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2006年03月13日

日銀那覇支店の県の財政再建策

日銀那覇支店が変なことをいっている。
2006年3月3日:うちなー金融経済レビュー「沖縄県の財政状況と財政再建に向けた今後の課題」(PDFファイル:1.5MB)http://www3.boj.or.jp/naha/uchina0603.pdf

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1.沖縄県並びに県内市町村の財政状況
○「沖縄県」並びに「市町村」の財政状況をみると、ともに収支不足から貯金である基金の取り崩しが続く一方で、借金である地方債残高が右肩上がりで増加しており、財政状況は厳しさを増している。また、経常収支比率をみても、適正とされている水準(70〜80%)を大きく上回っており、財政の硬直化が進行している(図表1、2)。
—— 「沖縄県」では財政調整基金が底をつく寸前まで減少してる。経常収支比率も16 年度に93.2%と、全国平均(92.4%)をも上回る水準。
—— 「市町村」では、特定目的基金を取り崩す動きが顕著な中、16年度は赤字に転落、与那国町など基金が底をつく団体も出始めており、「沖縄県」以上に厳しさが窺われる。


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収支不足で貯金を取り崩しているのは、不況で政府が公共投資を大幅に減らしているからだが、日銀というのは金融政策で景気を良くする仕事をしているところではないのか。これでは、日銀は自分の仕事を投げ出して、景気はこれ以上良くならないから、県は自分で財政を立て直せといっていることになる。

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○今後の財政状況を見通すと、「沖縄県」、「市町村」ともに、歳入の増加が見込めない一方で、高齢化に伴う医療・介護関連費用の増加や公債費の増加が見込まれることから、収支は更に悪化する見通し。
—— 17/11 月に発表された「沖縄県財政の中期見通し」によれば、18 年度から21 年度の累計の収支不足は▲749 億円にも上る試算(図表3)。ただ、18 年度当初予算案では、単年度で約▲280 億円の収支不足が発生する見込みで、同中期見通しの想定(▲185 億円)以上に収支不足が拡大している。


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財政増加が見込めず、一方、高齢化に伴う経費が増えるから収支不足が拡大する。前提がその通りなら、結果はその通りになる。だが前提である、財政増加がない、というのを財政増加ができると変更するのが政府・日銀の責務だろう。景気回復が先だ。

なお、財政不足の見通しは沖縄県だけでなく日本中の自治体から同様の見通しが出ていたはずである。これは構造改革を進めると直面する危機への日本中からのシグナルだとどうして受け止められないのか、不思議である。信号を受け止められないアンテナは設計ミスでしかない。その結果、間違った政策(小泉構造改革)がやめられず、どんどん間違いっぱなしになる。

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2.財政再建に向けた取り組み
(1)沖縄県
○ 沖縄県では、「沖縄県財政の中期見通し」において、財政健全化に向けた取り組みの効果額を試算しているが、これによれば全ての財政健全化策が目標とする成果を挙げたとしても、依然として▲420 億円の収支不足が解消されない見込み(図表3、4)。
—— 財政健全化策として「税源涵養による歳入の確保」と「公債費負担の平準化」が挙げられているが、前者は、実質的には景気回復による税収増加を見込んだもの、後者は、借換債の発行による県債償還の先送り(県債残高の減少には繋がらない)であり、財政構造にメスを入れたものとは言い難い。因みに、これら施策による収支改善目標額は193 億円と試算されており、収支改善目標額の6 割弱を占めている。


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景気が回復すれば問題は解決するのに、なぜ景気回復の道を探らないのか。政府が景気を回復させないということを折り込んでいるというわけか。変な政府だなあ、国民にとって害悪である。それが当たり前と思う日銀那覇支店の感覚もおかしい。

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—— また、▲749 億円の収支不足の解消に寄与する効果的な歳入確保策が見当たらない中、特に歳出削減として効果の大きい人件費については、退職者の不補充を中心とした職員数の削減以上の抜本的な取り組みは計画されておらず、このため歳出抑制策による収支改善目標額は、総額で▲90 億円程度に止まっている。
※ 16 年度普通会計決算において歳出全体の約34.8%に相当する2,016 億円が人件費に支出される中で、その削減額は18 年度から21 年度の累計で▲28 億円に止まる。


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退職者の不補充以上の人件費減らしということは、生首を切れということか。ま、仕事のできない県職員を目の当たりにしていると、腹の底からわたしも怒りを覚えているが、そういう連中の首を切ったところで新たな失業を生むだけで、何の解決にもならないだろう。、県職員が生活保護受給者になるだけ。

それよりも大きな行政需要をつくり出して、ネコの手も借りたいくらい景気を回復させれば、どうしようもない県職員でさえネコの手以上の仕事をするはずだ。

財政削減、三位一体改革で予算がないから仕事もないというのが本当のところだろう。

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(2)県内市町村
○ 県内市町村をみると、全体としてみれば、県同様、財政再建の見通しが立っていないが、一部自治体では下表のように財政再建に向けた踏み込んだ取り組みがみられ始めている。
▽ 沖縄県内市町村の財政再建に向けた取り組み事例
<表=略>
○ 特に与那原町では、市町村合併の断念を契機に職員や住民の間に町財政に対する高い危機意識が共有された結果、歳出削減を中心とした財政再建計画が短期間のうちに計画され、即座に実行に移されている。
—— 同町では、合併協議会からの離脱決定後、財政再建を町政の最優先課題として全職員を挙げて財政再建計画策定に取り組んだ結果、財政再建の実施計画である「与那原町緊急財政健全化計画」が合併協議会離脱から僅か1 か月ほどで策定された。
—— 同計画の最大の特徴点は、これまで聖域とされてきた①職員の定例給与の削減、②町議会議席数や議員報酬の削減・費用弁償の廃止等、徹底した歳出の削減である。同町では、同計画の策定にあたっては、公募により選出した外部有識者を交えた「外部諮問機関」を設置、同機関に計画案を諮問することで、実効性の高い財政再建計画が実現された。因みに、実施初年度である17 年度は、人件費が3 割以上削減されるなど全国的にもあまり例のない大幅な歳出見直しが実現している。


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与那原町が上記財政再建計画を実施人件費を3割減らしたというが、副作用はどうなっているのだろう。連鎖倒産的なものはないのか。もし沖縄県が同じことをやったら、副作用は非常に大きなものとなるだろう。

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3.財政再建に向けた課題〜景気回復面での懸念材料の払拭〜
○ 沖縄県経済をみると、2005 年の年間入域観光客数が550 万人に到達し、ホテル稼働率も高水準で推移するなど、「観光」が景気全体を力強くリードしている。また、「個人消費」も流通3 業態(百貨店・スーパー・コンビニ)合計の売上高が11 か月連続で前年を上回るなど、堅調に推移している。このように県内経済全体をみると着実に回復しているが、「沖縄県」、「市町村」ともに財政再建に見通しが立っていないことが企業・消費者にとってのリスクファクターとして作用し、経済全体に悪影響を及ぼすことが懸念される。
—— 例えば、先行きの賃金政策に関する不透明性が、県内総就業者数の約4%を占める公務員の消費行動に抑制的な効果をもたらす可能性がある。また、公共工事に対する過度な期待感の醸成は、建設業界の再編をスローダウンさせ、労働市場における資源の最適配分を阻害する可能性がある。


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入域観光客数が多いから景気も良くなるという因果関係はない。観光客数が増えても一人当たり消費金額が減れば、売上は前年より落ちる(04年で経験している。05年は個人消費も回復したが、03年の水準に戻っただけだ。しかし、人数が大幅に増えたので観光収入は増えた。また、DFSの開業で消費が増えた分、他の部門での一人当たり消費額は落ちたと思われる)。

個人消費が好調なのは県民の消費マインドが高いからで、所得が増えない中消費が好調ということは、不況で県民も貯金を減らしているということのはずだ。これで県経済が堅調に推移しているとは…。

自治体の財政再建の不透明性が企業・消費者のリスクファクターとは、目を丸くしてしまう。県の財政が心配で消費を減らそうという企業や県民がいるとは思えない。あ、財政再建できなくて、クビになる心配をしている公務員は消費を減らして貯金しているかもしれないというわけか。県民の多くは公務員は楽だよなあ、首は切られないし、給料はちゃんとあるし、ということで大学生の公務員志向が強く、民間部門が活性化しないことになっているのだが、クビを心配して消費をひかえるかなあ。

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○ 県内景気の回復をより確かなものとするためにも、今後はより抜本的な財政再建に向けて次のような取り組みが期待される。
① 財務状況の積極的なディスクロージャーとロードマップの提示
 多くの自治体で行財政改革が実施されているものの、既存事務・事業の効率化や適正化といった向きが強く、財政再建を達成するまでのロードマップ(具体的な工程表)を作成している先は一部に止まっている。このため、今後の財政再建の過程で、投資的経費の削減幅がどの程度拡大するのか、あるいは増税や給付サービスの縮小等が実施されるのか否かといった点が不透明であり、県内経済への影響も予測しづらい。県内景気の回復をより確かなものとするためにも、積極的な財政状況のディスクロージャーとロードマップの提示が必要であり、こうした取り組みを通じて住民と危機意識を共有し、それを改革推進の原動力へと結び付けていくことが重要である。
—— 18 年度以降の行財政改革の実施に向けて、沖縄県では「沖縄県行財政改革プラン」の策定が行われているが、その策定にあたっては、個別事業の適正化や効率化を列挙するに止まらず、最終目標である財政健全化への道筋が明示されることを期待したい。


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県内景気の回復を確かにするには、日本全体の景気回復と金融・財政・税制の国政レベルのポリシーミックス(景気回復のためにできることは何でもやる)である。130万県民の微小なマーケットで県が財政を再建しようとしたら、人件費の削減、事業の縮小など縮小均衡で景気はますます悪くなる。または、良くなり方が遅くなる。

わたしは観光産業が成長しているので、いずれ景気は回復すると見ているが、いまは観光産業の成長を上回って公共投資が削減され、せっかくの観光産業が努力しているのを、政府部門が足を引っ張っていると見ている。自立しようとしている子どもに、おまえは成長しているから、食べ物を減らす、自分で海で魚を釣ってこい、といっているようなものだ。それでも子どもは成長するが、自分で取ったものも家族で取ったものも両方食べていればもっとたくましく成長するはずである。

え、いつまで子どもかって、わたしの計算ではあと20年くらいかかる。第5次振計いっぱい、念のため6次振計で総仕上げとすべきだ。

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② 民間企業の活用
ロードマップの策定にあっては、徹底した歳出削減に取り組む姿勢に加えて、「PFI」や「指定管理者制度」などを通じて、民間企業の高い経営・技術力やノウハウを財政再建に存分に活用する姿勢が望まれる。これにより、歳出削減に伴う住民サービスの低下を必要最小限に止めつつ、財政再建を達成するロードマップが実現されると考えられる。以上


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PFIで那覇空港の沖合展開でもやりますか。道路公団や郵便局の私物化と似たような話で、景気回復とは無関係。国民・県民には何の得もない。ちなみに道路公団や郵便局の私物化で喜んでいるのは、公団職員や郵便局員、新たな所有者と経営者だけではないか。少なからずいたホンモノの公務員がいなくなったのだ。民間企業だからやりたい放題が正々堂々とできるようになったわけで。

指定管理者制度で浮いた公務員は行政需要がない中、何をさせるか。クビを前提にするなら非常に気楽だが…。


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Posted by 渡久地明 at 23:45│Comments(0)デフレ脱却
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