てぃーだブログ › 渡久地明の時事解説 › 返還基地の跡利用 › 腰抜けとはいわないが、政府は心底アメリカが怖いのだ

2006年05月18日

腰抜けとはいわないが、政府は心底アメリカが怖いのだ

 自分の新聞用に書いた原稿だが、ちょっと先に公開してみる。2+2ロードマップの解釈。

 世界に3つしかない海兵遠征軍の一つが沖縄からグアムに移転するというのは、沖縄から撤退するということだ。撤退を移転と言い換え、沖縄の戦力は減じないというアリバイ工作として辺野古新滑走路が建設されるというのが真相だ。政府は余計な買い物をしたものだ。
 
 新施設は九六年暮れのSACO合意では「撤去可能」な海上施設、滑走路の長さは1300mまで追いつめた。そこまで縮小できるはずだったのを、当時の大田政秀知事が受入拒否。沖合い埋め立て2500m、軍民共用、使用期限十五年を打ち出した稲嶺恵一知事が登場する。今日の撤退を予見していれば(日米の多くの軍事専門家が撤退を予測していた)、最も簡単な海に浮かべる施設でとりあえず普天間を移設しておき、今回の再編で全面撤退を勝ち取れたはずだ。大田知事は海兵隊の全面撤退を予想していたのだから、海上基地を受入れるべきだった。

 稲嶺知事は受入の条件に別のものを要求すべきだった。特に十五年使用期限は米ではまったく受け入れられなかった。十五年という時間制限は米軍の戦略そのものに対する注文であり、受け入れられない。沖縄縦断鉄道などと引き換えに海上基地を受入れ、海上基地については「必要が無くなったから撤去すべきだ」と毎年、交渉し続けるのが良かった。大田、稲嶺知事ともに米軍撤退を目指したのは同じだ。撤退が始まろうとしていたのに、かえって問題をこじらせた。

 辺野古の決着は、日本側が新滑走路をつくるから、撤退しないで欲しい、と米側に働きかけたものと考えるとつじつまが合う。V字型滑走路で海兵隊撤退の面子を立てたのだ。政府は心底アメリカが怖いのだ。今度は沖縄が政府の面子を立ててやればよい。沖縄は海兵隊の訓練の場所としては狭くなりすぎ、兵員輸送の能力も足りないのは軍事的には常識だ。普天間の代替施設無しの返還はあり得た。しかしV字型滑走路建設で(ほんとうは撤退なのだが)米軍は沖縄に居続ける、必要とあればいつでも沖縄を海兵隊の拠点にできるというメッセージを世界に発信できた。辺野古の意義はそれだけだ。

 しかし今回の米軍再編で嘉手納以南の千五百ヘクタールが返還される意義は大きい。海兵隊は撤退すると米側が約束したのだから、返還される土地を活用して沖縄全体の効率を高めるような再開発を盛大に計画すべきだ。沖縄への大規模な政府支出は日本の景気に好影響を及ぼす。遠慮は無用だ。


同じカテゴリー(返還基地の跡利用)の記事

Posted by 渡久地明 at 21:50│Comments(0)返還基地の跡利用
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。