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2005年06月08日

人口×ライフタイムの経済学

人口×所得×ライフタイム

で国の豊かさが決まるだろう、昨日と述べた。

身近な例では、沖縄県の観光収入がこの計算で出てくる。つまり、

年間の観光客数×一人一日当たり消費金額×滞在日数

が沖縄県が発表している観光収入である。

昨年の実績は約3800億円であった。

この金額は最終消費支出であるから、沖縄県のGDPをまるまる底上げする数値である。

沖縄県のGDPが3兆5000億円前後だから10%以上を観光収入でたたき出しているわけだ。

観光収入がこのような因数で成り立っていることから、

観光客数の増加より、消費金額を増やすべきだ。観光客数の拡大より、消費金額が拡大するよう質を高めるべきだという議論がある。

全くその通りといえるが、両者が追求するのは観光収入の拡大であり、意味は同値である。

ところが、現実にどちらが達成しやすいかというと、観光客数を拡大するのはこれまで30年以上やってきており、やり方が分かっている。ところが、質の向上というのは誰もが出来る筋合いのものではない。

マリオットが出来たり、今日はジ・アッタテラスが出来たが、最高級リゾートを建設して、そこでのサービス内容を高めることによってやっと実現する。

人数はいいから質だけ上げろという話なら、那覇市内も民宿しかない離島も同じような大がかりな投資が必要であり、莫大な費用がかかる。また、もし品質を高めるために、お客がいない民宿や零細ホテルは早く廃業しろというのであれば、これは暴力である。

それよりも、品質は新しいリゾートや既存の施設が徐々に工夫しながら高めていき、その間、人数で稼ぐのが最も手堅く、現実的な手法であるといえる。

そこで、誤解する人も多いが、わたしは数の追求こそが質を高めるのだ、と述べている。

また、観光消費額の式には滞在日数を伸ばすことによっても売上が増えることがわかる。これももちろん正解で、そのためには客室数を増やす必要があるのだ。

品質を高めるために新しいリゾートをつくったり、滞在日数を伸ばすために客室を増やす行為はいずれも、観光客数を拡大させる政策と全く同じ形式をしているのである。したがって、観光客はもう充分、品質を高めるべきとなっても、観光業界がやっていることは当面、今と何も違わない。

ところが、政府部門は全く異なる。人数が増えなければ、例えば、滑走路を拡張する必要がない。航空機の便数は増えないから、航空会社は売上が増えない。すると沖縄でキャンペーンを張る意味がなくなる。強力な成長のエンジンである航空会社が一歩退く。同様に基本的に取扱人数に応じて売上を増やしている旅行社も、沖縄よりもっと伸びるところに注力した方がよいとなる。

沖縄観光を伸ばしてきた主要な二つのエンジンが不調になった状態では数も増えず、品質も急に高められず、衰退に向かうであろう。なお、人数が全く増えない状態で高品質のリゾートが開業すると、お客はそちらに殺到することが分かっているから、既存の施設の売上が落ちることになる。

さて、観光収入の式は日本経済全体にも当てはまるだろうと予想している。

GDPは

人口×所得×ライフタイム

で表わす方法があるだろう。

すると日本経済の場合、人口は間違いなく減るから急には拡大できない。ライフタイムは確実に伸びている。

減少する人口と伸びている寿命をかけ算すると、実際には人口は見かけ上、減っていないし、増えている可能性が高い。

すると、人口×ライフタイムは増えているのに、現状のようにGDPが増えないなら、一人当たり所得はどんどん減っており、人々は貧しくなっていると言える。

人数が減るから、経済成長も必要ないという考えは間違いである。

人口×ライフタイム

の伸びに応じたGDPの拡大がどうしても必要だ。その場合にのみ人は長生きして良かった、若い頃の苦労が報われたと感じるであろう。もしそうしないなら、年寄りや貧乏人は早く死ね、といっているに等しい。



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Posted by 渡久地明 at 15:34│Comments(0)デフレ脱却
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