てぃーだブログ › 渡久地明の時事解説 › 観光情報学の話題 › 那覇空港の需要予測のトホホな内容

2006年08月15日

那覇空港の需要予測のトホホな内容

那覇空港調査連絡調整会議(内閣府総合事務局・国土交通省大阪航空局・沖縄県)が

「那覇空港の調査報告書2」
http://www.pref.okinawa.jp/nahakuukou/src/step2_report.html

をまとめた。

この中で、
(1)将来の人口
(2)将来の経済成長
を元に那覇空港の需要予測を計算している。

ここまで書いただけで、このブログの読者はわたしが何をいいたいか分かると思うが、結論を先にいうと、極めて弱気な予測となっており、弱気すぎて間違っているといってもいいくらいになっている。

GDPと旅行回数が関係があることから、「構造改革と経済財政の中期展望(2005年度改定)」(内閣府経済諮問会議)や「日本21世紀ビジョン」をもとに、構造改革が進展した場合の成長率を「経済進展ケース」、逆に停滞した場合の成長率を「経済停滞ケース」として設定し…将来の潜在的な需要を計算した。

問題は構造改革をやめて、積極財政をとった場合、日本経済は目を見張る成長を遂げ、数年以内に500兆円のGDPは600兆円に拡大、その後も成長を続けるという理論があり、こちらの方が正統な経済のあり方であると世界中の有力な学者が主張していることだ。

なぜ、トンデモ経済政策としか言えない構造改革理論をもとにするのだろうか。

そのようなトンデモ理論を採用して得られた需要予測は、次のようなものだ。

那覇空港需要予測
2004年 1,281万人(実績) 観光客数515万人
       ケース1     ケース4
      (高位ケース)  (低位ケース)
2010年 1,461万人 1,358万人
2015年 1,655万人 1,419万人
2020年 1,850万人 1,456万人

04年実績の1,281万人というのは那覇空港を往復する人数。このうち約20%が「県民」と「観光客のうち県内線利用者」だから、その分を除いて約1,025万人が県外を往復する観光客数で、その半分が入域観光客数ということになる。

上の需要予測を観光客数に置き換え、高位ケースだけ書くと、

2005年 550万人(実績)
2010年 584万人
2015年 662万人
2020年 740万人

となる。

2005年から2020年までの成長率は毎年2.0%である。いくら弱気の業界人でもこんな低い伸びを想定する経営者はいない。それではやっていけないだろう。ばかばかしすぎる。

低位予測の場合、2020年の観光客数は583万人でしかなく、この数値は今年の565万人を経て、来年2007年にはほぼ達成するだろう。こんな情けない内容を印刷して欲しくないなあ。ナンセンスだ。

ついでに、報告書には需要予測の推計式を明示すべきだ。それがあればもっと精密に内容を吟味できる(たとえば、10年前にさかのぼって、その推計式で現在を計算してみる。推計式の妥当性が一発で分かる)のに、これでは推計の根拠が不明である。学生の論文なら落第点だ。それとも推計式なんか書いても県民は分からないだろうと考えているのだろうか。

なお、わたしの計算では2015年の観光客数は875万人、2020年は1,095万人である。根拠はわたしの新聞で何度も述べているが、初歩的な数理を使って説明したものを観光情報学会雑誌「観光と情報」(6月)に寄稿してある(わたしの推計式は1990年にさかのぼっても現状を極めてよく説明できている)。また「観光とけいざい」8月1日号に転載した。全文をそのうちWebでも公開するので、ここでお知らせする予定だ。細かい内容は今後のわたしの講義や講演などで随時述べる。


同じカテゴリー(観光情報学の話題)の記事

Posted by 渡久地明 at 22:44│Comments(0)観光情報学の話題
この記事へのトラックバック
那覇空港の 遊び施設を・・・
電動【兼小、兼中のPTA活動(´▽`)】at 2006年10月10日 15:10
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。