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2005年08月11日

小さな政府2

 この小さな政府の議論の視点をちょっと変えてみよう。

 グラフのタイトルをもう一回、トクと見て欲しい。

 OECD諸国の一般政府支出の規模(対GDP比)

 として世界比較を行うのは自然だろう。ところが、小さな政府論では、一般政府支出の額そのものを小さくする議論ばかりが取り上げられているのである。

 日本のGDPはいま500兆円。対して政府支出は約125兆円である。(「国・地方・社会保障基金を合わせた一般政府の支出規模(2004年)は、我が国ではGDP比約37%であり」から逆算)


185/500=37%

 が先の棒グラフになっているわけだ。

 さて、この37%を減らすには、確かに政府支出を例えば100兆円に減らせば

100/500=20%

と規模は減る。

 だが、経済政策によって、GDPを増やすことでも政府支出の規模は小さくなる。仮に橋本内閣が消費税を値上げしなかったとしたら、景気は年3%程度成長していたから4年後にはGDPは12.5%拡大して562兆円になっていた。政府支出の規模は

185/562=33%

 と大幅に縮小していたはずである。もちろん消費税増税分の政府収入は減少するが、実は消費税を上げて景気が悪くなったので、企業の法人税が消費税の増税分そっくり減ったのである。

 消費税を値上げしないという政策さえとれば、景気は拡大、税収が増え、不況からの脱却は今ごろできていた可能性がある。

 したがって、公共事業を毎年3%削るというのは景気に対してマイナスの効果しかなく、これを来年も続けるというなら、さらに景気は悪化の方向に向かうのだ。

 経済学に「合成の誤謬」という現象がある。これは、各家庭が支出をなるべく減らし、節約するのは、家庭にとってはお金が貯まって良いことだが、すべての家庭がこれを行うとものが売れなくなり、世の中全体はいまのような不景気になってしまうというものだ。正しいとことをみんなでやると、社会全体は困った状態になる。

 いまの小泉構造改革はこれをやっている。みんながカネを使わないときは政府が使わなければならないのだ。政府の支出や税制、金融政策で景気が回復するにしたがって、国民の収入は徐々に上がる。それまで失業手当を受けていた人に仕事が回ってくるので、社会補償費は減り、仕事を得た人は所得が発生し、所得税を支払うようになり、財政建て直しのサイクルに入って行く。

 国民が合成の誤謬に陥っており、アンケート調査などをやると、家計と同じように政府支出を減らすべきという意見が大多数を占めるので、小泉改革では本当に政府支出を減らしているが、これは間違い。国民の勘違いに政府が悪のりしているのだ。この結果、社会全体はますます不況に陥っているのに、小泉改革の支持率が多いのだ。15年続く平成デフレ不況はこの勘違いの呪縛から多くの人たち、いや、経済評論家も政治家も抜け出せないでいるからだ。それが分かっている政治家、小泉さんとは全く逆のことをすべきだ、という人がいまは正解である。

 改革なくして成長なし
 
 は、実際は

 成長なくして改革なし

 なのだ。

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Posted by 渡久地明 at 16:54│Comments(1)デフレ脱却
この記事へのコメント
計算が間違っていましたので数値を直しました。論点に変更はありません。すみません。(冷汗。よくやります)
Posted by 渡久地明 at 2005年09月30日 22:16
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