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2005年08月21日

沖縄の公共工事は観光産業より波及効果が大きい

観光の経済波及効果に関するレポートが沖縄県から、また、琉球銀行経済調査室が公共工事とプロ野球の波及効果についてレポートを出している。

これら3本のレポートはいずれも産業連関表を使って波及効果を調べている。

波及効果とは100億円のカネが沖縄県に投入されたらそれが、新たな需要を生みだし、投入した100億円以上の効果が現れるというものだ。

この経済波及効果に関する非常に丁寧な説明が具体的な計算方法も含めて島根県政策企画局統計調査課のHP(http://www.toukeika.pref.shimane.jp/subfiles/oshirase/303/)にあるので目を通して欲しい。

さて、冒頭の3つのレポートでは

(1)04年の沖縄の観光産業の経済波及効果:
直接効果4549億円 生産波及効果6903億円

(2)05年の沖縄の公共工事270億円の削減の経済波及効果:
直接効果272億円 生産波及効果475億円

(3)05年の県内プロ野球春季キャンプの経済効果:
直接効果31億2900万円 総合効果47億9000万円

 と分析されている。

 波及効果を直接効果でわり算すると、(1)の観光産業全体が1.52(2)の公共工事が1.75(3)のプロ野球のキャンプ効果は1.53となる。(3)は観光産業と同じである。

 大ざっぱに観光の波及効果が1.5倍くらい、公共工事は1.7倍となって、公共工事の経済効果の方が観光産業より大きい。
 
 このことから、公共工事が100億円減っても観光産業で100億円売上が増えれば、プラスマイナスゼロかというと、売上そのものはプラスマイナスゼロだが、経済効果は20億円マイナスと計算される。
 
 今年の公共工事は270億円減少するから、この分のマイナスを観光産業で埋めようとすると、313億円の増収が必要で、観光客数に換算するとほぼ1カ月分の45万人の増加が必要と言うことになる。

 観光客数は去年は515万人、今年は県の目標が540万人と、たった25万人の上乗せを計画しただけで、四苦八苦しているところである(540万人は越えると思う)。560万人にならなければ公共投資の落ち込みをカバーできないのだ。さらに来年は再び全国で公共投資が3%削減される予定である。

 これは大変なことである。公共工事を減らせという大合唱だが、減った分をカバーするにはリーディング産業である観光産業が前年比で9%伸びていないと県民の生活は向上しない、失業も減らないと言うことだ(実際には他の産業の伸びがあるから、所得は少しは伸びるだろう)。

 さて、沖縄ではいま、公共工事は必要がないのか。たくさんあるだろう。滑走路は早くつくらないと、肝心の観光産業が伸びなくなったらどの産業が観光産業を上回って沖縄のGDPを伸ばすだろう。

また、モノレールの延伸は首里から那覇や西原のインターチェンジまでなどとせこいことを言わずに、古島からまっすぐ返還される普天間まで行き、さらに名護まで伸ばすべきだ(この場合モノレールより新交通がいいかも知れない)。

台風でしょっちゅう切れる電力線は電信線と一緒に共同溝で地下に埋めるべきだ。

道路やトンネルや橋も必要なものはどんどんつくるべきだ。

つまり、沖縄では公共工事を減らす必要が全くない。どころか、減らすのはマイナスの影響が大きすぎる。失業率がゼロになるまで増やすべきだ。

あ、このように主張すると国の借金が増えるという人がいるが、実際には公共投資でGDPが拡大するので、公債残高の対GDP比は小さくなる。国全体の経済効果は2.3倍であるから、沖縄で100億円の公共事業をやると地元では170億円の効果となり、県外にもれた部分を含めると230億円の波及効果となる。

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Posted by 渡久地明 at 20:02│Comments(3)沖縄観光の近況
この記事へのコメント
ありがとうございます。

「あ、このように主張すると国の借金が増えるという人がいるが、実際には公共投資でGDPが拡大するので、公債残高の対GDP比は小さくなる。国全体の経済効果は2.3倍であるから、沖縄で100億円の公共事業をやると地元では170億円の効果となり、県外にもれた部分を含めると230億円の波及効果となる。」

の部分について、もう少しわかりやすく説明お願いできますか?
プロパガンダで借金を増えことにおびえる国民が多いですので。
復活の会では、その返し方、コントロールの仕方までシュミレーションしていましたね。

Posted by 伊敷豊 at 2005年08月21日 21:13
ありがとうございます。

「あ、このように主張すると国の借金が増えるという人がいるが、実際には公共投資でGDPが拡大するので、公債残高の対GDP比は小さくなる。国全体の経済効果は2.3倍であるから、沖縄で100億円の公共事業をやると地元では170億円の効果となり、県外にもれた部分を含めると230億円の波及効果となる。」

の部分について、もう少しわかりやすく説明お願いできますか?
プロパガンダで借金を増えことにおびえる国民が多いですので。
復活の会では、その返し方、コントロールの仕方までシュミレーションしていましたね。
Posted by 伊敷豊 at 2005年09月30日 22:17
なるほど。日本経済復活の会のシミュレーションにも後で触れようと思う。

なお、国の経済効果2.3倍というのは、乗数理論に基づくもの。実際は産業連関表から求める波及効果と乗数理論は異なる考え方だが、似たような結論になるものと予想している。

同じになるという解説もある。(国土交通省、観光消費の波及効果簡易推計システム「波及効果の推計手法はいくつかありますが、本調査では市町村レベルでも実施可能なことを念頭に、「乗数理論」を利用した手法としています。」)http://www.v-japan.jp/keizai/step2.htm
Posted by 渡久地明 at 2005年09月30日 22:17
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