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2006年02月07日

サンドイッチの中身が日本政府になった

 日米2+2合意で辺野古に滑走路をつくるのと引き換えに海兵隊の撤退・縮小、嘉手納以南の基地返還、基地機能の国内他の地域への分散が打ち上げられたが、雲行きがあやしくなってきた。

 辺野古沿岸案の修正に応じない政府に対して岸本健男名護市長が協議に応じない、岸本市長の後継の島袋吉和新市長も同じ見解を示した。

 稲嶺恵一県知事は従来の沖合い案から沿岸案に変更になった瞬間に沿岸案拒否、従来案以外なら県外移転と明快に意志表示している。おかげで06年の政府の沖縄予算は数百億円規模で削減されている。

 岩国基地(山口県)のある岩国市長は空母艦載機を移駐させる計画について、住民投票を行う意向を表明。

 当の米軍も普天間のKC‐130空中給油機の移転先を、2+2合意の鹿屋基地(鹿児島)から、岩国基地に変更を求めるなど、政府は地元に説明の付けにくい重大な局面を迎えている。

 おまけに防衛施設庁の官製談合が発覚して政府は地元への説得力を失いつつある。

 米の沖縄海兵隊撤退計画に対して、地元が強硬に反対、政府は沖縄と米のサンドイッチになって、何の打開策も示していない。

 この米軍再編はわたしは当初から米側の都合に基づくものであり、沖縄が反対でも強行突破されるだろう。沖縄の負担軽減というのは方便である、と述べてきた。

 その視点に変化はないが、米の都合によって撤退するのであるから、全く動けない状態が続いて困るのは実は米だろう。

 もちろん沖縄も困る。事故が今後も起こったり、基地が沖縄振興の邪魔になったりしているのは事実である。しかし、沖縄基地がこのままの状態では米軍の世界戦略上不利なのであるから、最も困るのは米であるはずだ。もし、困らないというなら、わざわざ大きなカネを使ってグアムまで海兵隊を下げる必要は最初からなかった。そのまま、沖縄にいておけばよい。政治的不安が沖縄で発生するだろうが、そんなものは軍隊の任務に比べれば屁でもない。これが軍隊の論理である。その論理に基づいて沖縄から撤退する再編策を決めたのであり、実現しないと困るのは米の方である。

 米の要求に対して沖縄が反対し、間に立っている日本政府はサンドイッチになっている。ここがポイントだろう。長期にわたって沖縄は日本政府と米との間でサンドイッチになって不利な条件にあった。いま、サンドイッチの中身が入れ替わっている。

 米自身は沖縄と日本のサンドイッチになりたくない、と前からいっていたが、もし日本政府が米に、沖縄から出ていってくれという側に回ると、米は本当に撤退もあり得た。それが元国務副長官のアーミテージ氏の「日本政府が出て行けといえばいつでも出ていく」という、わたしに対する発言の意味だろう。

 日本政府が沖縄と米のサンドイッチになっている状態というのは珍しい。普天間の分散先の各地が沖縄とともに反対し、財政難の折から何でグアムに日本のカネで基地を建設してやる必要があるのかという世論が起こり、防衛施設庁の官製談合発覚という不祥事のなかで、強行策はとれるのだろうか。連日、沖縄安和県民と政府との衝突が報道され、その一方でグアムで巨大基地を建設し、グアム住民が喜ぶ様子が報道される。…マンガのような状態。

 日本政府を飛び越して米と沖縄がマクロ経済政策で連合を組み、日本全体をデフレから救った上に沖縄政策ではもっと有利な条件を引き出す、というささやきがわたしの中からきこえてくる。悪魔のささやきには思えない。


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Posted by 渡久地明 at 21:47│Comments(0)返還基地の跡利用
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