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2005年11月10日

海兵隊は撤退である

 辺野古の新施設建設は、海兵隊の撤退である。
 
 撤退と知れば名護市長が、条件によって受け入れるというのは、当然の選択肢としてありえる。ただ、日米ともに、表だって、海兵隊は撤退するんですよ、とはいえない。しかし、すでにこのような撤退が予想されていたのである。吉元政矩氏の米海兵隊は要らなくなったという予想、SACO最終報告の「撤去可能な海上施設」という文言、神浦元彰氏の沖縄米軍なくなるという予想、アーミテージの「沖縄基地に長居はしない、アジアが安定したら出ていく」というわたしの問いに対する発言やアーミテージレポートでの「分散による沖縄基地負担の軽減」…といくつものサインがあった。

「2+2」合意は中間報告とはどこにも書いてなく、文書のタイトルは

 日米同盟:未来のための変革と再編

 となっている。マスコミはその通りに扱うべきである。なぜ、日本では中間報告というのか不思議である。

 文書は
 I  概観
 II  役割・任務・能力
 III 兵力態勢の再編
 
 からなり、
 
 IIIの中の
 
 ●柔軟な機器対応のための地域における米海兵隊の再編
 ○兵力削減
 
 に、
 「(沖縄の)第3海兵機動展開部隊(III MEF)司令部はグアムおよび他の場所に移転され、また、残りの在沖海兵隊部隊は再編されて海兵機動展開旅団(MEB)に縮小される」
 
とある。これは、III MEFの沖縄からの撤退のことである。

MEFはI、II、IIIがあり、長島昭久「日米同盟の新しい設計図」(02年3月、日本評論社)では、

MEF(Marine Expeditionary Force):海兵遠征軍

 と訳されて、こちらの方が一般に通用している。部隊というと小さくきこえるが、3つしかない米海兵隊の大きな軍隊の一つである。それが、

MEB(海兵遠征旅団)

 に縮小される。

 移動して、縮小する・・・

 III MEF司令部がグアムに移動するという言い方もあるが、実際にはIII MEFが撤退するということだ。

 長島氏の著書には、在沖海兵隊の撤退がまさに上に掲げたようなものになると予想した米研究者の予想があることが紹介されている(110ページ)。

 「(朝鮮半島に平和がもたらされ)、在韓米軍の主力である陸軍第2歩兵師団や沖縄駐留の第3海兵遠征軍がが撤退した後も、水陸両用戦の最小単位である第31海兵遠征部隊およびその支援部隊約5000人は残り、沖縄と韓国の間でローテーション配備となり、沖縄には旅団規模の事前集積施設が新設され、岩国基地へは撤退する海兵隊の固定翼作戦機に代わって空軍の作戦機が移動、普天間基地にあったヘリコプター群に代わって在韓米軍のヘリコプターが増強される」(ブルッキングス研究所、オウハンロン上席研究員、1997年のレポート)

 長島氏自身は提言の中で「具体的には、那覇港湾施設と牧港補給基地を普天間飛行場の移設が決まっている辺野古地区へ移設し、新設飛行場を軍民共用とともに自衛隊との共同使用とすることが考えられる。さらにはキャンプ桑江、キャンプ瑞慶覧なども中部地区の広大なキャンプ・シュワ部内に移転させれば、沖縄県の提示する懸案の大部分を解決することができる」と今回の合意とほぼ同じことを著書の中で提言している(186ページの【提言9】)。
 
 ただし、長島氏は沖縄基地がますます重要になるとしている。わたしは逆に不要になったと見る。

 結局、大きすぎた米海兵隊は沖縄からグアムまで撤退するのである。

 沖縄県知事はたとえ世論調査と大きく異なる結論であっても、大きな決断を下さなければならない局面にいる。

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 99年暮れのワシントンの取材で当時CFRの研究員となっていた長島氏とも意見交換の場があり、その時のご縁で著書を献本いただいていましたが、最近まで読んでいませんでした。すみません。ちゃーんと予言が当たってますね。すばらしいです。


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Posted by 渡久地明 at 23:15│Comments(0)返還基地の跡利用
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