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2006年06月18日

南北縦貫鉄道の検討

政府は辺野古沖V字型滑走路建設など米軍再編の引き換えに南北縦貫鉄道、那覇空港新滑走路、港湾、その他道路などを検討している。昨年12月30日の読売新聞に、次のような記事があった。(読売の無料サイトからはすでに削除されているが、2ちゃんねるにコピペがあったので転載)

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【沖縄】普天間移設の新振興策、那覇—名護間60kmに鉄道建設を検討[12/29]

1:依頼159@試されるだいちっちφ★:2005/12/30(金)12:00:15ID:???0
★普天間移設の新振興策、那覇—名護に鉄道を検討

 政府・与党は29日、米海兵隊普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)のキャンプ・シュワブ沿岸部(名護市)への移設について、地元の理解を得るため、同県北部の新たな振興策を策定する方針を固めた。
 目玉事業として、名護市と那覇市とを結ぶ鉄道の建設、那覇空港への新滑走路建設などの交通基盤整備計画を検討している。在日米軍再編の最終報告が来春策定された後、新振興策をまとめる考えだ。
 日米両国は1996年、普天間移設を決定。政府は代替施設を辺野古沖(名護市)に軍民共用空港として建設することとし、2000年度から10年間、年100億円規模の北部振興策を実施する予定だった。
 しかし、辺野古沖への移設が頓挫し、10月の在日米軍再編中間報告で、移設地がキャンプ・シュワブ沿岸部に変更されたため、政府・与党は新振興策を検討することにした。軍民共用空港の計画も白紙となったことから、鉄道計画はその代替手段の意味を持つ。
 沖縄県では、那覇市にモノレールがあるが、鉄道はない。那覇市から約60キロ・メートル離れた名護市を訪れる観光客はタクシーなどを利用している。政府・与党は鉄道建設で北部への観光客を増やし、沖縄市などに駅を設置して沿線の利便性向上を目指す。06年度にも、調査に着手したい考えだ。
 一方、那覇空港への滑走路新設は、県が以前から求めていた。同空港は大型旅客機が離着陸できる3000メートル級の滑走路1本を持つが、自衛隊との共用で、04年は総着陸回数約5万7000回の約2割を自衛隊機が占めた。自衛隊機のトラブルで滑走路が閉鎖されることも少なくない。
 このほか、新振興策には、道路整備、情報通信機能強化、港湾などの海上交通機能整備なども盛り込まれ、全体では数千億円の規模となる見通しだ。

(2005年12月30日3時4分読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20051230i101.htm

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この記事で南北縦貫鉄道について大きく取り上げられたのに対し、あまり地元では盛り上がりがないように見える。ただし、南北縦貫鉄道については古くから議論が盛んである。復帰時には那覇=名護間の鉄道を政府に要求しようという案があったが、建設費が500億円もかかるので(!)、(びびって)見送ったという経験がある(03年、ゆいレール湖城社長の就任パーティーで牧野副知事の挨拶)そうだ。「あの当時つくっておけば良かった」と牧野氏は述懐しておられる。

南北縦貫鉄道について、わたしも主張したことがある。その元になったのは4年前の知事選で吉元政矩・元副知事が公約として南北縦貫鉄道を挙げたことがある。鉄道などは採算がとれないのではないかと漠然と考えていたが、採算はとれるとする県の報告書もあるといい(手元にないが)、ルートもトンネルや橋を駆使して用地取得はそれほど難しくはないということだった。費用は5000億円前後を見込んでいたと記憶している。

経営が成り立つという計算があるならやるべきだ。そこで、普天間の返還が早まりそうな気配となった04年、

《緊急提言》 目の前に来た普天間返還 沖縄全体の再開発考えるべき(渡久地 明、04年3月13日)
http://www.sokuhou.co.jp/library/futenma04.html

という主張を行い、その中で南北縦貫鉄道を建設すべきだと述べた(セットで那覇空港沖合展開、大深度港湾の建設も)。この記事は吉元氏がご自身のHPに転載しておられる。

沖縄県は南北縦貫鉄道について、どんな考えを持っているだろうか。県議会では高嶺善伸さんが熱心で、平成12年(00年)第4回沖縄県議会(定例会)に次のようなやり取りがある。

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 次に、総合交通体系についてであります。
 (1)、沖縄南北縦貫鉄道導入について。
 戦前走っていた軽便鉄道が戦争で破壊され復活されずに今日に至っており、本土復帰後県議会の決議も含めて全県的な鉄道建設運動がありましたが、当時の国鉄再建問題で立ち消えになっています。ことしになって沖縄南北縦貫鉄道を実現する会のNPO活動が発端となり、定時・定速で本島北部と南部を結び地域間格差をなくそうという沖縄鉄軌道導入問題が盛り上がっており、県議会でも超党派で沖縄県議会鉄軌道導入促進議員連盟がスタートし、沖縄県市議会議長会、沖縄県市長会の決議がなされ、知事にも要請がなされていると思います。
 日本鉄道建設公団も既に沖縄鉄道建設を前提とした条件整備に着手したと伺っており、鉄道の恩恵を受けてこなかった沖縄に国策として鉄道を建設する千載一遇のチャンスと言われております。現在行われている沖縄県総合交通体系の見直しの過程で鉄道導入の文言を入れるかどうか、注目されています。
 そこでお聞きします。
 ア、知事は、沖縄に南北縦貫鉄道を導入することについて率直にどのような認識を持っておられるか。盛り上がっている県民世論に対してどのように感じておられるか。
 イ、鉄軌道導入可能性調査の結果、どの時期にどのような組織で評価するか。新たな沖縄総合交通体系基本計画に含めるかどうか、どのようなプロセスで決まるのか、そしてその時期はいつか。
 ウ、知事は、これまで国に対して鉄道導入について公式、非公式を問わず打診協議したことはないか。今後、新法、新計画政府要望に対する県案として協議する考えはないか。
 エ、昭和56年9月に策定された沖縄県総合交通体系基本計画で、「北部圏の成長と都市機能の成熟が広域的展開を必要とする段階で検討すること」になっているが、ポスト3次振計で検討してはどうか。

(略)

(これに対する知事答弁)

 次に、総合交通体系について、知事は、南北縦貫鉄道導入について率直にどのような認識を持っているか、また盛り上がる県民世論についてどのような認識を持っているかについてお答えいたします。
 沖縄本島に鉄軌道の導入を求める「NPO・沖縄南北縦貫鉄道を実現する会」や沖縄県議会鉄軌道導入促進議員連盟の設立など県民世論の高まりは公共交通の利便性の向上、都市交通問題の解決、高齢化社会の到来や環境問題への対応など、21世紀における本県を支える基盤整備の必要性や豊かな地域社会形成への期待のあらわれであると認識しているところであります。
 南北縦貫鉄道の導入につきましては、交通需要や採算性など検討すべき課題が多岐にわたることから、県としましては、今回「総合交通体系基本計画」の見直しに当たっての基礎的な資料を得るための鉄軌道導入可能性基礎調査を行っており、引き続き検討していくべき課題と考えております。

沖縄県議会議員 高嶺善伸のホームページ
http://www5.ocn.ne.jp/~zensin/no4gikai.htm

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この答弁のあとに出た、肝心の沖縄県の計画(14年(02年)3月の「沖縄県総合交通体系基本計画」)を見ると、南北縦貫鉄道という言葉は使っていないが、沖縄本島の骨格的な公共交通システムの検討として、軌道系交通システムの導入を挙げている。

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1)本島県土軸の形成
①多様な活動や交流を支援・促進する骨格幹線交通網の拡充
那覇、沖縄、名護、普天間等の拠点都市の相互連携・補完による拠点機能の向上、拠点都市と他地域間の連携強化、及び地域間の交流促進、並びに基地跡地利用を含めた新たな拠点都市の戦略的誘導に向け、モビリティの高い幹線交通網の整備、拡充等を展開し、本島の県土軸を形成する。
a)本島のラダー型骨格道路網の整備・那覇空港自動車道、名護東道路、沖縄西海岸道路、那覇インターアクセス道路、南部東道路、国道329号沖縄バイパス、国道331号、中部縦貫道路、中部横断道路、宜野湾横断道路(仮称)等の整備推進
b)本島の骨格的な公共交通システムの検討
・軌道系交通システムの検討や基幹バスシステム等の導入促進
・沖縄自動車道等を活用した高速バスの拡充

総合交通体系基本計画、第4章戦略的に推進する施策体系、3産業・物流活動の支援、(3)施策の内容(PDFの9ページ)
http://www.pref.okinawa.jp/koutsuu/pdf/04.pdf

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検討時期については、中長期的な取り組み(概ね2012年以降)としているが、これが南北縦貫鉄道に当たるものとなるだろう。また、02年から11年までの沖縄振興計画には、

「さらに、軌道系を含む交通システムについて調査、検討する。」(第3章 振興施策の展開、7 持続的発展を支える基盤づくり、(1) 交通体系の整備、ウ 陸上交通)
http://www8.cao.go.jp/okinawa/3/32.html#3-7-1

とあり、一応視野に入れているが、新振計期間中は「検討する」だけにとどめている。02年当時は時期尚早と見られ、10年以内に検討としたかも知れない。

しかし、この計画が出た時期といまと異なるのは、米軍再編で嘉手納以南の基地が2014年には返還されるという明快なロードマップを日米が合意したことだ。02年当時、嘉手納以南の米軍基地返還と絡めて鉄道を検討する状況にはなかったと思う。しかし、いまはある。検討時期を早め、新たな沖縄振興策とすることは十分考えられる。

ちなみにわたしも最近「国土交通省はランニングコストがとれるなら着工しても良いという考えだ」といううわさを県庁で聞いている。

ゆいレールが大方の予想に反して当初目標の乗客数をクリアしている。これは県民の利用に加え、観光客の好調な伸びに支えられた結果だと思われる。那覇空港の沖合い展開と合わせて、観光客数を2018年頃に1000万人と計画するなら、南北縦貫鉄道もランニングコストを取れるように計画する方法があると思われる。返還軍用地の再開発にとっても鉄道は有効だと思う。

冒頭の読売報道の後追いが県内では見当たらない。あまり盛り上がっていないのは事実で、これはV字型滑走路建設の見返り、という条件付きになるのを県民が嫌っているからだと思われる。手放しで歓迎しにくい雰囲気が確かにある。米軍は実際には撤退であることが県民世論に織り込めるなら、話は早く進むと思うが。アジアが安定することを前提に、すぐにでも着工可能な検討や研究に取り組んでおいて損はないと思われる。


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Posted by 渡久地明 at 16:08│Comments(1)返還基地の跡利用
この記事へのコメント
県議会議長への提言をさせていただきます。

高嶺議長は議員の名前を読み上げられる際、男性議員には従来と変わらず「○○君」、女性議員を「○○さん」としていますが、私からいわせればこれは改善じゃなくて改悪だと思います。こうするぐらいなら従来どおり女性議員も君付けで呼ぶべきだ。

なぜなら一般的には男女とも「さん」が使えるのに、目下の人や児童生徒には男性は「君」で女性には「さん」とするのは差別感を感じるからです。
今多くの学校では男子生徒も「さん」付けで呼ぶようになっていると聞きます。だから教育現場で約半世紀にわたって行われたあしき慣習を政治の世界に持ち込まないでいただきたい。

高嶺議長のやり方がそのまま受け継がれることがないことを願っています。女性議員にも「君」に戻すか、あるいは土井たか子さんみたいに男女問わず「さん」にするか、どちらかに変えるべきだと思います。
Posted by 上原卓 at 2011年08月19日 13:28
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