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2005年08月24日

財政出動で債務の対GDP比が縮小する

国の借金の対GDP比は、GDPそのものを拡大することによって少なくできる。それを示す。

いま、日本のGDPは約500兆円である。

対して公債残高は700兆円だから(実際には政府は債権(土地や建物、外国の国債、株式など資産)も持っているので純債務は300兆円くらいである)

公債残高の対GDP比はいま、

700兆円/500兆円=140%

ということになっている。この140%が大きすぎるとして、財政再建が叫ばれているわけだ(何で大きすぎるかの説明はないけどね)。

ここで、GDPの内訳は教科書によると、

GDP=家計消費+政府支出+民間投資+純輸出

である。

この中で家計消費は(政府支出+民間投資+純輸出)の変化に応じて変化する変数であり、民間投資や政府支出が増えると、給料やボーナスが増えるので消費も増えるという筋合いの従属変数となっている(前大阪学院大学教授丹羽春樹氏のHP参照。http://homepage2.nifty.com/niwaharuki/jpost14-6-1.htm)。

対して、民間投資は景気動向を見て民間企業などが独自に決め、政府支出も独自に支出を決める独立変数である。純輸出はそれらに対して非常に少ないので無視して良い。

前に日本の乗数が2.3であると述べたのは

GDP/(政府支出+民間投資+純輸出)

が2.3となっていることから出てくる。

実際の数値は03年実績で(内閣府http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/h17-nenpou/17annual-report-j.htmlの4.主要系列表(1)国内総支出の暦年)

GDP              497兆円
家計消費(民間最終消費支出)   282兆円
政府支出(政府最終消費支出)    88兆円
民間投資(国内総資本形成)    119兆円
純輸出(財貨・サービスの純輸出)   8兆円

程度だから(あまり細かくしないでいい)、

GDP/(政府支出+民間投資+純輸出)
=497/(88+119+8)
=2.3

という計算である。この2.3は過去20年、ほぼ一定である(2.2になったこともあるが、その程度の変動である)。

書き換えて

GDP=2.3×(政府支出+民間投資+純輸出)

となる。

03年を基準に、翌年から10兆円の国債を発行して、公共投資など景気にテコ入れするなら、民間投資は変化しないとして、(民間投資+政府支出+純輸出)が10兆円増えると計算する。

すると債務残高(金利は後で考える)の対GDP比、つまり

債務残高/GDP

は、

分子の債務残高は700兆円が10兆円の国債発行で710兆円となり、
分母のGDPは

GDP=2.3(98+119+8)=518兆円

となるから、

710兆円/518兆円=137%

と縮小した。

以下、2003年のGDP=民間消費+政府支出+民間投資+純輸出を使って(民間投資、純輸出は不変と仮定。政府支出を増やすとそれに応じて民間消費が増えると計算する)、毎年10兆円の政府支出増、財源は国債として計算すると、

GDP GDP伸び率 公債残高 債務のGDP比 政府支出 追加支出 民間投資 純輸出
2003 495 - 700 142% 88 0 119 8
2004 518 104.7% 710 137% 98 10 119 8
2005 541 104.4% 720 133% 108 10 119 8
2006 564 104.3% 730 130% 118 10 119 8
2007 587 104.1% 740 126% 128 10 119 8
2008 610 103.9% 750 123% 138 10 119 8
2009 633 103.8% 760 120% 148 10 119 8
2010 656 103.6% 770 117% 158 10 119 8
2011 679 103.5% 780 115% 168 10 119 8
2012 702 103.4% 790 113% 178 10 119 8
2013 725 103.3% 800 110% 188 10 119 8
2014 748 103.2% 810 108% 198 10 119 8
2015 771 103.1% 820 106% 208 10 119 8
2016 794 103.0% 830 105% 218 10 119 8
2017 817 102.9% 840 103% 228 10 119 8
2018 840 102.8% 850 101% 238 10 119 8
2019 863 102.7% 860 100% 248 10 119 8
2020 886 102.7% 870 98% 258 10 119 8
2021 909 102.6% 880 97% 268 10 119 8
2022 932 102.5% 890 96% 278 10 119 8
2023 955 102.5% 900 94% 288 10 119 8
2024 978 102.4% 910 93% 298 10 119 8
2025 1001 102.4% 920 92% 308 10 119 8
2026 1024 102.3% 930 91% 318 10 119 8
2027 1047 102.2% 940 90% 328 10 119 8
2028 1070 102.2% 950 89% 338 10 119 8
2029 1093 102.2% 960 88% 348 10 119 8
2030 1116 102.1% 970 87% 358 10 119 8


と公債残高の対GDP比はどんどん縮小していく。

実際には債務残高に対して金利がつくので、債務残高は毎年拡大するから、債務の対GDP比の縮小のスピードはこれより遅くなる。金利を上乗せし追加する国債発行額は20兆円としたら、もっと早く、公債残高は縮小する。それでも、300〜400兆円といわれるデフレギャップ(過剰設備≒失業者数)が解消したら、企業の設備投資が加わり再びGDPを押し上げる。この状態では、税収は大幅に増えているから国の借金を大幅に減らすことが可能となっている。

つまり、いまのようなデフレ状態で政府支出を減らすという政策は、金利分の支払が増えるにもかかわらず、政府支出を増やさないのだから、金利分の事業費が減ることになる。これを続けると、景気を上向かせるための政府支出がどんどん減り、GDPもどんどん縮小して、財政は再建できない。財政を再建するには金利を上回って政府支出を大きく増やし、GDPを拡大するのが正しい政策である。

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Posted by 渡久地明 at 17:07│Comments(2)デフレ脱却
この記事へのコメント
最後の段落が舌足らずだったので書き直した。
Posted by 渡久地明 at 2005年09月30日 22:17
この計算を着想したときに、リフレ派のカリスマ官僚bewaadさんが

別の観点から公債の対GDP比の変化を計算をしています。目を通していて下さい。

http://bewaad.com/20050823.html
Posted by 渡久地明 at 2005年09月30日 22:17
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