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2006年03月10日

不況の直撃受けた消費金額

おきなわ観光情報学研究会のメーリングにわたしが投稿した記事(3月9日)。誤字もあるが直さないで掲載する。

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各位

渡久地明です。

入域観光客数に不況の影響が出ていない、と述べました。不況でも観光客数が伸
ばせるのは、沖縄の観光客数がたったの500万人と日本全体の需要に比べて
シェアがわずか1.5%前後と小さすぎるからです。日本全体の観光需要から見
たら、沖縄の500万人が600万人になることなど、誤差範囲でしかない。そ
こで、沖縄観光は客室が増えれば、観光客数も増えるという成長の法則が成り立
つ条件を満たしているわけです。

一方で、消費金額の減少は不況と密接に関連があると思われます。

このような現象の身近な実例を考えると、

(1)袋ラーメンをつくるケース

熱湯をどんぶりに注いで3分待つケース。

熱湯の温度によって、出来が異なるでしょう。

100度なら3分で食べ頃になるのに、間違って60度のお湯を使ったら、5分
かかるかも知れないし、できあがったものもぬるくておいしくない。

60度のお湯を注いでしまった場合、お湯の分量は充分だけれども、温度不足な
ので、再度加熱が必要となります。

観光客数=熱湯の量

とみる。

消費金額=熱湯の温度

と見れば、不況時でも観光客数は増えるのに消費金額は減少しているというイ
メージができます。

上の例で加熱が必要ということは、地元でのまつりやイベントで消費を引き出す
環境をつくるということに対応します。

しかし、それには地元から熱を観光客に与えるということになり、このことは地
元業者にとって、より多くの出費や値引きをする羽目になります。いま、観光業
界がやっている値引きや無料入場券、お土産プレゼントはまさにこのことです。
このような競争によって、消費金額が増えるならまだしも、せいぜい前年並みな
ら、業界は毎年、出費だけ増える、という悪循環になります。

それでも何とかなっているのは、観光客数が着実に増えているという点に支えら
れているからです。誰かが言うように、供給サイドを工夫して諸費金額を増やす
べき、というのは言葉の上では理解できますが、現実には困難で、それは過去
15年の日本の不況が供給サイド工夫では改善しなかったという事実から明らか
でしょう。

これに対して、不況を脱却すべきとわたしが前から唱えているのは、最初から熱
湯を注げ、ということです。

(2)気体電子工学での実例

水素に高電圧をかけると電離し、プラズマができます。水素原子、電子、水素分
子が入り交じった状態が簡単にできるので、わたしは30年前にこれを扱ってい
ましたが、カネがない研究室では粒子温度をプラズマ容器内で高めるのは至難の
業で、実験では最初から高エネルギーのプラズマをつくって、容器内に射出する
のが基本でした。(カネがあれば直径6キロのサイクロトロンで加熱実験ができ
るわけで(略)=フェルミ研究所の葉恭平博士)

同じことは観光客にも当てはまることが、経験上分かっています。

すなわち、

A.高額旅行商品を購入したお客は、行った先でも消費額が大きい。

B.格安旅行商品を購入したお客は、行った先でも消費しない。

この二つが観光業界では経験的常識となっており、現状は不況のためBが多い。
これでは供給サイドが相当に思い切った投資を行わない限り、消費を増やすのは
難しいと思われます。サービスの強化といった小手先の工夫で売上が上がるなら
誰でもやっていますし、その結果がやっと前年並みの維持でしょう。

ちなみに100億円かけたDFSの昨年の仕入額はわたしの計算では55億円程
度でした。県統計では土産品の消費額が05年は04年比プラス3千円の1万
8606円となり、これはDFSの効果と見られています。ところが03年の土
産品消費額もほぼ同じ16838円なんですね。04年の消費の落ち込みが大き
く(商品価格と消費金額が上がるピークシーズンを台風が直撃)、05年はその
反動で伸びたとしか見えない。100億円かけても消費は伸び悩んでいるわけで
す。DFSだけは儲かったかも知れないが、DFSでの消費分、他の部門が売り
上げを落としたと考えられます。もっとも、DFSがなければ、もっとドーンと
消費額が減少したかも知れないですけど。

朝っぱらから長くなりましたが、観光客数の伸びは不況とは無関係だが、消費金
額は不況の直撃を受けているというのは以上のイメージです。

だから早く緊縮財政をやめて、積極財政に転じろと、さらに小一時間(藁)

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さらに細かい分析が「観光とけいざい」3月1日号にあるが、WEB公開は2、3カ月後の予定。


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Posted by 渡久地明 at 22:44│Comments(7)観光情報学の話題
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kinjoさんから久しぶりにコメントをいただきました。はいさい、ちゅううがなびらです!渡久地さんのところで観光についてどう対策すべきなのかを議論しているみたいですね。僕のまわり...
kinjoさんから【nadja in wbo】at 2006年03月28日 18:04
この記事へのコメント
非常におもしろい。・・積極財政は将来にツケを残すか。今我々が100円、政府が100円もっていて、我々が20円の国債を買ったら、残り80円、政府は120円になる。将来国債は償還するので、次世代はわれわらが買った20円を受け取り、120円になり政府は80円になる。結局、次世代につけ送りしないじゃないかという論理が成り立ちはしませんか。
Posted by supika at 2006年03月10日 23:18
気体電子工学での実例、まったく違う分野・概念をくっつけられるのは、すごいなぁ~と思いました!!

なんとなくですが、私には沖縄観光業界?はコールドプラズマではなく、ホットプラズマのように思えます。
Posted by Tstsshihica at 2006年03月11日 00:54
>supikaさん

次世代へのツケ送りというのは、ないでしょ。

あ、1200年前に当時の支配層が、1200年後の日本国民から超巨大な借金をして、都を整備したそうです。いまでいう、国債の発行と同じですね。償還期限が1200年後(60×20年)になっていた。

その時の、借用証が法隆寺に保管してあるのが戦後、見つかりましたが、政府は国民に公開しないと決めましたとさ。

しかし、借金の穴埋めはしなければならなかったので、カネを印刷してつじつまを合わせたそうです。それで、聖徳太子の肖像画入りの一万円札が発行されたわけです。昔の借金はこうしてカネを刷ることでチャラにされました。

って、全部ウソよ。
Posted by 渡久地明 at 2006年03月11日 19:23
>Tstsshihicaさん

昔、ロードレーレーという科学者が、音波がパイプを通じて曲がりくねってどこまでも伝わる(潜水艦の中の伝声管)特性とみて、同じ波だから電波もパイプの中を伝わるあろう、と縦波と横波という全く違う概念を結びつけて、その後のレーダーの発明と現代の光ケーブルまでつながるわけで…

わたしは観光客数=粒子数、粒子温度=一人一日当たり消費金額、滞在日数=ライフタイムに似ているなあと。最近は温度の上げ方、密度の高め方、ライフタイムの伸ばし方も、プラズマに置き換えて同じ振る舞いになるだろうと確信に近いものがありますよ。

一方、観光地のグラビティー理論は間違いです。こちらにはフィジカルミーニングが全くないです。
Posted by 渡久地明 at 2006年03月11日 19:36
ロードレーレーさんは、レーリー散乱で有名な人かな・・・
ロードレーレーさんの発見にあるように、まったく違う概念をくっつける
のは重要ですね。

プラズマと観光の相似性は面白いですね。粒子数、粒子温度、
ライフタイムの例がぴったり合いますね。う~ん、すごい。

グラビティー理論・・・・どんな理論か分かりません(汗)
いつか教えてください!
Posted by Tstsshihica at 2006年03月11日 20:30
「袋ラーメンのたとえ」がすごく面白くて、読ませられてしまいました(^ー^ヾ!

分野はどうあれ、“若い頃に学んだものは、無駄にならない”ということですね。
Posted by ふえきのり at 2006年03月11日 23:13
>Tstsshihicaさん
ロード・レーレー=Lord Rayleigh=レーリー(レイリー)散乱も見つけてます。ノーベル賞物理学者。古典物理学の巨人の一人です。

>ふえきのりさん
こういうたとえ面白いですか。いくらでも思いつくんですが、間違ったたとえ話をする人が多すぎるので、自分では邪道と思ってひかえていました。分かりやすくなるなら今後、多用しようかなと思います。

それにしても、たとえばなしとは、特殊なケースを分かりやすい身近なケースで置き換える話なのに、わたしの場合はもっと分かりにくい気体電子とかいっているので、余計分からなかったわけで、すみません。それをTstsshihicaさんみたいに、ときどき分かる人が出てくるものだから、全然改めなかったというのが(以下略)
Posted by 渡久地明 at 2006年03月12日 12:29
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