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2006年11月09日

モンゴル菜の花プロジェクト

モンゴル菜の花プロジェクト


モンゴル出張の目的を書いていなかった。行く前の契約書に内容を他に出さないようにというのがあった(行く直前に気が付いた)ため、書いてはまずいのかと思っていたが、そうではないということだった。

モンゴルの広大な草原(休耕田5万ヘクタール、普天間基地480ヘクタールの100倍)に菜の花を植え、オイルをとってバイオディーゼルを造り、自動車やトラック、ディーゼル発電所の燃料にしようという計画が進んでいる。日本企業の構想で、スタートにあたって幅広く投資を求める予定だ。

その構想に政府係機関の調査費が付き、わたしは観光開発の可能性について評価するという役柄だ。当然、極めて可能性が高いという評価になった。

バイオディーゼルとは現在の石油由来のディーゼルオイルを、植物オイルにとって換えるというもので、一般に植物オイルにメチルアルコールを混ぜて火がつきやすくするなど多少の工夫をすることで、そのままディーゼルエンジン車の燃料になる。もともとディーゼルエンジンは発明者のルドルフ・ディーゼルが1900年にパリで開かれた万国博覧会で、ピーナツオイルで動かしてデモンストレーションしたという経緯がある。

世界的なCO2排出削減のムーブメントのなか、最も効率が良く、安全で、将来にわたって見込みがあるといわれているのがバイオディーゼルである。すでにアメリカやヨーロッパでマイカーに使われるなど静かなブームになっている。

日本では廃食油を活用するのがいまはさかんで、ほとんど輸入に頼っている植物オイルを一旦は料理に使い、それを回収してバイオディーゼルに換え、車の燃料として燃やすことで、CO2や有害物質の排出が削減され、かつ、捨てていた輸入植物オイルの完全なリサイクルが可能となり、一石二鳥、三鳥にもなると期待されている(これなら沖縄でも極めて有望である)。

ちなみに植物由来の燃料は、植物が成長過程で大気中のCO2を吸収し、燃えることで吸収したCO2が大気中に放出されるだけなので、カーボン・ニュートラルといい、京都議定書のCO2排出削減の対象になっていない(ということは、たばこを吸うとCO2を出すから地球温暖化だー、というのは間違いというだ)。

モンゴルは社会主義国であったが、1990年代のペレストロイカで農業や製造業で指導的な役割を果たしていたロシア人が大規模に里帰りし、一挙に貧乏になった。ソ連時代の農地は休耕田となり、使われなくなった畑の面積は全土で100万ヘクタールを越えると言われている。

今回のプロジェクトはモンゴルの電力事情を改善する仕事をしていたわたしの大学時代の友人らが、地元の人たちと力を合わせて新しい事業を興そうというもので、調査には他にバイオディーゼルの専門家、農業の専門家、経済学者、環境問題の専門家らが参加した。菜の花畑とバイオディーゼル向上が観光面で活用できないかという要請で、わたしも喜んで調査チームに加えてもらったものだ。地元行政担当者にもインタビューしたが、資源を掘るというのでなく、花を咲かせるというプロジェクトは歓迎された。

本記は新聞で詳しく特集する予定。(写真はモンゴル北西部のドルノッド県、メネン平原入口の中国との国境で、国境警備の兵隊と検問所の女性とわたし。行かなかったが、この先200キロほどにノモンハンがある)


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