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2005年07月19日

沖縄観光の需給バランスと政府の経済運営

 沖縄観光は需要と供給のアンバランスの繰り返しだった。つまり、お客が少ないときは需要不足であり、オーバーブッキングを出すときは供給不足になっている。一年のうち需要不足がオフシーズンの四〜六月、十二、一月と繰り返し、供給不足が八月、二〜三月となる。

 短期的にはこれをくり返しながら、長期的には全体の需要を拡大することに成功し、七二年に四十八万人だった観光客数は、三十三年後のいま、五百四十万人程度にまで拡大した。

 また、数年に亘って低迷し、逆に数年に亘って高い伸びを示す十年サイクルの波があったこと、その理由も分かっている。さらに突発的な事件によって需要が冷え込むこともあり、かつ、その解決策も我々は経験してきた。最近では〇一年の九一一テロが典型的な例である。

 さて、長年の経験から、需要不足の時には観光業界は強力なキャンペーンでお客を増やすということをこれまで何度も繰り返してきた。旅行・航空会社は四〜六月に旅行商品を安くして需要喚起を図る。

 一方、ピークシーズンで需要が加熱し、供給不足になるときは価格を上げた。長期的には供給を拡大するためにホテルが建設された。

 これらの対策に共通しているのは、需要不足の時には需要を増やし、供給不足なら供給を増やすという極めて単純でかつ正統なやり方であった。

 全く同じことが、いまの日本経済に当てはまるのである。日本経済は九一年以降、慢性的な不況で、GDPの低い伸び率が続く需要不足の状態である。沖縄観光でいえば、ここ十五年毎年、年中オフシーズンのようなものだ。このようなときには常に企業は商品を安売りせざるを得なくなり、そのことで体力を消耗し、リストラで人件費を減らすという防衛策をとらざるを得なかった。

 それが長く続くとついに、業績が悪い企業は潰してしまえという風潮が蔓延している。

 思い出して欲しい。沖縄観光なら、需要不足の時には旅行・航空各社と地元が協調して需要拡大策を図り、これを政府が後押しして需要を喚起してきたのだった。そして、供給が多すぎるから事業所を減らせとは一言もいったことはない。テロの直後、お客が減ることが長期的に見込めるから、弱小企業は整理しろということにはならなかった。それよりもV字形に需要を回復させて損失を最小化したのである。

 同じことが国全体でできる。世界中の数多くの経済学者が共通の処方箋を提言している。ところが、現実には目的不明の構造改革のために、倒産する企業が出ても仕方がない、という政治である。そして最近の骨太の政策では小さな政府を目指すといっている。これでは政府は自らの役目を放棄したのとおなじだ。需要がないから少ない需要にあわせて供給を減らせといっているのである。本末転倒とはこのことだ。

 郵便局の民営化だって? そんなことをやっている場合ではないだろう。もちろん民営化は社会にマイナスの影響しかなく、やってはならない。


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Posted by 渡久地明 at 22:10│Comments(0)デフレ脱却
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