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2005年07月26日

郵政反対派が正論、続き

郵政反対派が正論と書いたら、このブログにガロアさんから2度コメントがあった。引っ越し前のライブドアにも

>造反議員が51人もいたと云いますが あなたの論を正論とするならば、51人しかいなかったと云うのは、日本国民にとって不幸の極みです。

というコメントがあり、全くその通りと思っていたら、トラックバック先は構造改革を推進している人のようだ。

ガロアさんの質問に答えるカタチで、コメント欄に書き始めたら長くなったので、ここに掲出しよう。

========

>はじめまして。
>読谷村に住んでいるガロアというものです。
>『郵政事業は黒字、税金は投入されていない』ということですが、
>税金がすでに投入されていると言うことではなくて、
>「郵貯・簡保の資金が不良債権化しており、税金で
>穴埋めしないと戻ってこない」という未来形なのではないでしょうか。

質問に答えます。


郵貯・簡保の資金が問題だと思われたのは特殊法人などへの補助金政策的なカネの流れがあったからと思いますが、このことが問題になり2000年に廃止され、いまは国債を中心に運用されています。

このカネが戻ってこないということは、多くの銀行、民間投資家、外資が市場原理に基づいて行っていることが相当非合理的であるということになります。そのようなことは、日本ではおこりません。杞憂です。

>いずれにしろ、私としては、公務員がやるよりは、
>民にまかせた方がサービス全体としては良くなるのではないかと
>思っています。

いま、郵便局のサービスってそんなに悪いですか。日本全国へのカネの送金手数料なんか銀行の10分の1くらいではないですか。これが民間になって銀行並みになったら、それだけで大幅なサービスダウンです。

また、郵便物もわたしは大量に出してていますが、民間の宅配企業並みに値上げされるとたまりません。

>また、万が一サービスが少しくらいは悪くなるとしても、
>大幅な財政赤字を少しでも緩和させるためには、
>民営化するのが良いと思います。

万が一にもサービスが悪くなっては困りますが、それと大幅な財政赤字とは何の関係もありません。郵便局は財政を使っていません。したがって、財政赤字を緩和するために民営化がよいという理屈は通りません。

>NTTが民営化されてなかったら、今頃、日本の
>インターネット環境はアジアでも最下位でひどい状況であったと思います。
>そして、電話料金も今の何倍もしていたはずです。

インターネットが進展したのは20年前からの電電公社のロードマップの通りに通信環境が整っただけです。1980年、20年先には光ファイバーが張り巡らされ、電話料金は格段に下がり、人は会社に出社しなくても自宅の通信環境で仕事ができるようになる、というものがすでに示されていました。その実現の過程で民営化しなければならなかったということです。通信関連の技術進歩は20年先くらいまではしっかり見通すことができます。

>郵政の方も似たようなものではないでしょうか。

郵政、特に郵便配達は人間が行う仕事であり、電話のように格段に技術革新が進む分野ではありません。したがってインターネット革命とは本質的に異なり、民営化したから格段に料金は安くなりません。それどころか、ストが頻発して(民間並みに給料を上げろとして)かえって料金が上がる可能性の方が高いと見るべきです。

>『これまでの財政投融資は政府が保証しているので不良債権にはなり得ません。』
>ということですが、政府が保証しているというのは、いざというときは税金で穴埋めするという意味ではないのでしょうか。

先ほどもいいましたが政府保証が信じられないことを前提にしていては何も話は進みません。政府はいざとなったときには前回もいいましたが、通貨発行益を使うことができます。そして、いま、それを使うべきだという経済学者も多くいます。

また、いざとなっていないにも関わらず、民間銀行が潰れたくらいで政府は公的資金を大量に投入しています。なぜ景気を良くして銀行が潰れないようにしないのか、これの方が問題です。

>また、「不良債権」というのは、「回収不能」な資金のことをいうと思うのですが、いくら政府が保証しようが、回収不能となるのは回収不能となるのではないでしょうか。

なぜ、「不良債権」は景気を良くすることによって優良債券に化けていきます。景気を良くする政治を行うことによって、回収不能な債券を減らし、公的資金を使わないようにしようというのが、最も合理的な判断でしょう。

>初歩的な質問かも知れませんが、よろしくお願いします。

はい。わたしも3、4年前の何も分からないときに、経済掲示板でいろんなことを教えてもらいました。最初の1、2年は経済学用語の意味が分からなくて閉口しましたが、そのうちわたしが漠然と考えていたことが間違っているのが明快になり、また、漠然とこうなるのではないかと思っていたことが経済学でも正しいということが分かるようになってきました。

ネット上では例えば、

http://bewaad.com/archives/reflationindex.html

のテキストが、正統派の経済学入門の早道だと思われます。文献リスト、リンクも豊富ですばらしい出来映え。おすすめします。

また、郵政民営化反対の論理は綿貫民輔氏が明快に説明してます。

http://www.watanuki.ne.jp/contents/news.html

郵政民営化への経済学者の反対論は

http://blog.goo.ne.jp/hwj-tanaka/e/85f9d6e4f423f0de2e18afdee48800a5

つい最近経済掲示板で教えてもらった、早稲田の先生

http://www.waseda.jp/sem-masakatu/masakatu/column/20041227.html

など。

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Posted by 渡久地明 at 22:12│Comments(2)デフレ脱却
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解散総選挙を引き起こした郵政民営化。”改革”ってやった方がいい気がするけど、あんなに熱く反対している人も多くいて、というか、なんでそんなに強く反対しているの?その”なんで...
郵政民営化って何なの?【あきなふすきぃ】at 2005年09月30日 22:24
この記事へのコメント
丁寧なご説明どうもありがとうございました。

紹介して頂いたところも読んで勉強してみたいと思います。
Posted by ガロア at 2005年09月30日 22:15
う~ん。
納得です。

郵政の話ではないですが、僕は農業についても
同様の憂いを感じています。

何でもかんでも民間で上手くいくんだったら
そもそも国なんていらないのではないでしょうか?

単純な経済論で語られている日本経済って
本当に大丈夫なんでしょうかね~。
Posted by 今村展大 at 2005年09月30日 22:15
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