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2017年04月15日

工学部で講義(1)

持続可能な観光とはどんな状態か

 沖縄観光客数は将来どうなるだろうか。最近、その様子がかなり見えてきた。手に取るように分かると言ってもよいかもしれない。
 筆者は鉄腕アトム世代で、二十代前半まで科学技術少年だった。大学も工学部、修士課程を出た工学修士である。エンジニアになるところだった。
 しかし、沖縄観光速報の記者となることで多くの現場を見ることができ、得られた情報を元に新たな観光学が作れる。観光の方程式を作ろうと思ったのだった。それには、過去のデータを検討するのが基礎である。
 ところが、復帰後の沖縄観光客数をグラフに描いても何の規則性も見つけられなかった。一九八二年のことである。
 さまざまな業界人に話を聞いても、沖縄観光の増減に何かの原因があるとは思えなかった。
 しかし、九〇年代半ばに本紙の創業者・渡久地政夫が最近のホテル建設ブームにかんして「第3次ホテルラッシュだ」といったことが大きなヒントとなった。
 十五年ぶりに忘れていた沖縄観光客数のグラフを改めて描くときれいな直線が現れ、よく伸びた時期と横ばいが続いた時期がほぼ十年ごとに繰り返し、三十年間の平均伸び率は四・五%だった。
 詳しく見ると、ホテル建設ブームの後に観光客が勢いよく伸び、伸びきったところで、今度はホテル建設が活発になり始めた。ホテル建設ラッシュとその後の観光客の増加は互いに原因と結果の関係にあり、相互作用を及ぼし合ったと考えると理屈が通る。観光客の増加と受け入れ施設の増加の相互作用で観光客は伸びた。逆にもしホテルなどが増えないという状態になったら、観光客も頭打ちになると予想され、ハワイなどの実例がある。
 いま説明したことは一本の数式で表すことができる「。ロジスティック方程式がそれである。この数式は生物学の分野で厳密に実証されている。
 …筆者が三十五年前に沖縄観光の方程式をつくろうと思い立ったことが、いま、ほぼ実現したと思えるのである。
 方程式が同じなら、そこで起こっている現象も同じと考えられる。シャーレの中の微生物が増殖する様子を示すのもロジスティック方程式であり、沖縄観光客数もこれと同じ理屈で伸び、容量いっぱいになったところで頭打ちになる。沖縄の頭打ちはハワイの例から二千四百〜三千万人程度となるはずである。
 この状態ではホテルの稼働率は年間を通じて九割前後、レストランや観光施設も連日満員で、県内のあらゆる産業が活性化し、仕事はいくらでもあって賃金も上がっている…。
 今年の国連のテーマである持続可能な観光とはどんな状態か。いまいち分かりにくかったが、いま述べた状態を続けることであろう。(明)(「観光とけいざい」2017年4月15日付け)


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Posted by 渡久地明 at 18:01│Comments(0)観光情報学の話題
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