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2006年05月30日

小泉内閣の政策転換

植草一秀氏が小泉「縮小均衡」構造改革について、詳しく書いている。

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 筆者は小泉政権が発足する1年ほど前に、小泉氏と中川秀直氏に対して1時間半ほどのレクチャーをしたことがあった。経済政策運営についての説明をするための会合だった。筆者と小泉氏、中川氏のほかには会合を企画した大手新聞社幹部の2名だけが出席した、5名限りのミーティングだった。
 筆者は均衡のとれた安定的な経済成長路線を確保することが当面の最大の政策課題であり、財政収支改善は中期的に取り組むべきであることを主張した。しかし、小泉氏は筆者の説明の途中に割って入り、自説をとうとうと述べて筆者の説明をさえぎった。結局、1時間半の会合であったが、筆者は説明を完遂することを断念した。
 小泉氏が主張した政策手法は「緊縮財政運営こそすべてに優先されるべき」とのものであった。当時の日本経済の水面下には巨大な不良債権問題が横たわっていた。この現実を重視せずに、緊縮財政路線を突き進めば、経済悪化、株価急落、金融不安増大、税収減少、財政赤字拡大の「魔の悪循環」のスパイラルに呑み込まれることは目に見えていた。

「失われた5年−小泉政権・負の総決算(2)」2006.05.10(http://web.chokugen.jp/uekusa/2006/05/post_1c1f.html

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その後、植草氏の予想どおりの経済の悪循環が実現したわけだ。このように予想したのは植草氏だけでなかったが、真っ向からこれに反対したのは竹中平蔵氏だったとエピソードをはさんでいる。

植草氏はまた、2003年のりそな銀行の破綻救済を契機に景気は回復していると述べている。しかしそれは構造改革の成果ではなく、破綻銀行に公的資金を入れるという政策転換によるものだ、という。

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 小泉政権は、政権発足以来、緊縮財政と企業の破綻処理推進を経済政策の二本柱として位置づけていた。

(略)

 ところが最後の最後で小泉政権は方針を全面転換した。大銀行は公的資金で救済されることになった。大銀行の破綻が公的資金投入で回避されるなら、金融恐慌は発生しない。株価は金融恐慌のリスクを織り込む形で暴落していたが、金融恐慌のリスクが消失するなら、その分は急反発する。

「失われた5年−小泉政権・負の総決算(3)」2006.05.26(http://web.chokugen.jp/uekusa/2006/05/post_4ae7.html

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銀行各社が好決算となったが、政策転換によって、株価が上がったため、不良債権が優良債権に変わったからに過ぎない。不良債権を優良債権に変えるには短期的には財政出動、金融緩和で景気を回復させ、株価も上げろと主張していた植草氏らは抵抗勢力として、文字通り排除されたわけだ。

最初から植草氏らの経済政策を展開していれば、この間の「景気の急激な悪化、株価、地価の暴落、企業の破綻…、戦後最悪の企業倒産、失業、自殺」はなかった。

そして、まともなことをいっていた人たちが「抵抗勢力」として次々に退場させられていった。ホントにバカな首相を国民は支持したものだ。  

Posted by 渡久地明 at 21:29Comments(0)デフレ脱却

2006年05月26日

年金免除は適切、正しい処分だ

全国の社会保険事務所が、「不正」「不適切」に国民年金保険料の免除手続をしていたというニュースだが、何でこれが「不正」「不適切」なのか不思議だ。

きょうの沖縄の新聞によると

「本来免除されるべき一を未納扱いのまま放置するのは行政の不作為となる」「この数の免除者で沖縄の低い納付率が大きく変わることはない。事務局の成績のためと思われるのは心外だ」(沖縄タイムス1面)。

「沖縄では本人意思確認をきちんと押さえながら、県民の年金権の確保につなげている。保険料を免除した人にも保険料追納の勧奨を行い、年金額が低減しないよう配慮している。作為的に数字を求めているようなことは全くない。県民のためになるとの思いでしたことが非難されるのは非常に残念だ」(琉球新報、29面)

と社会保険事務所はいっているが、まったく正論である。

沖縄は年金の未納者が多いが、復帰したのが1972年で、72年から年金制度が始まったことによる。当時の沖縄企業は社員の年金なんかはらっていなかった。わたしの父親は復帰前に琉球新報につとめていたが、その間、会社は1銭も厚生年金を支払っていない。その後も追納していない。(それどころか当時の琉球新報というところは給料を払わない。印刷した新聞を記者に持たせて、道端で売らせ、そのカネを給料がわりにしたのだが、先輩記者の話によると、「そうやって稼いだカネは全部飲んでしまった」という。)おかげで、無年金、または、わずかな額しか支給されないというお年寄りは非常に多い。いまでも同じ状況の人は非常に多い。

そのような愚をくり返さないための、沖縄の年金事務所の判断は正しい。おそらく全国も正しいと思われる。なぜ、まともなことをしたらいやがらせのような批判を受けるのだろう。

ちなみに本日の沖縄タイムスのトップは「就学援助26%が縮小、県内市町村 国補助消え困窮者切り捨て」という記事である。ぜひ日本のマクロ経済運営の失敗までたどり着いて欲しいと思う。  

Posted by 渡久地明 at 21:45Comments(0)デフレ脱却

2006年05月21日

中国は軍事的脅威にならない

先日の王毅駐日大使の講演(県など主催)で、王毅氏が述べた軍事に関する部分。中台戦争というのは冷戦時代のソ連と同様、だれかが煽っているだけに過ぎない。

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 中国の軍事費が増えているじゃないか、といわれる。これをどう見るか。脅威なのか。中国は一貫して純粋な防衛力を堅持する。それ以外の意図も能力も持たない。軍事同盟にも軍事競争にも参加しない。特に核について、核を持たない国に対してどんなことがあっても使わない、核があっても先制使用しない、他の核保有国にも全面廃止を呼びかけてきた。これからもこの政策を続け、最終的に核のない世界を目指す。

 軍事的能力については、軍隊を二十年間で二百万人減らした。軍事予算は一人当たりにするとわずかだ。中国には二万二千キロの国境があり、一万五千キロの海岸線がある。国際的な水準から見ると、国を守る需要に見合っている。軍事予算は財政の七%の水準で、二十年前より一〇%以上削減している。増えているのは主に人件費で、軍人の給与は一定の増加が必要だ。これにはこれまで少なかった分の補償の意味も含まれる。

 このことから軍事的な脅威にはならないと思う。

(渡久地明メモより)  

Posted by 渡久地明 at 19:49Comments(0)返還基地の跡利用

2006年05月21日

キンザー跡にカジノを要求など

沖縄観光ニュースを更新した。弟696号(3月1日)の記事から。

観光収入11.8%増の4,061億円
初のレンタカー道の駅 総合事務局、レ協会、豊見城市が検討
カジノを要望 キンザー返還で業界が浦添市長に
696 酒税は上げるべきでない

カジノの要請では県内観光業界から当たり前に「1000万人」という言葉が出てくるようになった。ものすごく重要な展開であると思う。  

Posted by 渡久地明 at 17:27Comments(0)沖縄観光の近況

2006年05月21日

辺野古はプレゼンス(存在感)だけ

昨日のグアム副知事の発言について、軍事専門家の神浦元彰さんは、次のように見ている。やはり辺野古はプレゼンスだけ、米の面子を立てただけではないか。だから、SACOの巨大イカダでも同様の効果は期待できたわけだ。

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グアム副知事が訪沖、米軍艦受け入れ示唆
基地建設で連携も 浦添市・県庁訪問(沖縄タイムス 5月20日、朝刊)

[概要]グアムのカレオ・モイラン副知事が浦添市の儀間光男市長を訪ね、「8000人の海兵隊員だけでなく、軍艦も受け入れ可能だ。またノースウエストフィールドで空軍の受け入れ可能だ」と述べた。また「グアム移転では現地のインフラ整備などの能力が欠けている。沖縄の企業が労働力や技術力を導入して頂ければありがたい」と述べた。この面談には下地幹郎衆議院議員が同行した。

 県庁では牧野副知事が面談し、モイラン副知事は「基地のインフラ整備に何らかの保証が行われるべきで、一時的な建設ブームに終わらせるべきではなく、長期的な経済発展につなげたい」と語った。牧野副知事は、「基地の返還後は跡地利用などの計画策定が必要になる。今後とも情報交換していきたい」と述べた。

[コメント]沖縄で米軍再編に強い発言力を持つ下地衆議院議員が、連休中にグアムに出かけたことは聞いていたが、副知事を沖縄に連れてくるとは思わなかった。しかし建設業経営の下地氏なら、グアムのインフラ工事も視野に入っていても不思議ではない。しかし本土の大型ゼネコンがだまっていないだろう。グアムで日本が負担する7000億円以外にも、総額103億ドルの移転費用をめぐってアメリカ企業を加えた大型商戦が始まる。

 下地議員の動きは”先んずれば敵を制す”の”先制攻撃”の意味がある。

 またモイラン副知事の話は、嘉手納の米空軍や沖縄の米海軍をグアムが引き受けるという意味である。軍事的に考えてその可能性は高いが、米軍が基地だけでも残したいという気持ちをどうするかである。すなわち沖縄にプレゼンス(存在感)だけでも残したいという気持ちを消すことができるか。

 米海兵隊はキャンプ・シュワブ沿岸基地でプレゼンスが残せると判断した。実際の運用は巡回訓練で使用する程度だろう。私の勝手な言葉であるが、車と、船と、家と、基地は、大きいほど快適である。

http://www.kamiura.com/new.html、5月20日付けWhat's New)  

Posted by 渡久地明 at 09:58Comments(0)返還基地の跡利用

2006年05月20日

グアム、空軍も受け入れられる

グアムのカレオ・モイラン副知事が県庁などを訪ね、新基地建設で沖縄側も建設に関わってもらいたい、といっている。下地幹郎氏が同行している。(新報・タイムス、本日夕刊)

グアムは人口17万人で、100億ドルの基地建設の労働者は全然足りないだろうと思っていたが、下地幹郎氏がグアムに飛んで、協力を申し入れていた。

グアム副知事は、(使っていない3000m滑走路もあるので)空軍も受け入れられる、と述べている。空軍もグアムを将来の拠点に想定しているのは確かで、まず、海兵隊が沖縄から撤退、次は空軍の番ではないか。グアムは空軍の拠点とし、(あり得ない)中台有事の際には嘉手納はサブで使うという構想がある。あり得ない中台有事であれば、グアムが快適に整備された後、空軍も撤退しておかしくない。

やはり、辺野古は必要ない施設である可能性が高い。イカダを浮かべる程度のものでよかったのだろう。このイカダに対していろんな工法が検討され、数千億円かかるという報道だったが、1500億円でできると試算を出し、何で日本でつくるとそんなにかかるんだろうという韓国企業があったとも聞く。

で、記事によるとグアム副知事は拓南製鉄や琉球セメントを視察するそうだが、鉄筋やセメントは沖縄から輸出可能である。有望な布石だ。グアムのリゾートホテルラッシュの際、沖縄からセメントの輸出があったのは事実。鉄筋もついでに運べば有望かも知れない。

グアム完成が2014年、もしその後、空軍の撤退があれば、吉元副知事が提唱していた基地返還アクションプログラム‐2015年米軍の完全撤退が実現する。え、辺野古はどうするかって、いつでもいらない、といえるのが米軍である。リゾート用の空港として使うほかなくなる。  

Posted by 渡久地明 at 20:09Comments(0)返還基地の跡利用

2006年05月18日

腰抜けとはいわないが、政府は心底アメリカが怖いのだ

 自分の新聞用に書いた原稿だが、ちょっと先に公開してみる。2+2ロードマップの解釈。

 世界に3つしかない海兵遠征軍の一つが沖縄からグアムに移転するというのは、沖縄から撤退するということだ。撤退を移転と言い換え、沖縄の戦力は減じないというアリバイ工作として辺野古新滑走路が建設されるというのが真相だ。政府は余計な買い物をしたものだ。
 
 新施設は九六年暮れのSACO合意では「撤去可能」な海上施設、滑走路の長さは1300mまで追いつめた。そこまで縮小できるはずだったのを、当時の大田政秀知事が受入拒否。沖合い埋め立て2500m、軍民共用、使用期限十五年を打ち出した稲嶺恵一知事が登場する。今日の撤退を予見していれば(日米の多くの軍事専門家が撤退を予測していた)、最も簡単な海に浮かべる施設でとりあえず普天間を移設しておき、今回の再編で全面撤退を勝ち取れたはずだ。大田知事は海兵隊の全面撤退を予想していたのだから、海上基地を受入れるべきだった。

 稲嶺知事は受入の条件に別のものを要求すべきだった。特に十五年使用期限は米ではまったく受け入れられなかった。十五年という時間制限は米軍の戦略そのものに対する注文であり、受け入れられない。沖縄縦断鉄道などと引き換えに海上基地を受入れ、海上基地については「必要が無くなったから撤去すべきだ」と毎年、交渉し続けるのが良かった。大田、稲嶺知事ともに米軍撤退を目指したのは同じだ。撤退が始まろうとしていたのに、かえって問題をこじらせた。

 辺野古の決着は、日本側が新滑走路をつくるから、撤退しないで欲しい、と米側に働きかけたものと考えるとつじつまが合う。V字型滑走路で海兵隊撤退の面子を立てたのだ。政府は心底アメリカが怖いのだ。今度は沖縄が政府の面子を立ててやればよい。沖縄は海兵隊の訓練の場所としては狭くなりすぎ、兵員輸送の能力も足りないのは軍事的には常識だ。普天間の代替施設無しの返還はあり得た。しかしV字型滑走路建設で(ほんとうは撤退なのだが)米軍は沖縄に居続ける、必要とあればいつでも沖縄を海兵隊の拠点にできるというメッセージを世界に発信できた。辺野古の意義はそれだけだ。

 しかし今回の米軍再編で嘉手納以南の千五百ヘクタールが返還される意義は大きい。海兵隊は撤退すると米側が約束したのだから、返還される土地を活用して沖縄全体の効率を高めるような再開発を盛大に計画すべきだ。沖縄への大規模な政府支出は日本の景気に好影響を及ぼす。遠慮は無用だ。  

Posted by 渡久地明 at 21:50Comments(0)返還基地の跡利用

2006年05月13日

初めて本を売る

 どうしても読みたいブルーバックスの一冊があって、確か20年くらい昔、買ったことがある、つい最近まで本棚にあったはずだ、と思っていたのだが、家にはない。
 
 書店にもない。(昔は壁一面にコーナーを設けている書店もあったが、いまは大手書店でも一棚に最近のもの50タイトルくらいしか置いていない)
 
 県立図書館、那覇市立図書館にもない。古本屋にも気配もない。
 
 版元も絶版、品切れ。アマゾンでは古本が800円くらいで売りに出ている。これを買おうかと思ったていが、もう少し探すことにした。
 
 10年くらい前に本が邪魔なので売るなり捨てるなりするようにと家の人からいわれてビニールの衣裳ケース10箱分を車で運び出し、本を自分で捨てたり売ったりすることができなかったので、そのまま事務所の隅っこに重ねっぱなしにしていた。これの中にあるかも知れない。しかし、探すのは一苦労だ。
 
 2ヶ月ほど前、最初の3箱に手を着けたが、ない。あるかないかが分からないものを探すのは、気が引ける。結局、3箱を開けて元の場所に積まないで、引っぱり出した場所にそのまま3段に積んで置いていた。事務所がその分狭くなっていた。その中から、「最近新聞紙学」(杉村楚人冠、法政大学出版会だったかな、手元になくなってしまった)をゲットした。

 で、やっと今日、事務所の通り道がないのでとりあえず、昼メシを食べに出るついでに3箱分の本を売りに行った。すると、ブックオフ那覇国場店の女性店員がプロフェッショナルに10分くらいかけてテキパキと本をより分け、状態の良いもの2.5箱についてを1800円くらいで引き取るという。状態が悪い0.5箱分は「持ち帰るか」というので、「もらってくれ」といったら、そのまま引き取った。ついでに衣裳ケースも「要らないのだけど…」というと引き取るという。
 
 3箱で1800円、粗大ゴミとなる衣裳ケースも処分できるならとやる気になって、さらに5箱を調査したところ、欲しい本は出てこないが、経済学の新書版の入門書がいくつかあったので、確保。「明日のジョー」などハードカバーの豪華本もある。5000円くらいにはなるかも知れないと、また売りに行ったら、今度は男性店員がやはりテキパキと5箱を30分くらいかけてより分け、2箱分に値が付かず、3箱分に7300円支払うというので、全部引き取ってもらった。久々の筋肉労働でぐったりしているのだが、
 
 残りの3箱に欲しい本はあるだろうか。あるだろうと思ってはいるが、実は買ってもいなかった可能性があるわけで、どうしようかとひと休みしてから、またフタを開けて調べると2箱目からちゃんと出てきたではないか。
 
 『カオスとフラクタル 非線形の不思議』(山口昌哉、講談社ブルーバックス、540円、昭和63年1月30日の7刷。第1刷は61年6月20日)・・・ちょうど20年前の本だった。ありがたい。
 
 ん、何もオチがないな。実は沖縄観光成長の法則で数理モデルをつくる際のヒントになりそうな部分があるから読みなさい、と研究室の先輩から指示されていた本だった。すでにざっと目を通して、十分面白いが、もう少し精密に読まないと数学の証明までちゃんと理解できない。夕食は食いそびれた。トホホ。  

2006年05月12日

オイルは下がらない?

下がらないという前提で、新たなビジネスを計画している知人と話した。

風力や太陽光発電などの再生エネルギー、バイオエネルギーのコストが引き合うようになると見ていた。県内リゾートではすでにオイルを燃やす自家発電が引き合わず、機械を止めて、どんどん電力会社からの供給に切り替えている。

オイルマネーが世界中の投資に振り向けられているおかげで、高騰しても各国から不満が出ていないとも言う。

ロシアのオイルマネーが日本の不動産に投資したがっているという話もまったく別の線から聞いた。日本のホテルを100軒ほど買いたいとかいう桁違いの話である。ロシアでさえそれなら、中東諸国はそれをはるかに上回る投資を計画する可能性もあるというわけだ。  

2006年05月11日

GWは前年割れ

出張で計算が遅くなったが、5月8日に航空各社が発表したGWの沖縄への航空実績は0.5%減と表の通りとなった。



予約時点より、やや低い実績となった。ANAが実績を落としたのは、席数を絞った影響もありそうだ(提供席数3.5%減)。

また、4月の航空各社の沖縄=県外線旅客実績は5.0%増となった。  

Posted by 渡久地明 at 13:32Comments(0)沖縄観光の近況

2006年05月07日

どんなイメージをつくるか、沖縄観光

沖縄とタイプが全然違うハワイ、香港、ラスベガスの主な観光指標を比べてみた。眺めているだけで、いろんな空想がわく。(細かい分析はできないので話題提供。やることいっぱいあるなあ)



●滞在日数は沖縄と比べるとハワイの方が3倍長い。香港、ラスベガスとはいい勝負。

●一人一日当たり消費金額が一番少ないのは香港、最も多いのはラスベガス。ハワイと沖縄はその中間で似ている。

●観光客数はハワイと沖縄は似ているが、香港・ラスベガスとは桁違い。

●ハワイのずば抜けて滞在日数が長い要因はなんだろうと思う。休暇制度によるのだろうと思っていたが、それだとラスベガスの滞在期間が短いことと話しが合わないかも知れない。ハワイの長期滞在傾向の理由がハッキリ分かれば、沖縄で応用できるかも知れない。ラスベガスより長いのはあまり金を使う場所がないことによるもので、意外に「何もないこと」とか「海」が要因だったりして。

●ラスベガスの消費金額の高さはカジノだろうと思う。それにしてもずば抜けて高いわけではない(ラスベガスのホテルレートはかなり安い(何人泊まっても1室100ドル前後、夜寝る人は少ないので数人で1室を確保しておいて、適当に順番に眠るという旅行パターンがある。もっとも、データを見ているとカジノ目的の観光客は数%と非常に少ないことになっている)という面もある、ホテルサービスにコストをかけるより、カジノで手っ取り早く利益を上げるということもあるのだろうか)。

●沖縄の消費金額の拡大は、カジノなどの新サービス、ハワイのような滞在日数の拡大などで得られる(当たり前だが)。カジノのインパクトは一人一日当たり消費金額で1.5倍くらいに拡大するかも知れない。香港がカジノを解禁したら消費効果は絶大だろう(社会的にはどうか)。  

Posted by 渡久地明 at 21:23Comments(0)沖縄観光の近況

2006年05月02日

手も足も出せなかった沖縄県

「再編実施のための日米のロードマップ」が公表された。防衛庁のHPに英文と日本語訳がある。

内容はわざわざ「2+2」を開く前に、散々報道されていたので、新味はない。

額賀・麻生の両閣僚は何かを交渉したのではなく、セレモニーに出向いただけだった。

米から見た忠犬小泉の役割もこれで終わりだ。あとはさっさと構造改革をやめて政策転換の順番である。

この間、沖縄側はまったく日米間の協議にコミットできなかった。しかし、いくつかのチャンスはあった。思いつくことだけ述べると。

第一。96年のSACO合意の海上基地を受け入れたらどうなったかという場面だ。大田知事が海上基地を拒否。かわって沖合い埋め立て、軍民共用、使用期限15年の稲嶺知事の登場だ。この軍民共用・15年期限は軍事的にはナンセンスで、特に15年期限についてアメリカは最初から拒否だった。理由は簡単。15年で海兵隊がアメリカから出ていくという約束なんかアメリカはするわけがない。米軍がどう動くかはアメリカだけが決めるからだ。誰かに言われて米軍は動かない。

「撤去可能な海上基地」をそのまま受け入れていれば、どうなっていただろうと思う。これを逃したため、名護の軍民共用空港につられて那覇空港の沖合展開が先送りされた。軍民共用が無くなったので那覇空港の建設を急ぐというような報道が出るのはこのためである。その後の忠犬小泉の登場で、沖縄政策は聖域のない構造改革に巻き込まれて行く。全国一失業率の高い沖縄では構造改革なんかやる必要はなかったのだ。(全国でも同じだが)

第二。この15年期限について、確か国務副長官になる前だと記憶しているが、アーミテージ氏は

「2、3年に一度日米で国際情勢に関する定期的な協議を開き、そこに沖縄がオブザーバーとして参加することで妥協できる」

というようなことを述べたが、この時、沖縄はチャンスがあった。これを逃した。

第三。ラムズフェルド国防長官が来沖して稲嶺知事と会見したとき、稲嶺知事の無礼な態度にラムズフェルドはTV画面を通じてはっきり分かるほどムッとして、手みやげを持ってきていたのを出さずに席を立った。ラムズフェルドの胸の内ポケットに入っていた一枚のメモは読まれなかった。なんと書いてあったのか。これと相前後して、普天間基地の代替施設無しの返還もあり得るという報道があったが、結局、辺野古新沿岸案ということになる。

第四。新沿岸案の協議の途中で、滑走路の長さをSACO合意の1300mにとどめることができた。沖縄側が拒否を貫いたため、テーブルの上の話題にも載せてもらえなかった。そのような譲歩を日米から引き出すことすらできなかった。いまさらヘリポートに縮小してくれといっても、すでに日米で合意した案をひっくり返せるのか。ひたすら着工に反対して、物理的にも阻止して、北朝鮮が崩壊し、その後、長期にわたる監視の後、ホントに平和的に朝鮮半島問題が解決したことが分かるまで待つという手もあるが、その間、普天間を始め嘉手納以南はそのままあり続けるということにしかならないのでは。

第五。辺野古新沿岸案の引き換えに、何を得たのか。嘉手納以南の土地が帰ってくることになったが、帰った土地は地主が昔のように農業にでも使えという政策もあり得る。というか、ほとんどの土地が私有地であり、それを返したのだから、跡利用なんかに政府がわざわざカネを出す法律上の根拠は何もないのだ。畑に戻して地主に返せばそれで終わりだ。そうさせないための裏の交渉はまとまっているのか。なければこれからだということになるが、すでに地元名護市が新沿岸案を受け入れているなら、手持ちのカードは何もないということにならないか。

そうさせないためにも沖縄県は抵抗勢力として堂々と積極財政策を唱えるべきであった。縮小均衡内閣では基地の跡利用という、本来あるべき政策が実現できないのだ。たった3兆円で日本中が非難の嵐ではないか、ばかばかしい。10兆円以上投入しないと間に合わないのだ。日本全体の景気回復には30兆円(×5年以上、デフレギャップが解消するまで)必要である。

以上は今回の米軍再編の理由が、沖縄の負担軽減が目的ではあり得ないことが大前提である。いま思い起こして書いているが、そのときどきに、同じことはこれまで指摘してきた。海兵隊はアメリカの都合でグアムに撤退するのであって、代替施設無しの海兵隊撤退は確かにあり得た。その交渉を切り出さなかったのは、日本の失策、ゲームオーバー(米当局の発言=ゲームだった!)である。そのように日本政府を仕向けることができなかったのも残念である。  

Posted by 渡久地明 at 23:20Comments(4)返還基地の跡利用