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2010年11月25日

海兵隊撤退を要求すべきだ

北朝鮮が韓国の島を攻撃したことが大きなニュースとなったが、いよいよ北朝鮮の末期症状ではないか。

北朝鮮がどうやって片付くか分からなかったが、これが末期症状だとすると、沖縄海兵隊の撤退がますます近づいた。

もともと沖縄県は2015年までに朝鮮半島問題が片付くだろうと予想して、基地返還アクションプログラムをつくっていた。それも1994年頃だ。北朝鮮問題の解決をはじめTPP、中台関係などの世界情勢をかなり精密に予測していたから驚きだ。

沖縄米軍の大きな役割は朝鮮半島問題への対処であり、一方の中台は経済的な結びつきが強固なものとなり、紛争が起こったとしてもエスカレートするとは考えられない。

だいぶ前になるがアーミテージにインタビューした際「沖縄基地に長居はしない。アジアが安定したら(沖縄から)出ていく」といっていた。あれから10年たった。いよいよその時期が近づいたのではないか。

知事選の報道で海兵隊のグアム移転は伊波氏の持論とされているが、独自のことをいっているわけではない。アーミテージ発言、海兵隊のグアム移転に関する海軍の環境影響評価書(『沖縄の海兵隊はグアムへ行く』(吉田健正)という本、また、先に紹介した『こんな沖縄に誰がした』(大田昌秀)にも詳しい解説がある)、米でさんざん議論の的になっている基地閉鎖統合プログラムと議会での軍の予算削減問題に加え、北朝鮮の末期的症状を見るとあらゆるベクトルが海兵隊の撤退を向いている。最後に残るのは日本政府の米軍にいて欲しいという問題だけだということが鮮明になってきた。伊波氏は持論というより、軍事的にまともなことをいっているのだろう。

沖縄県知事は天に向かって海兵隊の県外移転を唱えるのではなく、政府に対して要求すべきだ。

ちなみに小沢一郎氏が民主党代表選で海兵隊の撤退論を唱え「そう遠い未来ではなく、10年かそこら」で解決するというようなことをいっているのをテレビで見た。小沢氏もかなりの軍事通であることをうかがわせる一言だった。  


Posted by 渡久地明 at 21:26Comments(2)返還基地の跡利用

2010年11月22日

沖縄から日本が変わる

海治広太郎から動画UPのお知らせがあった。当方、パソコンが古すぎて見られない状態だが、見た人の感想求む。

『今、沖縄から日本が変わる!』海治広太郎×出縄良人
↓↓↓↓↓
http://www.theatertv.co.jp/movie/4788  

2010年11月22日

こんな沖縄に誰がした

 『こんな沖縄に誰がした』(大田昌秀著、同時代社、B6判、294ページ、1900円)を献本頂いた。急いで読みました。ありがとうございます。





 沖縄の基地問題に関する本は基本的なものは理解していなければならないと思いながら、わたし自身、新聞記事やインターネットの記事を読む程度で、まとまったものは最近はあまり読んでいなかった。この本は琉球処分から始まり、日本敗戦、憲法制定の経緯、沖縄の米軍統治と返還、1960年代から始まっていた辺野古基地建設の経緯、知事在職中の政府との交渉、海兵隊のグアム移転計画の詳細と意味するものなど最新の論説が折り込まれている。
 
 わたしは沖縄の米軍基地は日本政府がアメリカに頼んで置いてもらっているのだろうと思っているが、それを実証的に示唆する記述もある。
 
 海兵隊が抑止力にはならないどころか、米国内部でも不要論があることは良く知られている。これらの主張を数多く本文で紹介している。
 
 海兵隊不要論をいうと「アメリカにはいろんな意見がある」と片づけて、しかし「○×という理由で必要である」とする日本の論者も多い(居酒屋談義も含めて)。素人は黙っておれといわんばかりだが、しかし、本書で取り上げられた研究者や軍の幹部に比べて、「おまえはなんなんだ。鼻くそか」といわざるを得ないような人たちのTVや雑誌での発言は痛ましい。
 
 大田さんは海兵隊が実は沖縄には要らないと主張する米側の証言をいくつも紹介した上でこうかいている。

 こうした海外の知識人の議論の積み重ねに反して、日本では歴代の総理大臣をはじめ政府高官や政治家、専門家たちの多くは、声高に日米軍事同盟の重要性だけに、言及するだけで、国土面積の〇・六%しかない狭小な沖縄に過重な基地を押し付けて憚らず、爆音や事件・事故など日常的に生命の危険に晒され、平穏な生活が破壊されている沖縄住民の犠牲には一顧だにしないのだ。基地から派生する犠牲が自分たちの家族にでも及ばないかぎり痛くも痒くもないというのだろうか。こういう人々に国益を論ずる資格があろうとは到底思えない。
 それ以前に、一体、沖縄はアメリカの領土、もしくは占領地なのか、果して沖縄は日本という主権国家の一部と言えるのか。日本にとって沖縄とは何なのかが問われることもなしに、半世紀以上が経った。日米同盟を至上命題に掲げ国民の一部を平然と犠牲にして顧みない国とは一体、何なのか。誰しもが疑問に思うことである。自らは安全な場所にいながら、新たな基地の建設を受け入れようとしない沖縄を・安保を損ない日米同盟を弱めると批判して止まない無神経な人びとは、まず自らの庭先に基地を引き受けた上で発言すべきではないか。自らはいかなる意味でも傷つかないまま、他人の痛みに一切、配慮することもなく、安保、安保、国益大事と叫び続ける人の感性と人間性を疑わざるを得ない。このような発想、態度で、いくら口先で「東アジア共同体」の確立をうんぬんしたところで、近隣諸国民から信用される筈もなかろう。(192〜193ページ)

 こういうことが沖縄からはよく見える。それには、やはり本書にある明治維新と沖縄から話しをはじめる他はないだろう。琉球処分で沖縄を差別的に取り扱った歴史が示され、それが第二次世界大戦とそれに続く米軍の沖縄支配、復帰後の沖縄の取扱に一貫していることが改めて分かる。
 
 結局、沖縄問題=日本問題であり、これを解決すること、その経験を活用することで日本自身が世界から尊敬される国になるだろうということも分かる。簡単な問題だと思う。  


2010年11月21日

海治広太郎の沖縄政策

 沖縄県知事選挙が盛り下がっているところに、海治広太郎氏から、コメント欄に次の提案を受けた。コメント欄では文字が小さく、もったいないのでわたしがUPし直す。
 
 選挙が「盛り下がっている」というのは伊波陣営が失われた12年を打ち出しているのに公約の中身は仲井眞陣営と似たり寄ったり。失われた12年を取り戻すというなら、全県フリーゾーン、一国2制度をいうべきであるが、全くない。一方の仲井眞陣営は、いままでと同じことをやるといっているだけである。トホホ。

 この盛り下がり方は情けない民主党と自民党という2大政党のだらしなさと関連している。両方がバカなことを言うので、沖縄の選挙まで委縮している。そのような退廃ムードを突き抜けた海治広太郎の提言であり、わたしとしては全面的に支持し、このような精神をいまこそ拡大したいと思う。
 
 次の一歩を踏む出そうというなら、下のような熱というか問題意識を踏まえて、もっと挑戦的な論戦を展開して欲しかった。
 
 今のところ沖縄県知事選は、つまらない、退屈な選挙と成り下がっている。投票する人いないんじゃないのか。
 
渡久地明




<以下、海治広太郎のメールと提言書>



明さん、ご無沙汰です。

 日本独立運動のblog始めました。
http://www.umijikotaro.info/blog

 本土のケーブルテレビ会社シアターテレビジョンのネットテレビ部門(ピラニアTV)で沖縄に関する対談をやりました。その広告が月曜日の新報とタイムスの朝刊に載ります。タイトルは、

「今、ネットTVからメディアが変わる!」
「今、沖縄から日本が変わる!」

 また、東京にいる沖縄出身の一部有力者が沖縄発の情報発信を支援するために立ち上げたインターネット党という政党のアジア太平洋代表を仰せつかりました。まだ体制が固まっていないので、自分の力量を試す絶好の機会です。既成政党に参加して奴隷になるよりも、新しい政党を立ち上げる方がやりがいがあると思うので、奮ってご参加ください。政策を固めるのに半年ほどかけ、それから組織を急激に拡大するつもりです。

 明さんの農業政策はとても優れており、私の農水ラインとつなげたいので、ゆっくり相談しましょう。

 我々もいつの間にか、宮城弘岩門下の長老格とも言える年齢になってきたように思います。そろそろ宮城さんの理想の実現に向けて動きたいですね!

 私としては、これから沖縄の要求を本土に突きつけるために、少しヤクザ化しなければと思っています。明さん、精神的にバックアップしてください。

 あと、島さん(ボリビアにいる島袋正克氏)からお叱りを受けた21世紀戦略メモですが、中央政府への経済要求を前面に打ち出してくれという声が強かったので、基地に触れた部分を経済要求に書き換えた修正版を送ります。

 要求の重要な柱は、

1.尖閣諸島周辺の海底資源の試掘・採掘権及びこれに関係する許認可権の沖縄県への権限委譲
2.県内に対する国税(法人税・所得税・相続税・贈与税)の免除

 の2本です。

 取り上げてもらえると助かります。


戦略メモ修正版

海治広太郎の沖縄21世紀戦略メモ(ver 2.1)
2010.11.15


1.沖縄県固有の資源
 A. 沖縄県の歴史的・地理的特異性
 B. 県民の独立心と国際的商人(交易)文化
 C. 温暖な気候と花粉症フリー
 D. 海と平和を願う心

2.資源を生かした振興戦略
 A. 沖縄県の歴史的・地理的特異性を今こそプラスに転化し、日本の発展に役立てる
 県経済は、1972年の沖縄返還まで米国の施政下にあり、円安と高度経済成長の恩恵を受けられなかったため、工業基盤が弱い。しかも、全国の専用施設の74.7%が集中する米軍基地が、県民の経済活動にとって重要な中南部地域のかなりの部分を占めている。

 国税収入: 全国47兆5546億円 沖縄県 2632億円 (0.55%)(H14実績)。

 他府県と類似の成長戦略を取れない分、日本の他地域に先駆けて海洋資源開発、観光、貿易、金融の振興に積極的に取り組むことができる。今回の中露の行動からもわかるように、安保・国防、沖縄・北海道振興、領土外交、そして国際的な経済・観光振興・資源開発は相互に密接な関係にあり、政府が地域住民の声に耳を傾け、その主体性を積極的に活用した総合的な戦略を編み出す必要がある。日本人は、沖縄問題に取り組むことで、島国根性から抜け出し、真の意味で国際化し、独立することができる。沖縄県のかかえる問題は、全日本人にとっての試練であると同時に、日本が今後、国際的に発展していくための貴重な試金石である。

 B. 独立心と交易文化を生かし、次世代を国際的商人として育成する
 政府(通産省)に支援された戦後日本の総合商社)では、もはや多様化した国際市場に浸透することはできない。ユダヤ系や華僑を見習い、商人一人一人の個性と創意工夫を生かせる営業スタイルに転換しなければならない。海外に単身で乗り込み、現地の住民を組織し、販売組織を構築できるオルガナイザーを育てる(ネットワーク展開に切り替える)必要がある。

 沖縄県民は、これまでも自営業者として海外の現地社会に溶け込んでビジネスを展開してきた実績があり、今後主流になるビジネス・スタイルでは、縦社会の伝統の強い県外の人々よりも、はるかに高い能力を発揮する。ただし、薩摩侵攻以降、サトウキビを中心とするモノカルチャー経済を強制され、県民が国際的ビジネスのノウハウを失っているため、学習能力の高い青少年を対象に最新の商人教育を施す必要がある。

 C. 温暖な気候と花粉症フリーを生かし、国際交流、語学の学習、そしてビジネスに役立てる(観光の視野を国際的に広げることで、多角的なビジネス機会が生まれる)
 沖縄の気候は、海洋性気候であるため、相対的に夏は涼しく、冬は温暖だが、低緯度にあるため、夏は比較的高温になる。関東以北の住民にとっての避寒地として特に魅力がある(付加価値が高い)のは冬季だと考える。これまでのような観光リゾートの発想では、設備投資コストがかさむ上に、季節変動が大きいことで年間の稼働率が低く、不況下におけるビジネスモデルとしては成立しない。やはり、これからは、リゾート展開よりも、避暑・避寒地として、富裕層の長期滞在と国際交流を狙った方が客単価も高く、環境負荷が少ないために、県民にとってのメリットが大きい。

 また、県民にとっては、沖縄の冬でもかなり寒く感じられるため、緯度による体感温度の差を上手に活用し、県外の避寒客を受け入れた分、県民が沖縄よりもさらに温暖かつ滞在コストの安い東南アジアを避寒地として利用し、その差額を利益として獲得する一方、東南アジアで語学を学び、ビジネスを展開するというモデルを考える必要がある。

 逆に沖縄よりも気温の高い東南アジア国民は、一番暑い夏に沖縄を避暑地として利用できる。

 ・ ターゲット市場
  i) 冬の関東以北の住民(特に北海道民)にとっての避寒地
  ii) 春と秋の県外住民にとっての花粉症逃避地
  iii) 夏の東南アジアの富裕層にとっての避暑地

 ・ 発想の転換
 市場を囲い込むためには、他地域との戦略提携によるパッケージ化や複合展開が必要
  - 冬場に県外住民が南下した分、県民は東南アジアに南下して語学を学び、商売をする。
  - 夏場の避暑地になる北海道とセットにし、航空会社と組んで「冬は沖縄、夏は北海道」という観念を定着させる。(道民は、サハリンや中国北部に北上し、その期間を語学学習やビジネス展開に充てる)

 D.平和を願う心と海を生かし、沖縄を世界平和と共生のシンボルとして発信する
 これまでの観光開発は資源浪費型で環境負荷が高く、持続性に欠けていた。「沖縄の海」は、今後、環境保護と平和への強い願いを国際的にアピールするために活用すべきであり、その方が国際的な宣伝効果も高い。沖縄の海を平和と共生のシンボルとしてアピールすることでメッセージ性が高まり、インターネットを利用したコンテンツの制作・配信など、沖縄の海の持続性のある多角的活用が可能になる。

3.初動
 A. 政府が沖縄県の試掘・採掘権を認可し、地域主体の国際的開発枠組みを整備する
  - 現在問題となっている尖閣諸島は、歴史的にも沖縄県との結びつきが強く、現在も沖縄県石垣市に属する。政府は、歴史的主張に併せて、地元主体の資源開発による実績作りを早急に進める必要がある。尖閣問題の本質が資源問題である以上、日本政府が、まず地元沖縄県の採掘権を認可し、これを土台にして日米共同で国際的開発枠組みを構築し、その上で中国・台湾の資本を誘致するという積極策を積み重ねる以外、この問題を解決する道はない。

 B. 県民の独立心と国際的商人(交易)文化を生かす
  - 商人としての基礎的訓練として、青年たちに行商をさせる。批判は多いものの、現代の行商システムとしては、無店舗販売システムが優れている(公費を使わずに教育できる)。米国に展開するにはオンライン・ビジネスが有利である。まず、それぞれの地元で営業させ、成績優秀者を本土に送り込み、本土での成績優秀者に短期集中的な語学訓練を施し、米国に送り込む。米国に送り込まれたスタッフがA.の活動を支援するのと引き換えに、活動を支援する。
 
 C. 温暖な気候と花粉症フリーを生かす
  - 観光庁がとりまとめ役となり、国内は沖縄と北海道が中心になり、ロシア、中国、米国、南米、東南アジアなどの国々とタイアップし、観光協定を結び、共同基金を設置し、観光振興を図る(観光外交の積極的展開)。

 D. 海と平和を願う心を生かす
  - 行政が中心になって平和運動と海洋環境保護運動に取り組む(ハリウッドと連携して映画を制作するなど)。

4.最終目標
 A. 沖縄を環太平洋の経済・金融・観光のセンターに発展させることで、県民所得を日本最高水準に引き上げ、完全失業率を全国最低水準に引き下げ、沖縄が日本経済の牽引役として日本の経済成長に大きく貢献する。

 B. 既存のシステムを利用して販売ネットワークを形成、市場を確保した後に(二段ロケット戦略)ネットワーク型の総合商社を沖縄に設立し、世界有数の財閥に育てる。

 C. 長期滞在型交流システムによって県民と環太平洋諸国民との大規模な交流を進め、沖縄の支持者を増やすと同時に、環太平洋連邦を推進し、その枠組みの中で、沖縄と台湾の平和を実現する。

 D. 日米地位協定をドイツ並みに見直し、粘り強い運動を積み重ねる中で、沖縄が世界平和と環境保護のシンボルになる。

5.以上の構想が実現するための条件 - 沖縄を起爆剤とする日本の政界再編
 I. 県知事選を契機とする県民の大同団結とインターネットによる世界に向けた情報発信

 II. 一国二制度の導入による全県フリーゾーン化と、国税(法人税、所得税、相続税、贈与税)の免除。世界最低の税率によって世界から人と企業と資金を流入させる。

 III. タックスヘブン効果による人と企業の流入に伴う観光産業の活性化(観光客の3倍増)

 IV. 沖縄のエネルギーの本土波及とインターネット選挙による政界再編及び救国政権の形成

 V. 沖縄が旗を振り、日本国民の総力を結集した外交交渉と環太平洋連邦運動を推進する。

Marcelo Umiji

  


2010年11月15日

11月の県外線4.1%増

 航空各社の10月の県外=沖縄線旅客数は4.1%増となった。10月15日までに各社が月報を発表した。

 JALが1.6%増、ANAは5.9%増、JTAは23.0%減と神戸線、北九州線を運休したため大幅に後退した。RACは5.4%減だった。SKYは東京線の増強、神戸線、北九州線の新設などで1.67倍と躍進した。

 また、石垣・宮古・久米島の県内主要3路線の旅客数は合計で7.4%増と好調だった。(沖縄観光ニュース)  

Posted by 渡久地明 at 12:04Comments(0)沖縄観光の近況

2010年11月14日

沖縄全域FTZ、いまのTPPと同じ

TPPとかFTAとか、FTAAPとかAPECってわけの分からない略語が飛び交っているが、基本的には沖縄全域FTZと同じである(よけい分らんけど)。

FTZとはフリートレードゾーンで、復帰前の沖縄にあり、いったんなくなったが、1980年頃から再生に向けた議論が巻き起こり、20年くらい前に自由貿易地域那覇地区として建物ができた。

さらに1997年ごろ、いまと同じ基地問題の高まり、経済の自立に向けて沖縄全域フリーゾーンが議論され、当時の自民党政権でゴーサインがでた沖縄振興策である。

FTAはフリートレードアグリーメントで、2国・地域間の自由貿易協定、FTAAPはアジアパシフィックの多国間の自由貿易協定、TPPはトランスパシフィックパートナーシップで、環太平洋地域の貿易以外の非関税障壁の撤廃や貿易以外の自由化も進めようというものだ。

世界がこのようなモノを目指していることは、当然、沖縄FTZの導入の際にも議論された。沖縄FTAはいずれ日本全体も同様な環境に置かれることを見通して、沖縄で先行的に実施し、さまざまな課題をクリアしておこうという意味もあった。

ところが、いまの日本と同様に沖縄でさえ、農業が壊滅するとの強力な反対運動が起こり、結果としてさまざまな例外を認めざるを得ず、撤廃されるのはせいぜい石油関連の関税や内国消費税程度ということで落ち着き、導入時期も当初の2001年から2005年に先送りされた。

この間、沖縄県政はだれっぱなし。良心的な県職員でさえ、堂々と失われた8年といっていた。

その失われた8年の後を継いだのが現県政で、されに失われた年限が4年間追加された。わたしは、別に全県FTAの導入廃止を沖縄県が宣言したわけではないのだから、いまからでもやるといえばできるはずなのに、何でやらないのだろうと思う。今月末の知事選でどちらかの陣営が公約にするかと思ったら、両方とも無視とはどういうことだろうか。

沖縄FTZが実施されていれば、いまの日本は第二の黒船とか新たな開国などともめる必要はなかった。沖縄FTZが実現しなかったのはただ一点。1998年の沖縄県知事選でFTZ反対という人が大量の官房機密費の投入もあって当選し、全域FTAの廃止を宣言しないまま、何もしなかったからだ。

自由貿易の最大の問題は農業となっている。しかし、これは解決可能だと思う。

農家の平均年齢が65歳とか70歳となっているのを、有利な条件と見て、作物の全量買い取りプラス農地と引き換えに終身年金を国が支払う。20年くらいで農地のほとんどが国有化されることになるが、そこで新たな農業の担い手(若い人たちや企業による農業)が必要なら大規模農業を実現する、農業全体を再生するというような解決策があるはずだ。

沖縄FTAの議論では、県産農産物は競争力があるという主張もなされたが、全量買い上げ、終身年金と農地の国有化の方が分かりやすいのではないか。

高齢化が進む農家への農地と引き換えの終身年金というアイデアは、アメリカの大学で行われている、有力教授の終身雇用制度の転用だ。給料を終身支払う代わりに、死後、財産を大学が引き取るということが広く行われている。ノーベル賞級の教授が80歳を超えても研究を続けているのはこのような仕組みがあるという。


似たようなことをいまの日本の農家を対象に行うことで、農家の不安を取り除くことができるのではないかと思う。農地の広さに応じてカネを貸すというものではなく、年金制度なども組み込んで農業政策として採用されるべきだ。沖縄FTZの時にもこのような議論が行われたかも知れないが、わたし自身は聞いたことがなかった。沖縄FTAの導入があれば、これらの課題がとっくの昔に解決されていたのではないかと思う。

(追記:11月15日 この話しは高橋洋一氏が経済学的な説明を行っていたので、リンク。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/1572

自由貿易は必ずメリットになる、という経済学の基本とそのメリットを使って農家には再配分すればよいという話)  


2010年11月09日

沖縄の自立を考える‐最初からムリだった





 久しぶりに宮城弘岩さんの講演を聞きに行った。沖縄物産企業連合が主催する「沖縄の自立を考えるシンポジウム」で、司会の島田勝也さんに前から声をかけられていた。他に沖ハム会長の長濱徳松さん、マーケティングの伊敷豊さんが出た。会の終わり近くに伊波洋一知事選候補予定者がTV録画を終えて駆けつけ(主催者は仲井眞弘多候補予定者にも声をかけていたがこなかった)、「普段から宮城・長濱両氏の考えを取り入れている」と述べたえ上で(おや、お世辞もいえるんだ)、自説を展開した。が、それは省略。

 このシンポジウムで一番聞きたかったのは宮城さんが十五年前の沖縄全域フリーゾーン構想を、最近のTPP問題と関連して、どのように振り返るかということだった。

 それついて島田氏が水を向けたが、「全県フリーゾーンといまのTPPは全く同じ議論。基本的に輸出の多い国はTPPに加入するのが得。沖縄は政府がTPPに加入する・しないのどちらでも戦略をたてられる。加入する場合は米の生産があまりないことで、打撃は少ない。かえって農水産品も製造業も東アジア市場に拡大できる」と簡単に触れただけだった。

 それよりも沖縄の産業振興を阻害したのは、第一に米軍基地があったために産業が興せなかったこと、嘉手納町は九〇%が米軍基地でどうやって産業を興せるのかということだ。沖縄全体でそうなっていること。

 第二に復帰に未完成の部分があった。船舶輸送に日本の法律が適用されたため、運賃が復帰前の三倍になった。輸送費が国際相場の三倍に膨れ上がったことで、どんな産業振興政策をつくっても産業は起こらなかった。これでは自立はムリだと分かりながらほったらかしにした。

 第三に復帰特別措置法、沖縄振興開発計画で零細・中小企業の振興策が盛り込まれていなかったこと。中小企業振興法などを盛り込んでいれば違った展開になった。復帰特別措置法は社会資本整備の面での格差是正のための法律であり、この点は公共工事で全国並みとなったが、産業、所得格差の是正にはいたらなかったと述べた。
 
 また、県が策定した沖縄21世紀ビジョンについては、沖縄を島と見て将来イメージを描いたのは間違い。沖縄は都市とみて都市開発・人口を集積させる。都市は農産物が必要となり、やんばるなど農業生産地が生きてくる。一次産業が成り立つことで、やんばると都市の中間地帯に加工工業が起こる。中国が経済特区を作る際にこのような都市開発を行って成功している。香港もシンガポールも自分たちの国を島だとは言っていないと強力に批判した。
 
 基地がなくなったらその分の収入はどうするという問いには、基地が全部帰ってくれば七千億円前後の産業が必要になるが、それくらいをつくるのは難しくないとした。
 
 また、沖縄全域フリーゾーンの議論が展開された十二年前といまの沖縄で県民の意識はどう変わったかとの問いには、当時より県民は委縮していると述べた。
 
 以上が宮城さんの発言のポイントだが、司会の島田氏が引き取って、新しいリーダーを選ぶ際の参考にしたいと述べた。
 
 十五年前、沖縄では全域フリーゾーンが大きな議論となり、大田昌秀県政の最後の頃、二〇〇五年からの導入を決めて、政府も後押しするとしていた。当初二〇〇〇年からの導入を目指したが、県内農業団体や一部学者(二一世紀ビジョンの座長であるが)が大声を上げて反対したので二〇〇五年に先送りしたものだ。税の撤廃品目もせいぜいガソリンくらいと言うところまで骨抜きになった(それでもガソリンが六十円ならかなり、効果はあったと思う)。
 
 ところが九八年の知事選で稲嶺恵一さんが当選すると、驚いたことにこの話しがたちきえになった。これまでの大論争は何だったのだろう。多くの県民が驚き、落胆し、その間ますます貧乏になっていったというのがこの十二年のまとめだろう。そして、県民全体が委縮してしまって、知事選になっても何の論争も起こらない。投票率は過去最低を記録するのではないか。政権と結びついているはずの土木建設業でさえピーク時の受注から2/3前後に激減している。
 
 いま考えるとサトウキビは生産したもの全量を当時の価格で買い上げるという条件でいくらでも解決できたと思う。そうしなかったためかどうかは別として、サトウキビの生産量はピーク時の百七十万トンから現在は八十万トンと半減してしまった。
 
 本当に無為無策の十二年だったのだなあと思う。