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2005年10月19日

ヒル日本部長、出世してないのか

ヒル日本部長、出世してないのか

沖縄タイムス夕刊に数日前から沖縄に来て、県や与党県議に米軍の北部集約を説明しに来ているジョン・ヒル国防総省日本部長の顔写真が出ている。聞いたことある名前だなあと思っていたが、顔を見て思い出した。6年前のアメリカ取材でわれわれに説明したジョン・ヒルではないか(写真、国防総省で)。当時も日本部長で、確か一時別のセクションに移っていたと思う。

わたしは開口一番、米軍は沖縄県民を軽視しているだろうといったら、そんなことはない、といっていた。3回目に軽視しているだろうといったら引っ込みよったが。

当時は弱々しく見えたが(失礼)、いまは偉くなっているのだろうか。

続きを読む以下は、当時のわたしの新聞記事(「観光とけいざい」第560号、2000年1月1日)。電子的に公開されるのはこれが初めてである。なお、沖縄側の調査チームは8人。軽視しているだろうとか話し合いが足りないといっているのはわたしで、それ以外の貢献したいというのは他のメンバーの発言。

民間地域から米軍が見えなくなるようにしたいとは、当時からいっていたわけだ。忘れていた。

(国防総省・日本担当)
《Mr. John Hill Desk Officer for Japan, Office of Intemational Security Affairs》
●はわれわれ日本側、※はジョン・ヒル日本部長
※ 国防総省を訪ねていただいてありがとう。今日の私の発言は国防総省の考えであり、私個人の考えというわけではないことを前提にしたい。いろいろな問題が日米安保体制に関してあるが、今日は特に沖縄に絞って話をしたい。
 今日、国防総省は日米関係の全般について特に力を入れている。1996年にクリントン大統領と橋本首相がガイドラインについて共同宣言を行った。この後、国会でもマスコミでも日米関係が議論され、どのように安全保障を維持するかが課題となった。日本に法がないから、例えば自衛隊と米軍の協力関係について対処できなかった。
 冷戦終了後はこれまでのようなはっきりした敵がいなくなり、敵味方の区別がなくなった。それに代わって不安定性を考えるようになった。
 北朝鮮は日本政府が注視している。村山元首相が訪問し、これによって何らかの変化が見られた。対話の再開が図られたと理解している。北朝鮮問題では特に韓国が厳しい状況にある。日米韓3極で協力体制をとることが必要だ。その場合、北はある国一国だけを相手に闘うことはできない。全部を相手にしなければならなくなる。
 一方、北が持つミサイルの能力にも対処する必要がある。それには日米で合意したTMDへの調査研究協力が役に立つ。海軍全域のプログラムで2010年までに配備するが、研究はまだ初期段階にあり日米が協力するのはよいプログラムだ。
 また、日米がともに中国との国交も改善していく。日本の防衛庁が中国と関係している。米国はベオグラードの中国大使館誤爆問題で関係が止まっている。もう一度中国との関係を強化したい。近すぎず、離れすぎない関係が大切だと考えている。
 沖縄基地問題ではSACOにみなさん関心があると思う。米国はSACOを重視している。特に中核として普天間返還があり、これは基地の整理・統合・縮小となる。さらに米国のプレゼンスが沖縄県民の生活に与える影響を小さくし、同時にこれまで述べた地域へのコミットを維持しなければならない。
● 沖縄基地の整理・統合・縮小について米と沖縄で直接話し合える部分があるのではないか、SACOには沖縄側のメンバーは入っておらず、沖縄を軽視しているのではないか。
※ そのようなことはない。
● しかし情報交換の方法を持つべきだ。
※ 国防総省も必要な場合、情報を交換する用意がある。
 普天間返還については国防総省はプレイヤーとして参加はしていない。稲嶺県知事と県民のコンセンサスを重視している。沖縄で地域住民の合意が得られたあと、沖縄と日本政府の合意となり、そのとき初めて日本から米国に報告が行われる。
 この問題の考え方はいろいろある。軍と民間が使うような利用法もあり、建築方法や期限付の問題などがあることも承知している。
 米軍としては移設先が軍専用でなければならないという考えはない。共用も可能だと考えている。しかし、それをどこにつくるかの合意はまだない。これを懸念している。
 この他、楚辺通信所を返すし、北部のトレーニングゾーン、ヘリゾーンの移設も進んでいる。これらの背景にあるのは日常生活への米軍の影響をなくそうというものだ。ヘリが市街地を飛んでいると外国軍がいることを地域住民は毎日思い出すことになる。沖縄のゲストとして駐留しているという認識が大切だ。95年に残念な暴行券件を起こし、これを機に沖縄だけでなく世界の海兵隊にきちんと教育している。
 整理・縮小が決まったら、いかにスムースに移設をすすめるかについて米軍の協力が得られるはずだ。
 跡地の問題で技術協力、環境浄化問題は次の押当者が応えるだろう。
 15年の返還期限は政府間の合意が必要であり、ここで述べるのは難しい。米国防総省には基地閉鎖と再利用のプログラムがあり、地域住民との間で密接に再利用を検討しあっている。
● 米軍の技術の沖縄への移転について、立て替え移転が予定されている海軍病院の先端技術を、例えば普天間の跡地に移して県内病院と連携し、国際救急医療などのアイデアが議論されているが、どうか。
※ 技術移転は商業的問題になると思う。しかし、専門技術としての医療協力や基地の環境浄化技術は注目できる。そのような技術が提供できれば素晴らしいと思う。
 普天間には滑走路があり、返還する場合、施設はそのままの状態で返還する。しかし、病院は別の範疇の問題だ。病院の技術提供は海軍が決定する。このように腹を割って何が必要かを話し合うことは大切だ。
 基地の環境浄化は国防総省が開発した技術ではなく民間が持っている。この技術の移転には障壁はない。日本企業と米企業の話し合いで決着がつく問題だ。米企業は自分で仕事をするだけでなく、合弁や技術移転にも関心がある。ビジネスになるなら創造的なアプローチが可能だ。
● 沖縄の声を直接聞く場が必要だ。
※ 沖縄の軍から話は聞いている。軍は地元の経済界や県庁から意見を聞いている。
● 沖縄の一般市民は日本政府からも米国政府からも基地の意味について明解な説明を受けているとは感じていない、米国が直接沖縄と対話すべきではないか。
※ 国家間には決まった対話の形式がある。沖縄県民と米国政府との直接対話は不可能ではないが適切ではない。直接の話し合いも必要なことがあるかも知れないと理解している。日本政府が日本国民の声を反映するのであるから、米国は日本政府を通して地元とコミットしているという認識だ。もちろん、地元の支援を得ることが大切であることはよく理解している。日本政府と沖縄県庁が協力して普天間移設ははっきり民主的に理解されるべきだと思う。
● 沖縄県民は太平洋地域に貢献しようと思っている。いい知恵が日米で出てこないか、普天間が移った後、沖縄が世界に貢献できる施設にしようと思っている。
※ それはよい提案だ。基地再利用のプロセスは米軍当局も十分検討し、その際、透明性に関して議論された。米国では情報が欲しい場合、要請すれば手に入れることができる。日本では情報開示が基地軽減に影響するのではないかとの考えもあるようだ。日本政府と日本国民の話し合いももっと活発になるべきだ。
● ペンタゴンと沖縄県民は基地について対話の場を設けるべきではないか。県内の若手は医療関連のプロジェクトが重要と考えている。
※ 米軍基地の再利用への提言、意志決定はペンタゴンではなく軍と地域との対話に移っていく。地域の基地司令官と話を進めることが重要だ。最終的には地主の問題になる。これはSACOプロセスに重要に関連している。
 沖縄基地対策チームはできるだけ1999年中に普天間を進展させたいと考えている。早く移転先を決める、県民と日本政府の支援をもとめる。これがあって初めて同盟の目的が維持できる。

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Posted by 渡久地明 at 17:09│Comments(4)返還基地の跡利用
この記事へのコメント
>>>3回目に軽視しているだろうといったら引っ込みよったが。
 →アメリカ人との会話のコツが 見事に集約されていますね~。。。

「基地問題」を理性的に説明してくださるので、大変ありがたいです(^^♪
Posted by 笛木のり at 2005年10月19日 18:57
コツというか。ホントはバカにしているんだろう、といったのです。

同時通訳が間に入っていたので、トーンは違って伝えられたかも知れませんが、日本部長だからバカぐらいは分かったでしょうね。

一緒のメンバーからやめとけという冷たい視線は感じましたが…。
Posted by 渡久地明 at 2005年10月19日 19:31
内心ではバカにしていると、、、私も思いますから(^^;

丁寧な言葉(英語で)を使っていても、表情を見れば分かります。
バカにしていない人も、やはり同じように分かりますよね。
Posted by 笛木のり at 2005年10月21日 00:20
おや、今度は町村外相が「国防総省の日本部長が沖縄で直接米軍の考えを説明したのはけしからん」と抗議するそうですね。

ヒル部長はわたしの意見を聞いてわざわざ沖縄に先に説明しに来たのに(^^;
Posted by 渡久地明 at 2005年10月21日 23:16
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