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2005年04月18日

観光に科学の光を当てよう 工学部の発想が必要だ

観光に科学の光を当てよう 工学部の発想が必要だ観光情報学会第2回全国大会が5月16日、リザンで開かれる。次の文章はその大会を盛り上げようと「おきなわ観光情報学研究会」のメーリングリストに掲載したものだ。わたしの観光に関するスタンスを示したものです。ぜひお読下さい。

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 「いままでの観光学は科学ではなかった」

 観光情報学会の会長大内東・北大大学院教授は沖縄で観光情報学会の設立を呼びかける集まりで、三年前にこのように述べた。

 わたしは大学卒業と同時に沖縄観光速報社で観光専門の新聞をつくる仕事をしているが、その時から感じていたことをズバリ言ってもらったと思った。これを聞いて退席する観光学者がいたのであるが、仕方がない。工学部で電子工学を学び、大学院ではプラズマの研究をしていたわたしは、工学的な発想で観光産業を捉えるとどんなことが明らかになるのだろうかと二十年にわたってデータ集めていた。

 科学が最も大切にするのはいま目の前で起こっていることを精密に調べることである。その後、それらを合理的に説明する理論を構築することである。このデータ集めという過程でこれまで優に延べ一万人を越える人たちにインタビューしただろう。酒を飲む友人もたくさん出来た。観光事業の現場で起こっていることそのものが唯一の事実であり科学の対象である。これを正しく理解し、分析することがホンモノの観光科学の始まりであると信じる。

 ところが、当時の観光学の先生達は根拠不明のご自身の理想のようなものを描いて、現状をあまり調べないまま、沖縄観光は未熟であるなどと主張するものが多かった。

 実験また実験でデータをそろえる工学部のやり方からすると、全く科学ではなかったが、わたしの発言は観光学者には届かなかった。とにかくデータを集めることばかりに専念していたら、いつの間にか数学を忘れ、観光を科学にしようという最初の志すらどこかに行ってしまうところであった。

 そこに「観光を科学にしよう」という呼びかけである。「工学部の先生方、来るのが遅かった。わたしは一人で寂しかったよ」と大内先生の呼びかけに応じたのが、わたしと観光情報学会のつながりである。琉球大学工学部には観光についての知識は少ないが、研究の方向性さえ気がつけばどんどん成果が出せる体制が整っており、遠藤聡志教授が中心になって「おきなわ観光情報学研究会」が組織され、呼びかけから二年で二十本を越えるさまざまな論文が出てきている。わたしも奮発してこれまで集めたデータを体系化し昨年「沖縄観光成長の法則」というレポートをまとめた。これは観研メンバーとのメールのやり取りを通じていくつものヒントを得、経済学の常識程度の勉強をやり直してまとめたものだ。工学部の実験では当たり前の手法を観光産業に応用したものだが、工学部や金融機関、経済学者から良い反応をいただいている。最近になってこの法則は海外でも通用しているらしいことが分かり始めた。

 観光情報学の研究分野はこれからますます拡大して行き、実証実験に基づくしっかりした論文がどんどんでてくると思う。いまはまだ手探りで研究が進められているようだが、ここ数年で実用に耐える成果がいくつも出てくると予想できる。多くの観光事業者が学会に参加して、現場からのニーズと目の前で起こっていることを研究者に伝えて欲しいと思う。面白い成果が続出し、世界中から注目されるようになると思う。

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 なお、観光情報学会のURLは

http://www.sti-jpn.org/

 大会プログラムと発表予定レポートのタイトル(何と今日現在31本)があります。

 論文発表の他、データと地域観光、風評被害、電子マネーに関するパネルディスカッション、各地の研究会の報告、特別講演、懇親会を開催します。ぜひこちらにもお出かけ下さい。


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Posted by 渡久地明 at 21:29│Comments(0)観光情報学の話題
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