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2009年03月23日

ケインズ革命達成されず

 丹羽春喜著
「政府貨幣特権を発動せよ。救国の秘策の提言」(紫翠会出版、09年1月31日初版第1刷、212ページ)
をよんだ。面白いのでおすすめする。

 「ケインズ革命」とは何であったのか? エコノミストであれば誰でもが熟知しているように、ケインズ理論によって、マクロ経済学、社会会計学(国民所得計算)、および、管理通貨制度の確立がなされた。このことによって、人類文明の経済は、市場メカニズムのメリットをフルに活用しつつ、そして、人々の経済的自由をいささかも犯すことなしに、
 (1)景気変動の克服(デフレ、インフレの防止)
 (2)成長通貨供給の貴金属制約からの脱却
 (3)国際分業による共存・共栄的な成長・繁栄(為替フロート制の長期発揮)
 (4)地理的フロンティアや搾取対象を必要としない経済成長の実現
などを達成しうることになった。すなわち、人類文明の経済は、「ケインズ革命」によって、「決定論的宿命論のくびき」から解放されうるようになったわけである。(154〜155ページ)

 最後に、非常に重要なことを一つ、述べておかねばならない。すなわち、「ケインズ革命は、実は、まだ、完全には達成されていない!」ということである。
(略) 「ケインズ革命」によるそのような特質を持った政策システムを稼働させうるための基本的な「必要条件」は、全世界的に、そして、とりわけ、わが国においては、まだ完全には充足されていないままに放置されてきているのが、現状である。(略)
 「ケインズ革命」に基づくマクロ経済政策を稼働させるための必要条件は
 [1]デフレ・ギャップ、インフレ・ギャップの計測と確認
 [2]「有効需要の原理」(乗数効果)の作動状況の把握
 [3]「国(政府)の貨幣発行特権」の確立と、その財政財源への活用
の3点につきるといってよい。(174〜176ページ)

 要するに、本書の重要なモチーフの一つは、わが国の政府当局によってなされてきた三大「欺瞞情報」オペレーションの犯罪的とも言うべき不条理性をあばき、それに替わるべき正しい経済情報を示すことであった。そのことを通じて、わが国が、「ケインズ革命」に基づいたマクロ経済政策の力強い稼働を可能ならしめるような体制構築を行うべきだということも、示唆してきた。そのことは、前記の「必要条件」[1][2][3]が充足されうるかぎり、決して困難なことではなく、むしろ、為政者の決断次第で、容易になしうることであるわけである。
 そして、そのことは、とりもなおさず、わが国において、「真性のケインズ革命」が達成されうるということにほかならない。(184〜185ページ)


 丹羽教授の政府紙幣発行論はやはり単なる一時的な赤字の埋め合わせ理論ではなかった。



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Posted by 渡久地明 at 00:01│Comments(0)デフレ脱却
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