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2006年04月22日

GWの予約数、新聞各社で異なる数値報道

GWの予約状況は昨日、低い伸びになりそうと述べたが、1.1%増と表の通りになった。ANAの不振が全体を引き下げている。

ところで、今朝の新報・タイムスもGWの沖縄線の予約状況を記事にしているが、両社で異なる数値となり、さらに上の表とも合わない。

なぜか、解説をしておく。

まず、上の表だが、全国と海外はJAL、ANA両グループの本社広報が発表した数値、沖縄線は沖縄支店まとめの数値を使う。

沖縄線についてはANA沖縄支店の数値が県内線も含めたものなので、わたしが別途県内線を除いた数値を計算で出し、上の表に入れてある。JALは県外線しかないのでそのまま上の表に入れる。JTAは県外線・県内線・合計の数値を発表しているので、県外線の数値を上の表にぶち込んである。RACは県外線は奄美線とヨロン線なので、その部分だけ抜き出し、上の表に入れる。この(県内線を除く)操作はこれまで「観光とけいざい」紙面、「沖縄観光ニュース」、ここで掲載したもので一貫した集計方法で、沖縄県が毎月まとめる入域観光客統計の集計手法と同じである。ちなみに上の表は上下線の数値だが入域観光客数は沖縄到着便の数値を使い、それに含まれる県内客を引き算し、海外・船便の乗客を加えたものとなる。

一方、県内の両新聞を見ると、

新報は見出しが「GW空の予約状況 沖縄線微増」
タイムス見出しは「沖縄路線 GW予約は41万人余 前年比7.6%減 海外流出か」

と新報が微増、タイムスは大幅な減少で随分違う。

記事を見ると

タイムス「航空各社は21日、ゴールデンウィーク期間中(28日‐5月7日)の沖縄関連路線の予約状況を発表した。本土路線と県内路線を合わせた総予約数は41万3457人で前年比7.6%減少した」

新報「航空各社のまとめによると、ゴールデンウイーク(GW)期間中(4月28日—5月7日)の国内各地と那覇などを結ぶ沖縄航空路線の予約は日本航空など3社合計で40万6490人で前年比0・5%の微増。各社別では日本航空が10・0%、日本トランスオーシャン航空が0・3%の増加の一方、全日空は5・9%の減少と明暗が分かれた。」

となっており、両社で異なる。異なる理由は、両社が何を集計しているのか、書いている記者がそれぞれ異なる基準で集計しているからだ。その上に前年比の計算も間違っている(こんなのホントはばかばかしいのでやりたくないが、しょっちゅう間違っているので、一度ちゃんと解説しておこう)。

タイムスの場合、
集計は「本土路線と県内路線を合わせた総予約数」といっているとおり、航空各社の沖縄路線の発表値を全部足し算したもので数値は定義したとおりだ。しかし、全体で前年比7.6%減となるのは理解できない。ひょっとしたら昨年書いた記事を引っぱり出してきて、それと比べたかも知れない。すると実際7〜8%のマイナスになりそうだが、GWの期間は毎年異なるので、去年の記事にあるGWの予約数とは比較できない。航空各社の前年比は前年GWの予約数との比較にはなっていないので、前年の記事の予約数と比べると間違いとなる。読者に間違ったメッセージを送ることになる。

タイムス記事の集計
     06年予約数  前年比   05年予約数 備考
JAL 142,749 110.0 129,772 JAL発表値(県外線のみ)
ANA 185,034  94.1 196,635 ANA県内線も含む発表値
JTA  78,707 100.3  78,472 JTA県内線も含む発表値
RAC   6,967 106.5   6,542 RAC県内線も含む発表値
合計  413,457 100.5 411,421

一方、新報は「国内各地と那覇などを結ぶ沖縄航空路線」をJAL+ANA+JTAまではタイムスと同じに足し算、RACは全部県内線と思ったのか除いてある。で、0.5%増といっているが、実際には0.4%増だろう。

新報記事の集計
     06年予約数  前年比   05年予約数 備考
JAL 142,749 110.0 129,772 JAL発表値(県外線のみ)
ANA 185,034  94.1 196,635 ANA県内線も含む発表値
JTA  78,707 100.3  78,472 JTA県内線も含む発表値
RAC                       集計せず
合計  406,490 100.4 404,879

両社とも集計対象は記事中に定義したものに近いが、両社記事は異なる対象を計算している。タイムスが大きく前年比の計算を間違い、新報はちょっと違う。わたしの計算は入域観光客数の観点から「県外=沖縄線」で統一、計算は表の通りだ。この場合、県外→那覇(→宮古など県内→さらに多良間など県内)の括弧内を除いた数値でダブルカウントはない。こっちの方がすっきりしていると思うが、航空搭乗客全体を見るならタイムスの方法が適切。新報はRACだけを除いて、県内線を除いたつもりだが、JTA、ANAの県内線をダブルカウントしているので、滅茶苦茶になる。


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Posted by 渡久地明 at 12:14│Comments(3)マスコミ評論
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沖縄のビジネスホテルはお勧め【AWAZON】at 2006年04月29日 02:35
この記事へのコメント
ANAの不調はやはり価格設定を間違えたようだ。プロフェッショナル(県内旅行業)に聞いたら、「JALがそれだけ伸びてANAが減る理由はないから、価格しかない」ということだった。

消費者は非常に価格に敏感であり、旅行業界が価格を上げきれないというのはこのことである。

ちなみにグアム・サイパン・ハワイが搭乗率は高いが、供給を減らしているのも同じ理由による。安売りで満席にするより、路線を間引いた方がよい(縮小均衡)という考え。

デフレが続くと沖縄もそうなりかねない。
Posted by 渡久地明 at 2006年04月24日 23:01
GWの乗客数の計算方法について、1社から「今後の記事で注意するよう
担当の記者に伝えました」というメールが届いた。読んでいるんだね。ありがとう。

ついでに補足すると、GW予約数前年比は、今年と同じ期間の前年の予約数との比較ということで、今年が4月28日〜5月7日なら、前年のGWが4月28日〜5月8日だったからそれと比べるのではなく、4月28日〜5月7日までの予約数と比較する。

期間が異なる前年のGW予約数と今年のGW予約数を比べると、今年は1日短い分、2〜3万人の減少で、たぶん計算したらタイムス記事のように7〜8%の減少になっていると思う。
Posted by 渡久地明 at 2006年04月25日 16:23
なるほど。昨日のメールはこれですか。ニヤニヤ。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-13148-storytopic-4.html

乙。
Posted by 渡久地明 at 2006年04月26日 17:10
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