の知識が全くないのに、数年前まで構造改革の尻馬に乗った発言をしていた時期があり、いま明快にそれが間違いだったと反省し、恥じているのだ。
 
 バブル崩壊後の不況脱出に政府は手を尽くしてきたが、解決策としては積極財政、減税、金融緩和、構造改革などがある。これらの全部を混ぜた総合的な政策が不況脱出のカギとなるが、構造改革だけがクローズアップされ、結果的に無駄を省けと言う風潮と相俟って景気はかえって落ち込み続けることになる。この間の細かい経済学的なからくりはおいおい述べるとして、県内知識人の間に
 
 「返還軍用地への大型投資はいやだ」
 
 というムードがあるとしたら、大変なことであると思う。実際、00年3月に私も執筆してまとめた当時の基地跡利用に関する報告書では、大型公共投資でなく、20年とか30年の時間をかけて徐々に再開発をすすめようという結論になっている。
 
 当時の委員長も悩んだ末に「大型公共投資はやめよう」という結論だった。私もそれに賛成してしまい、いま不明を恥じるばかりだ。いまなら、何も悩まないで大型公共投資を入れるべきと主張する。
 
 「普天間返還は日本中のどこでも手に入れることが出来ない規模であり、せっかくの大きな土地を細切れに再開発するのではなく、丸ごと全部活用できるような大がかりな開発を行うべき」
 
 と主張し直して、あのときの報告書の結論は間違いであると宣言したい。
 
 もし、返還軍用地の跡利用計画で大型公共投資を入れるべきではないというムードが主導されているとしたら、これほど間違った経済政策はない。議論は広く公開されるべきだ。そのためにインターネットがある。


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Posted by 渡久地明 at 20:00│Comments(0)返還基地の跡利用
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