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2005年08月27日

シミュレーションで精密に経済予測ができる

 沖縄の公共投資を100億円減らしたら、マイナスの波及効果が1.7倍となり、影響は大きいと述べた。

 また、公共投資を10兆円増やすと、民間投資や純輸出が不変として、500兆円のGDPは518兆円に拡大すると試算した。

 このことはいま、民主党が公共投資を10兆円減らすといっているが、マイナスの効果は18兆円に波及するということだ。10兆円の無駄を省こうとして、必要な8兆円もマイナスが出るのである。10兆円の無駄な公共投資を10兆円の有効な公共投資に付け替えるというくらいでなければ、話にならない。いや、その上で数十兆円の新たな公共投資を行わなければデフレからは脱却できない。

 このようにいう根拠は、上記の計算をどんどん精密にしていくことで、明らかになる。

 しかし、その計算は人手でやるには相当に面倒になっているのも確かだ。そこで、コンピュータに諸条件や方程式を組み込んでシミュレーションするという手法が確立されている。政府も独自のシミュレーションを持っている。

 それらのうち、日本経済新聞社のモデルを使って、公共投資を増やした場合、消費税を上げた場合、減税した場合のGDPの変化の様子、円ドルレートなどがかなり精密に予想できる。

 結果は、積極財政で景気が良くなり、政府の公債残高の対GDP比はどんどん減少するというものになる。他のマクロモデルでも同様の結論が出ている。

 シミュレーションは日本経済復活の会(http://www.tek.co.jp/p/)の小野盛司氏が2002年の暮れに行い、03年初頭にWebで公開している。その後、この分野でノーベル経済学賞を受賞したクライン博士を招いて東京でシンポジウムを開催するなど、活発だ。

 わたしはこのシミュレーションが出た頃、まだ経済学とはどんな科学なのかという見通しがついていなかったのだが、有力なシミュレーションモデルで結果が出せるという手法にものすごく感動して、メールでレポートそのものが欲しいとリクエストしたところ、レポートの現物と入力データを送ってもらったのだった。もちろん、そのレポートの内容は自分の新聞記事にしている。それをそのまま日本経済復活の会が紹介している(http://www.tek.co.jp/p/OKNews628.html)。

 小野氏らは強力な政府紙幣発行益の活用で景気対策を打つべきというリフレ派の一派をなしていて、このシミュレーションがでる前から掲示板でさまざまな議論をしており、わたしもときどき自分で考えたり計算したことを書き込むと、誰かが親切に応えてくれるのだった。(その記録は全く残っていないが、とにかく面白かった)

 さて、シミュレーションで出てきたGDPの予想が正しいかどうかだが、日経NEEDSの場合、過去何年にもわたって精度を高める修正を加えており、世界中で活用されるなど実績もある。相当精密な予測ができていると考えていい。その結果が、積極財政でしか景気は良くならないというもので、これまでの経験通り、理論通りなのだ。

 なぜ、このような明快な結論を多くの人が受け入れることができないのか、と思う。しかし、その話は経済とはまた別の話になるだろう。稿を改める。

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Posted by 渡久地明 at 19:41│Comments(0)デフレ脱却
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