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2005年08月12日

小さな政府‐アメリカでいま

政府支出のGDPに対する割合(=政府支出÷GDP)が政府の大きさの常識的な基準であり、この割合は日本は37%程度でOECD諸国の中ではかなり小さい方である。

問題はデフレなのであって、これをやっつけるのが何よりも先である。そうしないで財政規模を小さくし、縮小均衡を目指しているものだから、企業はリストラで利益を出すため、失業が改善せず、労働力が劣化していく。豊富な労働力は品質を維持しながらフルに活用すべきだ。

そのための積極財政やリフレ策が必要であるというのが、正統な経済学である。そのような話をある県議会議員にしたら「これだけ財政赤字があるのに、政府支出を増やすのはおかしい。渡久地さんは古い」といっていた。しかし、古いのはその県議の方でわたし自身、小泉内閣が誕生するまで、改革が先だと思いこんでいた。これは間違いであったと深く反省しているのだ。したがって、私の方が新しい。

このような財政政策は現代のアメリカも例外なくやっている。

二つのニュースを引用しよう。

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(1)米大統領、総額2865億ドルの道路整備法案に署名 2005年08月11日木曜日07:32JST

 [モンゴメリー(米イリノイ州) 10日 ロイター] ブッシュ米大統領は10日、総額2865億ドルを投じる道路整備事業法案に署名した。

 大統領は、同法案が新規雇用を創出すると主張。一方で、法案には上下両院議員が地元選挙区の有権者からの支持を得ることを目的とした総額240億ドル規模の事業も含まれているとの非難もある。整備事業は、向こう6年間を計画期間とする。

 大統領は「多くの国民に高賃金の職を提供することになる」と主張。「米経済は、世界一効率的で信頼性の高い輸送システムを持つことができるかどうかが鍵となる。仮に、国民に働いてもらいたいのであれば、国内の高速道路や一般道路が整備されていることが必要だ」と語った。

 同大統領はまた、法案がガソリン税を引き上げることなく公共交通機関を整備し安全性を向上させることを可能にするとも指摘。

 ただ、アンカレッジに2億3100万ドル規模の橋を建設するなど、有権者からの支持を狙った6300以上の事業が法案には含まれている。

http://www.reuters.co.jp/newsArticle.jhtml?type=businessNews&storyID=9338240§ion=news

(2)財政赤字、税収増で減少へ=米財務長官 2005年 08月 12日 金曜日 09:24 JST

 [マウントプレザント (ペンシルベニア州) 11日 ロイター] スノー米財務長官は、経済成長の加速により税収が増加しており、財政赤字は今後数年減少が続くとの見通しを示した。

 当地でテレビ製造工場を視察した後、記者団に対して述べた。

 同長官は、「税収の増加は、明らかに良いニュースだ。赤字の大幅な縮小につながる」と述べた。

 財務省が発表した7月の税収は過去最高となった。また今月初めには、税収と州・地方政府の債券発行額が予想を上回ったため、四半期毎の国債発行規模を縮小していた。

 同長官は税収増について、企業業績の回復、株式市場の上昇、雇用の創出や所得増など「さまざまな要因による」と指摘。その結果、今年の財政赤字は当初の予想に比べ大幅に減少し、今後も減り続けるとの見通しを示した。

 同長官は、「今年の財政赤字は、対国内総生産(GDP)比が3%をかなり下回るだろう。今後も財政赤字の削減努力を続ける」と述べた。

http://www.reuters.co.jp/newsArticle.jhtml;jsessionid=50D01KYI1GNVYCRBAELCFFA?type=businessNews&storyID=9353624

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 つまり、アメリカは理論通りの経済政策を実行している。景気がいま上向いているから税収が増えており(1)、今後、景気が後退すると予想して大がかりな公共投資を準備している(2)。

 日本はアメリカの戦争についていくのではなく、経済政策でアメリカのいいところを取り入れるべきだ。

 なお、郵政関連ではイギリスのファイナンシャルタイムズの記事が2、3日前から話題になっている。下線部に注目。そこだけ訳した。

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(3)A contemporary dilemma haunted by history
By Ronald Dore
Published: August 8 2005 20:22 | Last updated: August 8 2005 20:22

JapanJunichiro Koizumi, Japan’s prime minister, has lost the vote on his grand scheme to privatise the country’s post office with its vast savings pool and will go to the polls. For now, the village-pump communitarian face of Japanese conservatism has won out over anti-bureaucratic, privatising radicalism. The global finance industry will have to wait a little longer to get its hands on that $3,000bn of Japanese savings.

But the snap election next month is likely to focus as much on the dire state of Japan’s relations with China and Korea as on privatisation. Here at issue is the other face of Japanese conservatism: the reluctance to feel guilty about the war. The key symbol of that reluctance has been Mr Koizumi’s visits to the Yasukuni shrine in Tokyo to pay respects to Japan’s war dead. There is speculation he might open his election campaign with such a visit on the 60th anniversary of the war’s end next Monday. Opinion polls show a bare majority think it “wiser” not to go. Mr Koizumi may think bravado and talking tough to the Chinese will win more votes than wisdom.

世界の金融産業は、しばらくの間、3兆ドルの日本の貯蓄を手に入れるのを待たなければならないでしょう。

http://news.ft.com/cms/s/ae844de4-0834-11da-97a6-00000e2511c8.html

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郵便局は民営化したら、政府が貯金を保証する必要がなくなり、グローバル金融企業がそれを手に入れるというわけだ。世界中が注目している。

ちなみに先の県議は郵政民営化に賛成した数少ない一人である。

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Posted by 渡久地明 at 15:18│Comments(5)デフレ脱却
この記事へのコメント
またまた、興味深いご返答ありがとうございました。
なるほどです。理解し、納得しました。
すみやかなご回答、あざーーーーーす!!感謝です!
とぐちさんが、選挙に出たらいいのに・・・。(^-^)v
Posted by ブルース ビーチ at 2005年08月12日 18:53
どうも、はじめまして。渡久地さん。
いつも、楽しく、そして大変、興味深く見ています。

郵便局は民営化したら、政府が貯金を保証する必要がなくなり、グローバル金融企業がそれを手に入れるというわけだ。世界中が注目している。

つまりのところ、完全に外資の手に落ちるとの見解ですか?
それとも、狙ってるとの見解ですか?
ぶっきらぼうな質問ですみません。
Posted by ブルース ビーチ at 2005年09月30日 22:16
コメントありがとうございます。

郵便局の350兆円は喉から手が出るほど欲しくて、外資が当然狙っているでしょう。

ファイナンシャルタイムズだけでなく、アメリカの金融保険業界が日本に対して要望しているのが、この郵便局の扱いです。

アメリカ大使館のHPに次のように郵便局の民営化の要望が明記してあります。

「米国政府は、日本郵政公社の民営化という小泉首相の意欲的な取組みに特に関心を持っている。日本の郵便生命保険事業と郵便貯金事業が世界最大の生命保険事業者と預金制度にまで成長しているため、これらの事業の民営化は、それぞれの分野で営業をしている会社に巨大な影響を与えると考えられる。」

http://japan.usembassy.gov/j/p/tpj-j20041020-50.html

この要望書は当然にアメリカの国益に基づくものであり、郵便局のカネを狙っているということでしょ。
Posted by 渡久地明 at 2005年09月30日 22:16
またまた、興味深いご返答ありがとうございました。
なるほどです。理解し、納得しました。
すみやかなご回答、あざーーーーーす!!感謝です!
とぐちさんが、選挙に出たらいいのに・・・。(^-^)v
Posted by ブルース ビーチ at 2005年09月30日 22:16
理解し、納得…、すばらしい。

アメリカの道路建設のカネは近く手に入る予定の郵便局のカネを当てにしていたりして。
Posted by 渡久地明 at 2005年09月30日 22:16
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